「ローカル路線バスの旅 陣取り合戦」第8弾 八戸~弘前を分析する。がっぷり四つの好勝負

行ったところ覚えているわけないでしょ

「ローカル路線バス乗り継ぎ対決旅 陣取り合戦」第8弾が放送されました。太川陽介が率いるチームと河合郁人が率いるチームが、青森県八戸市から弘前市を目指して競いました。

乗り継ぎで気になった部分を検証してみましょう。なお、以下はネタバレ100%です。あらかじめご了承ください。(文中敬称略)

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市町村を取り合う

「ローカル路線バス乗り継ぎ対決旅 陣取り合戦」は、ローカル路線バスを乗り継いで「陣」に見立てた各市町村の名所・名物を体験し、その数を競うテレビ番組です。

その第8弾が2022年6月29日にテレビ東京系列で放送されました。対決したのは、ルイルイこと太川陽介が率いるチームと、A.B.C-Zの河合郁人が率いるチームです。

太川チームには、元NGT48の荻野由佳と、ザ・マミィの酒井貴士が参加。河合チームには元フィギア女王の安藤美姫とザ・マミィの林田洋平が加わりました。

どちらのチームも使っていいのはローカル路線バスのみ。ただし、両者とも1万円までタクシーを利用できます。

スタートは青森県の八戸駅前。ゴールは弘前市の弘前城です。青森県内の39市町村(八戸市除く)を陣に見立て、1泊2日で陣取りを競います。ゴール時刻は18時までで、より多くの陣を確保したチームが勝ちです。

なお、新型コロナウイルス感染症の状況もあり、今回も20時以降の陣取りやバス乗車は禁止されました。飛び地を持つ市町村には2陣を与えるというボーナスも設定されています。

ローカル路線バス陣取り合戦8
Ⓒテレビ東京

水バラ ローカル路線バス乗り継ぎ対決旅 陣取り合戦 第8弾 爽快!初夏の青森でバトル
【出演】 太川陽介、荻野由佳、酒井貴士(ザ・マミィ)、河合郁人(A.B.C-Z)、安藤美姫、林田洋平(ザ・マミィ)
【放送日】2022年6月29日(水) 18時25分~21時54分(テレビ東京系列)

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太川チームの実際ルート

まずは、両チームが実際に旅したルートをおさらいしてみましょう。時刻表上の定刻をわかる範囲で確認しました。番組ではっきり示されなかった時刻や距離、経路は、筆者による推定です。なお、ロケは土日に実施されたようですので、以下の検証も1日目は土曜ダイヤ、2日目は日曜ダイヤに依拠しています。

最初に太川チームのルートです。☆は獲得した「陣」の市町村名です。

▽1日目
八戸駅前09:00→09:34中央→徒歩0.2km→三福(☆五戸町)→徒歩0.2km→中央11:50→12:20十和田市まちなか交通広場12:49→13:25三沢駅→み~くる(☆三沢市)→三沢駅13:45→14:14十和田市中央→徒歩0.5km→十和田市まちなか交通広場14:43→15:21道の駅しちのへ(☆七戸町)17:21→17:58裁判所前→徒歩0.5km→常夜燈公園(☆野辺地町)→徒歩2.3km→野辺地駅

▽2日目
野辺地駅前08:27→09:12ほたて広場前→ほたて広場(☆平内町)→徒歩2km→道の駅ゆーさ浅虫前10:14→10:48青森駅前→徒歩0.4km→青森魚菜センター(☆青森市)→徒歩0.4km→青森駅前11:38→12:55黒石駅前→すごう食堂(☆黒石市)→黒石駅前14:10→14:23畑中→徒歩0.4km→田んぼアート(☆田舎館村)→タクシー6.2km→きくち覚誠堂(藤崎町、空振り)→タクシー7.6km、計4,810円→弘前城


Googleマップは概略です。一行がたどったルートを正確に表示しているわけではありません(以下同)。

野辺地ルートをたどる

太川チームは、五戸から野辺地を経て青森に至る「野辺地ルート」を採りました。

2日目に田舎館の陣(田んぼアート)を押さえた後、タクシーで藤崎の陣(きくち覚誠堂)に至ったものの、河合チームの後塵を拝し空振りに終わります。その後、平川市へ向かうことを検討したものの、タクシー代が足らないことがわかり、弘前城のゴールへ向かいました。

