東京都のしながわ水族館が建て替えてリニューアルします。新施設ではイルカの飼育をせず、イルカショーも終了します。
都内初のイルカショー
しながわ水族館は、品川区が整備した公立水族館です。京急大森海岸駅近く、しながわ区民公園に立地します。1991年の開業以来、株式会社サンシャインエンタプライズが運営を受託しています。
開業当時の広告表現は「しながわにイルカが舞う!」で、イルカショーが見られる都内初の水族館として人気を集めました。しかし、近年の入館者数は下落傾向で、ピークの4分の1となる約40万人程度にとどまります。
開設30年を経たことで施設は老朽化しており、修繕・維持に多額の費用がかかることから、現施設を取り壊し、新施設を建設することでリニューアルすることが決まりました。
品川らしさを重視
新施設の展示理念は「しながわ区民公園の自然と調和し、水中感あふれる展示」です。品川らしさを重視し、東京湾の展示に力を入れ、近隣の水族館にはない、最新の水中感あふれる美しい展示を計画します。
現施設は、子どもの利用者が多いのが特徴ですが、新施設では子どもから高齢者まで、幅広い世代が興味を持つ展示を展開します。
新施設は、現施設に近接する形で建設されます。レストハウス、ショップ棟は現施設を活用します。
イルカショーは終了
大きく変わるのは、新施設でイルカの飼育をしないということです。イルカショーも現施設の閉館にあわせて終了します。
イルカショーは現施設の目玉展示で、開館当時は都内唯一だったこともあり、高い人気を誇りました。しかし、2005年、品川駅近くに、大規模なイルカショーをおこなうエプソンアクアスタジアム(現アクアパーク品川)が開館。同じ京急沿線には、1993年に日本最大級のイルカ水槽を擁する八景島シーパラダイスもオープンしています。
このため、しながわ水族館の「都内初のイルカショー」という独自性は、すでに失われています。また、しながわ水族館のイルカ飼育施設は小さく、新施設でも大きく拡充することは難しいという事情もありました。
さらに、近年の動物保護の流れとして、イルカショーに対する世界的な視線は厳しくなっています。公立水族館が新たに取り組むべきことではないとして、イルカの飼育そのものを終了することになりました。
葛西臨海水族園もリニューアル
新施設の規模は約5,000平方メートルです。現本館とアザラシ館をあわせた延床面積は 約4,000平方メートルですので、現施設に比べて約1.2倍となります。
詳細な設計などはこれからで、品川区では2023年度に運営事業者と設計者を公募する予定です。現施設近くに新施設を完成させてから展示を移す方針で、リニューアル中の閉鎖期間は短く済みそうです。新施設は2027年度にオープンする予定です。
東京都内では、都立葛西臨海水族園も建て替えが決まっていて、2028年3月にオープンする計画となっています。しながわ水族館が2027年度オープンとなれば、ほぼ同時期に、東京湾奥の二つの公立水族館が、その姿を一新することになります。(鎌倉淳)