ホーム 新規開業・工事 阪急・神戸地下鉄の相互乗り...

阪急・神戸地下鉄の相互乗り入れ「新神戸案」「長田案」を考える

三宮接着が困難なら

シェア

阪急神戸線と神戸市営地下鉄西神・山手線の相互乗り入れ構想で、新神戸駅や長田駅、板宿駅での接続も候補に上がっていることがわかりました。それぞれのメリット、デメリットをみてみましょう。

広告

「三宮接続」は困難

阪急神戸線と神戸地下鉄の相互乗り入れ構想は、阪急と地下鉄を接続させ、梅田~西神中央間で直通運転を行うものです。

2004年の近畿地方交通審議会答申に直通構想が記載されたのを受けて、阪急電鉄が推進姿勢を示し、2013年に久元喜造神戸市長が誕生すると、神戸市側も前向きな姿勢に転じました。

ただ、両線の接続地点をどこにするかが難題として解決していません。これまで阪急側は、王子公園~神戸三宮間を地下化させて、三宮駅付近で接続させるとしてきました。

しかし、三宮付近で両線を接続するには技術的に高いハードルがあり、困難との見方が根強くあります。そのため、相互乗り入れ構想そのものの実現性も疑問視されてきました。

神戸市営地下鉄

新神戸接続は「有力案の一つ」

これについて、神戸新聞2017年11月24日付は、接続地点として「新神戸駅や長田駅なども候補として検討している」と報じました。

なかでも同紙が「有力案の一つ」としているのが、新神戸接続案です。「阪急王子公園駅と地下鉄新神戸駅の間を地下で結ぶ案が検討されている」としています。

新神戸案のメリットして、同紙は「阪急の乗客が新幹線を利用しやすくなるほか、新神戸駅一帯のにぎわいづくりにつながる。また、市道の地下にトンネルを掘るため用地を確保しやすい上、三宮に比べて地下空間が広く取れる」と評しています。

一方で、長田駅や板宿駅での接続も候補とし、「既にある神戸高速線を利用するので工事費が抑えられる」「阪神電車とも相直が可能になる利点がある」としました。

要するに、阪急と地下鉄の接続地点として、新神戸、三宮、長田、板宿の4駅周辺が候補として検討されている、ということです。

広告

原田線の地下を走る

新神戸駅付近で接続する場合は、阪急神戸線を王子公園付近から地下化し、いわゆる「原田線」と呼ばれる道路の地下を走り布引(新神戸駅の南)に至り、フラワーロードを南に折れて地下鉄と接着する形になるとみられます。

地理的に、阪急は地下鉄新神戸駅には乗り入れられないので、近辺に「阪急新神戸駅」を建設することになるでしょう。両線の接続駅は、現状と同じ三宮駅になります。

過去、阪急は、地下鉄乗り入れの際に神戸高速線への乗り入れを廃止する姿勢を示しています。そのため、新神戸接続の場合、現在の王子公園~神戸三宮~高速神戸間の路線は廃止される公算が高そうです。

その場合、途中駅の春日野道駅と花隈駅も、必然的に廃止となります。ただ、熊内町1丁目付近にでも新駅を設けることで、春日野道駅利用者の救済は可能です。

阪急・地下鉄ともにメリット

新神戸案のメリットは、神戸新聞が記しているように、地下工事の容易さが挙げられます。運行上も、阪急神戸線の全列車が新神戸を経由して地下鉄に乗り入れることになり、シンプルなダイヤを作れます。

神戸地下鉄側も、新神戸~西神中央間の現路線の運行系統をほぼそのまま維持することができ、複雑なダイヤを避けることができます。また、阪急の運賃で三宮まで利用できるようにすれば、阪急・地下鉄どちらも、収入の取りこぼしがありません。

現在、阪急神戸線各駅からは、新神戸駅へ出るにも新大阪駅に出るにも不便なので、新神戸駅への接着は、阪急沿線住民にとってメリットがあります。阪急は十三~新大阪接続線も建設予定なので、路線の東西で新幹線アクセスが改善します。

また、北神急行線から梅田方面へのアクセスも改善します。阪急にとっては、北神急行方面からの旅客を新神戸で乗り換えてもらうことで、JRへの旅客流出を防ぐこともできます。

さらに、春日野道~三宮駅の阪急高架線の跡地を再開発に使うこともできます。現在の阪急三宮駅の用地も、地下を含めて広く利活用できるでしょう。

神戸市営地下鉄広域図
地下鉄広域図。画像:神戸市
神戸市営地下鉄地図2
地下鉄拡大図。画像:神戸市

梅田~三宮の所要時間が延びる

一方で、デメリットもありそうです。まず、路線が大回りになるので、阪急神戸線の梅田~三宮間の所要時間が延びるでしょう。現在で、阪神間の所要時間は、阪急特急27分、JR新快速21分ですが、その差がさらに広がる可能性が高そうです

また、新神戸案では、阪急の電車は地下鉄三宮駅に乗り入れることになりそうですが、既存の地下鉄三宮駅は二重構造のため折り返し設備を作れません。その先も名谷まで留置線がないため、阪急から地下鉄に乗り入れた列車は、現状の設備では名谷まで折り返せません。

これでは需要に対応したダイヤを組みにくいので、地下鉄山手線のどこかに折り返し設備を作る必要がありそうです。

広告

長田案と板宿案の実現性は?