弘前城のゴール時刻は16時ごろとみられます。河合チームに先手を取られ、弘前の陣を確保することはできませんでした。

最終的に太川チームが獲得した陣は、五戸町、三沢市、七戸町、野辺地町、平内町、青森市、黒石市、田舎館村の計8つでした。

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河合チームの実際ルート

つづいて、河合チームのルートをおさらいしておきましょう。☆はチェックポイントです。

▽1日目
八戸駅西口09:35→11:02奥入瀬渓流温泉→徒歩0.9km→出合い橋(☆十和田市)→徒歩0.9km→焼山14:41→16:59青森駅前17:53→19:15五所川原駅前→タクシー11km→鶴の舞橋(☆鶴田町)→タクシー11km、計6,380円→五所川原駅前

▽2日目
五所川原駅前07:20→07:45斜陽館前→斜陽館(☆☆五所川原市)→斜陽館前09:20→09:48五所川原駅前10:15→10:25イオンモールつがる柏→つがる市農産物直売所(☆つがる市)→イオンモールつがる柏10:35→10:45五所川原駅12:00→12:44ふるさとセンター前→ふるさとセンター(☆板柳町)→徒歩5.8km→きくち覚誠堂(☆藤崎町)14:00→タクシー7.3km→弘前城(☆弘前市)

奥入瀬ルートをたどる

河合チームは、奥入瀬経由で青森駅に入る「奥入瀬ルート」を採りました。青森市内には太川チームより先着しましたが、ミッションの営業時間の関係で陣を得られませんでした。

2日目は藤崎の陣からタクシーで弘前城に直行し、弘前の陣も手にしました。14時半頃にはゴールできていたとみられます。

河合チームが獲得した陣は、十和田市、鶴田町、五所川原市(2陣扱い)、つがる市、板柳町、藤崎町、弘前市の計8つです。

ということで、1日目にやや押され気味だった河合チームが、最後に弘前市の陣を確保して引き分けに持ち込みました。

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太川チームの検証

では、両チームのとったルートについて、気になる部分を検証してみましょう。まずは太川チームからです。

八戸駅でジャンケンに勝った太川チームは、9時発のバスで五戸へ向かいます。番組では、そのほかの路線の候補として、河合チームが乗った09時35分発の十和田湖行きと、11時発の十和田市行きが紹介されていました。

11時発は遅すぎますので、「五戸町方面に向かうか、十和田湖方面に向かうか」の、事実上二択だったといえます。

南部町・階上町方面は?

ただ、八戸市の周辺には、他に南部町と階上町という自治体もあります。また、八戸市のバス交通の中心は、八戸駅ではなく、中心街ターミナルです。ルイルイがそれに気付いて中心街ターミナルに向かい、南部町や階上町方面を調べていたら、どうなっていたでしょうか。

▽1日目
八戸駅08:30→08:50八戸中心街ターミナル〔八日町/六日町〕09:00→09:49南部町役場09:50→10:41八戸中心街ターミナル〔八日町〕

このように、南部町に向かった場合、陣が町役場の手前にあり、短時間でこなせるものであれば獲得できそうです。すぐに折り返せば、10時40分頃に八戸市の中心街に戻ることができます。

階上町方面に向かうと、次のようになります。

▽1日目
八戸駅08:30→08:50八戸中心街ターミナル〔八日町/中央通り〕08:55→09:33階上庁舎前10:10→10:50八戸中心街ターミナル〔中央通り〕

階上町方面に向かった場合も、階上庁舎付近で短時間でクリアできるミッションならば、11時前までに八戸市中心街に戻ることができます。

ということで、1日目の午前中に南部町か階上町の陣を押さえることはできそうです。

ただ、その後、八戸から五戸を経て野辺地へ向かおうとすると、八戸中心街ターミナルを10時44分に出るバスに乗らなければ、後が苦しくなります。南部町方面から帰ってきたとしてギリギリ、階上町から帰ってきたら間に合いません。

となると、先に南部町や階上町へ向かったほうがよかった、という話にはなりません。

要するに、冒頭で五戸町方面のバスを選択したルイルイの判断は、間違っていませんでした。というよりも、両チームのどちらかが五戸行きに乗り、どちらかが十和田湖行きに乗るという設定は、番組制作サイドが想定していた形なのでしょう。

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三沢折り返しの判断は?

