『鍋に弾丸を受けながら』第4巻が12/11発売。台湾で「危険なグルメ」を求めて

「危険とされる場所の料理には、とんでもなく美味いものがある」

『鍋に弾丸を受けながら』(青木潤太朗原作、森山慎作画)の第4巻が12月11日に発売されます。旅と料理が好きな釣り人が、「治安の悪い場所ほど美味い料理がある」という考えのもと、世界を旅するコミックエッセイの最新作です。(この記事は、KADOKAWAとのコラボレーションで製作しています)

鍋に弾丸を受けながら第4巻
画像:KADOKAWA

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イエメンの美味

アラビア半島のイエメン北部に、シャハラという都市があります。標高2,000メートルの山脈の稜線上に位置し、オスマントルコの全盛期も独立を守り抜いたという、難攻不落の要塞都市です。

いまから20年ほど前に、私は旅行者数人とクルマでシャハラを訪れたことがあります。

当時のイエメンの政情は比較的落ち着いていました。しかし、首都サナアを離れ、途中、立ち寄った町で驚かされたのは、住人の武装率の高さです。

成人男子はすべからくライフルを肩にかけていて、丸腰なのは私たちくらいでした。道中の食堂に立ち寄ったときは、店内の至るところにライフルが置かれていて、まるで戦場のようです。

若干の緊張を覚えながらシャハラに着き、民家に泊めてもらいました。裸電球一つで暖房もないような、暗く寒い部屋です。

そこで夕食に出された家庭料理は絶品でした。トマトベースの豆料理と、キッシュのようなもの、それにスパイスで炒めたライスでしたが、中東でこんな美味いものを食べたことがないと驚くほど、どれも奥深い味でした。

イエメン料理

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危険な場所に5万点の料理

『鍋に弾丸を受けながら』は、「危険とされる場所の料理には、とんでもなく美味いものがある」というコンセプトの作品です。

「日本みたいに安全な場所では70点から90点のものがどこでも食える」としたうえで、危険な場所の料理を「20点か5万点」と表現し、その5万点を探し求める旅をマンガにしたものです。

危険な場所の料理に「5万点」があるという見解に完全同意するかはともかく、言わんとしていることは理解できます。

危険な場所では、厳しい環境のためか、ふだんより食事が美味しく感じられます。あるいは、現地調達した素材をすぐに食べるからか、実際に美味しいのかもしれません。

シャハラの民家での料理も、環境と素材の両方が、私の感覚を刺激したのでしょう。たしかに「5万点」でした。

一方、危険な場所での料理に「20点」レベルの不味いものが多いのも、おそらくは事実でしょう。食料の供給が第一で、味など二の次というような環境では、やむを得ないことです。

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絶品のハルヴァ

前置きが長くなりましたが、『鍋に弾丸を受けながら』は、主人公のジュンタローが世界を旅しながら、「5万点」の料理を紹介していく作品です。第1巻から第3巻では、メキシコ、ブラジル、アメリカ、ドバイなどを訪れています。

ジュンタローは釣り人で、世界各地で釣りを楽しみ、インターネットで知り合った釣り仲間などと現地料理を味わいます。普通に旅していては出会えないような、想像もつかない料理のバリエーションに、読み手は唾を飲み込みます。

既刊で印象的だったのは、第2巻のドバイ編で出てきた「ハルヴァ」でしょうか。中東の伝統的な菓子で、本書によれば「砂糖を極小の繊維状にし、それをベースにした」ものだそうです。

ハルヴァ
画像:「鍋に弾丸を受けながら」第2巻より

ジュンタローは、ドバイで購入したハルヴァの味に絶句し、「砂糖ってこんなにうまいのか!?」と感動します。そこで日本でもハルヴァと名の付くものを見つけては食べてみますが、ドバイのものの足元にも及びません。

じつは、ハルヴァは「和菓子でいえば羊羹みたいにピンからキリまで」種類があるそうで、ジュンタローは後に、ドバイで手に入れたものは、パレスチナ人が作った逸品であることを知ります。

私もハルヴァ(らしきもの)を食べたことはありますが、「甘い」という以上の感想はなく、おそらくは「キリ」のものしか味わったことがないのでしょう。

いつかパレスチナを訪れてハルヴァを食べてみたいと思いますが、もちろん、いまの中東情勢では、そう簡単に日本人がパレスチナに入ることはできません。

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台湾を舞台に

さて、新たに発売される第4巻は、おもに台湾が舞台です。

台湾では基本的に何を食べても美味しいと思いますが、本書では、アボカドやスイカ、マンゴーといった果物類や、「中毒性があるくらい美味い素マントウ」などが登場しています。

目を引くのは、「世界最強級に美味しい汁かけ飯」という台南式海鮮粥。エビ、イカ、牡蠣、アサリといった海鮮をどばっとご飯にかけるだけですが、「高級コースのメインを張るようなもの」が具材なので、その味は衝撃的。

台南式海鮮粥
画像:「鍋に弾丸を受けながら」第4巻より

台湾料理は、第3巻までに登場するアメリカやドバイの食事に比べると身近です。

しかし、台湾を旅してこのメニューにたどりつくのは難しそう。その近くて遠い距離感が絶妙です。

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これからも旅ができる場所で

それにしても、私のような1980年代に旅をはじめた「昭和バックパッカー世代」としては、ジュンタローの旅をみていると、隔世の感を覚えずにはいられません。

釣りという趣味を通じて、ネットで世界各地の同好の士とつながり、現地で交流し、その案内で、危険な場所の稀少なグルメに舌鼓を打つ。そんな旅ができる時代が来ることを、三十数年前に想像することはできませんでした。本当に、素晴らしい時代になりました。

反面、いまの世界はテロや戦乱が相次いでいて、自由に旅行できる範囲は狭まっています。

「危険とされる場所」は、もう本当に危険になりすぎて、一般の旅行者が、5万点や20点のグルメを味わえるような場所でなくなってきています。

パレスチナのハルヴァはいまもドバイで食べられそうですが、冒頭で紹介したイエメンのシャハラは、もう十年以上、一般旅行者が訪問できるような状況ではありません。

せめてこの作品で描かれた場所が、これからも「危険だけれど美味しい」旅ができる場所でありつづけることを、願いたいところです。(鎌倉淳)

『鍋に弾丸を受けながら』第4巻(青木潤太朗原作、森山慎作画)
■刊行日:2023年12月11日
■出版社:KADOKAWA
■定価:946円(税込)

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