では、長田駅や板宿駅での接着はどうでしょうか。

長田案では、阪急と線路が繋がっている神戸高速線と地下鉄とを接着させることになります。高速長田駅の西で神戸高速線から分岐した連絡線が、湊川沿いに南下して、新長田駅手前で地下鉄に接着することになるでしょう。

板宿案では、神戸高速線か、それに繋がる山陽電鉄線と地下鉄を接着させることになります。ただし、板宿駅で両線は直交するので、分岐は西代駅付近になるとみられます。

西代駅で南西に分岐した連絡線が、太田町付近まで進んでから北進し、地下鉄板宿駅手前で合流できるなら、建設費は安く付きそうです。それが無理なら、板宿駅を二重構造として、板宿~妙法寺間で接着することになるでしょうが、建設費は高騰しそうです。

あるいは、西代駅から板宿駅を通らずに、住宅街の下をショートカットして妙法寺駅方面へ合流することも検討されるでしょう。梅田~西神エリア間の時短が目的なら、このルートが効果的です。

長田案と板宿案のどちらが容易なのかは、にわかには判断できませんが、地図で見る限りは、長田駅近くには公共施設が多く、地下に線路を通しやすそうですので、長田接着のほうが実現性がありそうです。

広告

阪神、近鉄への直通も可能

長田、板宿での接着にどの程度の費用がかかるのかは不明ですが、三宮案に比べれば少額で済むでしょう。3km程度の地下新線を掘る新神戸案よりも、安くつく可能性もあります。とはいえ、長田・板宿案でもそれなりの距離の連絡線を掘らなければならず、一部は既存建物の地下にかかります。そのため、ハードルは低くなさそうです。

長田・板宿案では、阪急三宮駅が現位置に維持されますので、阪急電車の三宮駅折り返しが可能です。また、地下鉄からは阪急のみならず、阪神電鉄にも乗り入れることができますので、大阪難波や近鉄奈良方面への直通も不可能ではなくなります。このように、長田・板宿案にも大きなメリットがあります。

長田・板宿両案のデメリットとしては、山陽電鉄線系統と線路を共用するため、ダイヤによる制約が生じることでしょう。

また、地下鉄側からみると、長田付近で系統が阪急方面と北神方面の二つに分かれるという問題もあります。三宮駅が二カ所に分かれることになり、利用者にとっては不便になりそうです。また、三宮~長田・板宿間の地下鉄利用者の減少も予想され、地下鉄の収入減が見込まれます。

阪急三宮

新神戸案と長田・板宿案を比較

こうしたメリット、デメリットを念頭に、新神戸案と長田・板宿案を比較した場合、有力なのはどちらでしょうか。

筆者の見解では、新神戸案に優位性があると考えます。完成後の運行系統をシンプルにできることと、地下鉄の収入が減らないことが、その大きな理由です。加えて、長田、板宿は阪急エリア外なので、長田・板宿案では、収入の減る神戸市が建設費の多くを負担することになりそうなのも弱点です。

新神戸案は、神戸市地下鉄側に大きな費用負担がないうえ、神戸市としても新神戸周辺の活性化に弾みが付くのが魅力です。阪急にとっても、新幹線と北神急行線に連絡できるメリットがありますし、三宮駅跡地の再開発ができることも非常に魅力的でしょう。

王子公園~新神戸間の地下新線の建設が、阪急にとっては大きな負担になりそうですが、京阪中之島線や阪神なんば線と同じ、償還型上下分離方式で克服できるのではないかと考えます。

広告

留置線を作るのか

とはいえ、新神戸案の問題も小さくありません。所要時間の問題以外にも、現地下鉄三宮駅を両線のターミナルとして使う場合、駅のホーム容量に不安があります。前述したように、新神戸~名谷間に留置線がないので、地下鉄線内で折り返す運行系統を作りにくいのも大きな弱点です。

仮に地下鉄線内に留置線を作らずに新神戸接着を実現した場合、阪急神戸線の全列車が名谷までに直通することになります。それに北神急行系統の列車が加わります。

現在のダイヤをそのまま持ち込むなら、新神戸~名谷間に、阪急系統が日中毎時12本、北神系統が4本の計16本が入ります。現状は毎時8本ですから、明らかに供給過剰です。これを防ぐには、北神系統か阪急系統の普通列車を新神戸折り返しにすることになりますが、それでは利用者には不便です。

したがって、新神戸接続案にする場合は、できるだけ三宮に近い位置に留置線を作る必要があります。可能なら大倉山駅あたりでしょうか。建設費は相当にかかるとみられますが、それも含めて新神戸案を検討する必要があるでしょう。

長田・板宿案のダイヤは?

長田・板宿案の場合、連絡線を建設すれば、運行系統はシンプルに整理できます。たとえば、毎時6本の新神戸~名谷系統と、毎時6本の梅田~西神中央の系統を並立させ、両列車を名谷で接続させる、といったダイヤです。

こうすれば、長田・板宿~名谷間は毎時12本になりますが、それ以外は毎時6本になるので、運用数の増加を抑えつつ、山手線エリアでの利便性低下も最小限に食い止められます。

梅田系統は名谷以東で優等運転をすれば、西神エリアから梅田方面への速達性も改善するでしょう。ただ、このダイヤでも、現在毎時4本の新神戸~谷上間をどうするか、などの問題は残ります。

長田・板宿案は、建設費を抑えられそうな点で優位性がありますし、新神戸案と比較検討に十分値するでしょう。

神戸地下鉄新型車両
画像:神戸市

2018年度に新型車両を導入

神戸市営地下鉄は、2018年度より新型車両を導入する予定です。2016年に新車のデザインを決める「新型車両デザイン総選挙」を開催し、丸みを帯びた新デザイン(プランB)が決定しました。西神・山手線は2022年度までに、全車両が新型車に置き換わる予定です。

新型車両の詳細は未発表ですが、阪急直通を視野に入れた設計になっているのは間違いないでしょう。この新型車両の姿を、阪急梅田駅でお目にかかれる日が来るのか。それとも夢に終わるのか。神戸市と阪急電鉄の検討結果が楽しみです。(鎌倉淳)


関連記事