格安航空会社ピーチ航空が、機内持込荷物の約款を変更へ。身の回りの品の個数を1個に制限。でも厳密に適用できるの?

格安航空会社のピーチ・アビエーション(ピーチ航空)が、2013年4月22日より機内持ち込み手荷物に関する約款を改定します。この改定により、これまで制限のなかった機内持込手荷物の「身の回りの品」の個数が、1つまでに制限されます。

ピーチ航空の旧約款において、機内に持ち込める手荷物は、「三辺の和の総計が115cm以内の荷物」が1個と「身の回りの品」とされてきました。「身の回りの品」とは、ハンドバッグ、カメラ、パソコン、傘などを指しますが、それらについての個数制限はありません。つまり、「身の回りの品」と言い張れば、紙袋やら小さな荷物やらを複数持ち込むことができたわけです。

新約款では、「三辺の和の総計が115cm以内の荷物」が1個と「身の回りの品」が1個と定められます。この約款を厳密に適用すれば、たとえば小さなカバンと傘を一本持っていると、ハンドバックを持ち込むこともできなくなります。

ピーチ航空のルール
画像:ピーチアビエーションのウェブサイト

なぜ、ピーチはこのような改定を行ったのでしょうか。答えは明らかで、「機内に持ち込む手荷物が多すぎる人」がいるからでしょう。

ピーチ航空では、受託手荷物は有料で、1個につき最低1050円の料金がかかります。そのため、手荷物を預けずに多数の荷物を機内に持ち込む人が後を絶ちません。「身の回りの品」のみならず、お土産の紙袋などをたくさん抱えているくらいはまだいいほうで、どう見てもサイズオーバーとしか思えないカートや、大きな荷物を複数持ち込んでいる人もいるようです。

しかし、それでは料金をきちんと払って受託手荷物にした人は疑問を抱くでしょう。「自分は別料金を払っているのに、あの人はあんなたくさんの手荷物を持ち込んで良いのか」という感想を抱くのは当然です。そしてその人は、次回はたくさんの荷物を機内に持ち込むようになるかもしれません。そうなると悪循環で、「機内持込手荷物」のルールが形骸化してしまいます。それを避けるために、「身の回りの品」も1個に制限し、機内持込荷物は最大でも2個まで、という決まりにしたようです。

もちろん、これは適切な施策といえるでしょう。問題はこの約款をどこまで厳密に適用するのか、ということ。同社のウェブサイトには、「免税品など保安検査場を通過後に購入したお土産や小型スーツケースなどは通常の手荷物とみなされます」と明記し、お土産であっても個数に数えるとしています。でも、本当に「傘一本」「お土産紙袋一つ」も手荷物に数えて、持込を禁止するのでしょうか。

これを厳密にあてはめて、搭乗時にチェックし、違反者からは手荷物料金を徴収して受託手荷物に回すのなら、日本の航空会社としては画期的といえます。海外では荷物規定を厳密に当てはめる航空会社もありますが、日本の航空会社は、LCCも大手航空会社も、これまで機内持込手荷物に関してはかなり「甘い」という印象しかありません。土産の紙袋まで「手荷物」と数えてルールを厳密に適用するのなら、乗客とかなりの軋轢を覚悟しなければならないでしょう。また、全ての乗客に平等に適用しなければ、クレームの種を増やすだけです。しかし、現場の係員が、そうしたややこしいミッションにきちんと取り組めるのでしょうか。

受託手荷物料金は、格安航空会社LCCの収益源の一つです。手荷物ルールをどこまで厳密に適用できるかは、日本でLCCが根付く一つのポイントになります。日系LCCのパイオニアであるピーチ航空が、この問題にどう取り組んでいくのか、注目に値します。

同時に、ゴールデンウィークにピーチ航空に乗る方は要注意。新しい約款に適合するように、機内持込手荷物は一つにまとめましょう。

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