東京駅八重洲口に建設される「八重洲バスターミナル」(仮称)の運営事業者に、京王電鉄バスが選ばれました。全て完成すれば国内最大規模のバスターミナルとなりますが、東京の高速バス事情はどう変わるのでしょうか。
国内最大級のバスターミナル
東京駅前の八重洲の再開発地区には3つの高層ビルを建設する計画で、それぞれのビルの地下にバスターミナルを設置します。バスターミナル部分を市街地再開発組合から取得したUR都市機構が、運営する事業者を公募していました。
その結果、運営事業者に選ばれたのは京王電鉄バス。バスターミナルをUR都市機構から一括賃借し、バスターミナルを一体的に運営します。京王が八重洲口のバスターミナルを運営する、というと意外な印象ですが、高速バス事業者として安定した実績が評価されたのでしょう。
八重洲バスターミナルは、東・北・中の3地区に分かれ、乗降用のバス停は合計20。バスタ新宿の12を大きく上回ります。そのほか、待機用バス停も8つ用意され、合計のバス停数は28にのぼります。国内のバスターミナルとしては最大級で、占有床面積は3地区あわせて21,000平米に達します。
八重洲地下街と直結し、東京駅の地下八重洲口とも接続します。
どんなバスターミナルか
八重洲バスターミナルのコンセプトは、「国際都市東京の玄関口」と「国内主要都市との交通結節」の機能強化。東京駅前に位置する八重洲地区の利便性を活かし、高水準なトランジット機能を提供するのが役割です。
計画では、バスターミナル各地区の地下1階に案内カウンターと発券機を設けます。各階には待合ラウンジを設置し、随時、運行状況を提供。売店やカフェなどの商業施設や、コインロッカーや自動販売機なども設置します。
長距離移動客への配慮として、パウダールーム、授乳室を配置。トイレは、混雑時に対応できる規模とします。
公表された整備・運営イメージによりますと、目指すのは「SMARTバスターミナル」。SMARTとは、賢明な、機敏な、気の利いた、活発な、という意味です。
係員によるオペレーションと独自開発のシステムで「わかりやすさ」と「安心感」をスマートに(賢く)提供。効率的な運営で発着便数を最大化し、乗り入れ事業者のニーズを踏まえた、公平な運営も心がけます。
高速バスの利用や他の交通手段との乗り継ぎのハードルを低くし、利用者本位で効率的なバスターミナル運営に努めます。
乗り入れバス会社は?
気になるのは、どのバス会社がこのターミナルを利用するのか、という点でしょう。
中央区が公表した「八重洲バスターミナルへの移行に向けた実現方針」によりますと、バス停の移行対象エリアは 3つ。「外堀通り・八重洲通りに停留所を設け発着する高速乗合バス」(エリア1)、「鍛冶橋駐車場で発着する高速乗合バス」(エリア2)、「丸の内口の都道上に停留所を設けて発着する定期観光バス」(エリア3)です。
つまり、東京駅八重洲口周辺の路上に発着する京成バス、富士急行バス、東北急行バス、エアポートリムジンといった高速バスと、鍛冶橋駐車場に発着するウィラーやオリオンバス、さくら観光、VIPライナーなどの高速バス、丸の内口に発着するはとバスなどが、八重洲バスターミナルに移ることになります。
一方で、JR東京駅駅前広場(八重洲口・丸の内口)に発着する高速バスや、都バスなど一般路線バスは移行対象外とされています。つまり、八重洲南口バスターミナルに発着するJR高速バスやエアポートバス東京・成田(格安バス)は、八重洲バスターミナル発着になりません。
そのほか、貸切バスについては、「キャパシティを勘案しながら導入可能性を探る」とされていて、空きがあれば八重洲バスターミナルを使える、という形になるようです。また、東京BRTについては、乗り入れ条件などの協議が整った場合に、八重洲バスターミナルに乗り入れる予定です。
発着容量に余裕あり
2019年10月現在、これら移管可能性のあるバスの発着便数は、平日1日あたり1,261便に及びます。八重洲バスターミナルの発着容量はまだわかりませんが、バスタ新宿の1日の発着便数は約1,700便なので、規模を考えればそれより多くの便をこなせそうです。
つまり、八重洲バスターミナルは既存のバス路線を全部受け入れても余裕があるとみられ、新たな路線を受け入れる余力がありそうです。たとえば、中央高速バスの一部便が八重洲発着になり、東京駅前から乗車できるようになる可能性などが考えられるでしょう。
公表されたデジタルサイネージのイメージイラストには、さりげなく「小倉・福岡」ゆきの案内が表示されています。となると、ひょっとしたら「はかた号」の始発を八重洲に移すことを想定しているのかもしれません。
いつできる?
八重洲の再開発は、北地区が2022年8月の竣工を予定していて、バスターミナルもこの時期にあわせて、北地区のみ先行開業する予定です。その後、2025年度に東地区が開業し、2028年度に予定されている中地区開業により、バスターミナルの全体開業を迎えます。
東京都内には、バスタ新宿を始めとして複数の大型バスターミナルがあり、今後、品川駅前などでも整備されていく予定です。
しかし、八重洲バスターミナルは、その圧倒的な規模と、新幹線接続という高い利便性で群を抜いた存在価値があります。今後、東京の高速バスの中心地となっていくのは間違いないでしょう。