新型コロナウイルスの感染が拡大する中、外国人の入国を全面的に禁止する国が増えてきました。事実上の「鎖国」が広まりつつあるわけで、海外旅行者は早めの帰国を検討したほうがよさそうです。
インドビザ停止の衝撃
新型ウイルスの感染の拡大にともない、外国人の入国を一律に禁止する、事実上の「鎖国」に踏み切る国が増えています。
新型コロナウイルスの影響で、早い段階で「鎖国」に踏み切ったのはイスラエルでした。3月9日に、外国からの入国者全員を14日間の自宅隔離の対象とすると発表。イスラエルに自宅がない外国人にとっては事実上の入国禁止措置と受け止められ、「鎖国」に近い形となりました。
次に衝撃を与えたのは、インドでしょう。3月11日に観光・商用ビザによる全ての入国を一時的に停止すると発表しました。適用は3月13日~4月15日です。インドはバックパッカーに人気の旅行先で、大学の春休みは学生旅行者の多い時期です。発行済みビザの効力を停止するという強い措置に、驚いた旅行者は多かったようです。
アメリカの入国制限
さらに世界を驚かせたのが、アメリカの入国制限です。3月11日にトランプ大統領が演説を行い、イギリスを除くヨーロッパ全土からアメリカ国内への入国を3月13日から30日間停止すると発表しました。
外国人の一律入国禁止ではないので「鎖国」ではありませんが、アメリカとつながりの深い欧州のほぼ全域からの入国禁止は、衝撃を持って受け止められました。
東欧で「鎖国」本格化
アメリカの入国制限発表後、ヨーロッパで入国禁止を表明する国が続きます。ポーランドが3月13日に、外国人の入国を3月15日から禁止すると発表。デンマークも14日から1か月間、外国人の入国を認めないことを明らかにしました。
チェコは、90日を超える滞在許可を持たないすべての外国人について、3月16日から入国を禁止。チェコ国民や、90日を超える滞在許可を持つチェコ在住の外国人がチェコから出国することも禁止します。
スロバキアも、3月13日より、恒久的な住所をスロバキアに有している者やスロバキアのパスポートを所持している者を除き、スロバキアへの入国を禁止しました。
ウクライナも3月15日から、外交官を除くすべての外国人の入国を2週間禁止すると発表しています。
ヨーロッパ以外でも、ニュージーランドは、太平洋島嶼国を除く国・地域から入国するすべての人について、入国後2週間は隔離対象となると発表しました。カナダも13日、入国する全ての渡航者について14日間の自主隔離を求めると発表しました。いずれも、事実上の入国制限といえます。
中米のエルサルバドルは3月11日、すべての外国人の入国を21日間禁止すると発表。中東のオマーンは3月15日から30日間、すべての国を対象として観光査証の発給を停止します。
国際線全便停止も
飛行機の運航を全面的に停止をする国も増えています。
前出のポーランドは3月15日からすべての国際線と、国際列車の運行を停止。ウクライナは、3月17日からすべての国際線の運航を停止します。モルトバは、同国での滞在許可を持つ人を除く外国人を搭乗させないことを、航空会社に求めました。
サウジアラビアも3月15日から、すべての国際線を2週間運航停止すると発表。隣国クウェートも、3月13日からクウェート空港の定期便を全て運航停止としています。
アジアでは、モンゴルが全ての国際線定期便の運航を3月28日まで停止しています。
今回ばかりは慎重に
ここまで紹介したのは、主に外国人の入国を一律に禁止する国です。日本を含む感染国からのみ入国を制限する国ならば、もっと多くあります。入国後の隔離を義務づける国も多く、それが事実上の入国禁止になっている場合もあります。
現時点では、イタリアを除く西ヨーロッパやアメリカでは、日本人の入国や自由な旅行がなんとか可能なようですが、今後、状況が変わる可能性もあります。バックパッカーなど海外を自由に歩く旅行者も、一時的な帰国を検討したほうがよさそうです。
また、ゴールデンウィークの日本発着の海外航空券が安い価格になっていますが、今後、飛行機の運休や欠航、入国制限などさまざまな可能性があります。「航空券は安いし観光地は空いている!」と小躍りしている旅行者もいそうですが、自戒を込めて言えば、今回ばかりは慎重に判断した方がいいでしょう。
なお、新型コロナウイルスをめぐる状況は流動的なため、記載した情報が間違っている可能性もあります。ご旅行の際はご自身でお確かめください。(鎌倉淳)