ANA、中古機導入の仰天。DHC-8-400型機、MSJ開発中止で窮余の策?

メーカー認定

ANAがDHC-8-400型機の中古機を導入すると発表しました。ANAが中古機を投入するのは異例で、仰天した方も多いでしょう。

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メーカー認定中古機

ANAは、デ・ハビランド・カナダのDHC-8-400型機を新たに7機増機すると発表しました。導入するのは中古機で、デ・ハビランド・カナダ社が整備・改修をした後に、ANAに引き渡されます。

いわば「メーカー認定中古機」です。機材は無事故機で、導入後も10年以上の長期にわたり使用可能とのこと。納入時にはANA在来機と同仕様に改修されます。座席数は1クラス74席です。

ANA DHC-8-400型機
画像:ANA

 
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トラブルも鎮静化

DHC-8-400型機は、ターボプロップエンジンを搭載した、いわゆる「プロペラ機」です。ANAグループで最初に導入されたのは2003年で、子会社のエアーセントラルで就航しました。

2007年には伊丹~高知便で前輪が出ず、高知空港で胴体着陸をするという事故を起こしています。同時期に他社でもDHC-8-400型機で機体トラブルが続発したことを覚えている方も多いでしょう。

ただ、その後はトラブルも沈静化。ANAでは現在24機を保有し、主に地方路線に投入しています。

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MRJ導入を目論むも

ANAのDHC-8-400型機の保有機材は老朽化が進んでいて、更新期にさしかかっています。ANAでは、当初、後継機として、三菱航空機が開発していたMRJ(MSJ)の投入を目論んでいました。

2008年にMRJの導入を決定した際には、737-500型機やDHC-8-400型機と比較したうえで、「現行小型ジェット機やプロップ機を凌ぐ信頼性・経済性・快適性が確保できる」ことを導入理由のひとつとして挙げています。

このときは、2013年以降の導入に向けて、ローンチカスタマーとなり、MRJ開発に参画することを表明していました。

しかし、三菱は結局、MSJの開発を断念。ANAホールディングスの芝田浩二社長は、2024年4月の決算会見で、「MSJに代わる100席前後の機材の調達が課題」と述べていました。今回のDHC-8-400型機の導入は、その答えの一つとみてよさそうです。

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新造機の調達できず

気になるのは「中古機」という点でしょう。これには理由があり、現在、デ・ハビランド・カナダはDHC-8-400型機の製造を休止していて、新造機の調達ができないためとみられます。

デ・ハビランド・カナダは、トロント工場の閉鎖にともない、2021年にDHC-8-400の製造休止を発表しています。製造再開は、新工場が稼働する2025年以降の見通しと伝えられています。となると、あと数年は同型の新造機を調達できません。

同規模の機種としては、ブラジル・エンブラエルのE-Jet E2や、仏ATRのATR72-600などがあります。JALは、エンブラエルのE90や、ATR72-600をすでに導入しています。ANAでも、これらの機材を検討したとみられますが、最終的にDHC-8-400の中古機を選んだわけです。

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窮余の策?

選定理由は想像するほかありませんが、おそらくは、機材や使用航空機メーカーの数を増やしたくないのでしょう。

新たなメーカーの機材を増やせば、パイロットや整備士の訓練に手がかかります。DHC-8-400の製造が再開されるなら、それを待って更新していくほうが効率的と判断したのでしょう。製造再開までの時間稼ぎとして、導入するのが中古機ということではないでしょうか。窮余の策にみえなくもありませんが、合理的な経営判断ともいえます。

ただ、4月の会見で、芝田社長は「1年かけて機材選定については議論を深めていく。マーケット特性に応じた機材選定を、国際・国内ともに進める」と説明しています。この言葉をそのまま受けとめるなら、中古機導入は「一時しのぎ」で、今後、新機材の導入に踏み切る可能性もありそうです。(鎌倉淳)

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