太川チームは、五戸の陣を押さえた後、十和田市のバスターミナルに到着。七戸・野辺地方面へのバスの待ち時間を利用して、三沢駅行きのバスに乗りました。十和田市~三沢間のバスは、十和田観光電鉄の廃止代替路線という歴史的な経緯があり、土日でも便数が多いのが特徴です。ルイルイは、その路線を効率的に活用しました。

三沢行きのバスは、途中、六戸町内を通りますが、一行は陣である「幸寿し」の位置がわからず、三沢まで乗り通しました。三沢では、駅前にあった陣を確保して折り返します。

この幸寿しは、十和田・三沢間のバスの沿線からは離れていますので、情報のないまま降車しなかったルイルイの判断は適切でした。結果的に、十和田市での待ち時間を活用して三沢の陣を獲得できたわけで、ルイルイの好判断が生み出したファインプレーだったといえます。

七戸をスルーしたら?

太川チームは、十和田市からのバスで野辺地に向かう際、途中の七戸で降りて陣を獲得しました。もし、七戸の陣をスルーして、先を急いだらどうなっていたでしょうか。

▽1日目
十和田市まちなか交通広場14:43→15:58裁判所前→徒歩0.5km→常夜燈公園(☆野辺地町)→徒歩2.3km→野辺地駅前17:14→18:08浅虫温泉→徒歩0.2km→浅虫温泉駅前18:35→19:20青森駅

このように、野辺地の陣を獲得した上で、1日目に青森駅に着くことができます。ただし、七戸の陣だけでなく、平内の陣(ほたて広場)も取っていませんので、1日目に獲得できる陣は3陣にとどまります。

そして、これだけ急いでも、青森以遠で河合チームの先手を取れるわけではありません。となると、七戸スルーが優れているとまではいえないようです。

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野辺地からタクシーで急いだら?

実際ルートに戻ると、太川チームは道の駅にあった七戸の陣を確保して野辺地に進み、荒天のなか、海沿いの野辺地の陣(常夜燈公園)に到達します。そこから歩いて野辺地駅に戻り、時刻は19時。青森市方面へのバスはなく、1日目を野辺地で手じまいます。

気になったのは、活動可能時間が20時まで残っていたということ。つまり、1時間あるわけで、ここでタクシーを使って青森方面へ向かうことはできなかったのでしょうか。

調べてみると、野辺地駅からとにかく西へ行こうと探れば、以下のように乗り継ぐことができたかも知れません。

▽1日目
野辺地駅19:00→タクシー6.8km、2,380円→狩場沢19:14→20:00浅虫温泉

▽2日目
浅虫温泉駅前07:21→08:06青森駅前

早朝に青森に着けていたら

野辺地の西約7kmの狩場沢まで行けば、浅虫行きのバスが出ていました。この乗り継ぎを見つけられれば、翌日の朝早い時間に青森駅の魚菜センターを訪れることができます。魚菜センターは朝7時から営業していますので、早朝に青森の陣を得ることができたでしょう。

魚菜センターでミッションを終えた後、黒石方面のバスは09時33分発があります。これに乗るとどうなるでしょうか。

▽2日目
浅虫温泉駅前07:21→08:06青森駅前→青森魚菜センター(☆青森市)→青森駅前09:33→10:45黒石駅前→すごう食堂(☆黒石市)→黒石駅前12:10→12:23畑中→徒歩0.4km→田んぼアート(☆田舎館村)→タクシー6.2km→きくち覚誠堂(☆藤崎町)→タクシー7.6km→弘前城

青森以降で実際ルートをたどったと仮定すると、藤崎町の陣には13時半頃に着けるかもしれません。ここで河合チームの先手を取って押さえられれば、弘前の陣を取れなくても計8陣となります。河合チームは藤崎町の陣を得られなければ7陣なので、太川チームが勝利していたでしょう。

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田舎館村の選択

実際ルートに戻ります。2日目、太川チームは始発バスで野辺地を出発し、平内の陣(ほたて広場)を押さえて、青森駅に11時前に到着しました。青森では短時間の乗り換え時間でしたが、酒井の提案を容れて青森の陣(魚菜センター)も確保しました。酒井のファインプレーでしょう。

この後、ポイントとなったのは、田舎館村で田植えを終えた後の選択です。藤崎の陣(きくち覚誠堂)を目指したものの、河合チームの後手を踏んで獲得できませんでした。結局、この失策が響いて勝ち越せなかったのですが、このとき、北の藤崎町ではなく、南の平川市に向かっていたらどうなっていたでしょうか。

▽2日目
田舎館村役場→タクシー8.2km、2,740円→平川市役所→タクシー11.4km、3,730円→弘前城

平川の陣がどこにあるかは不明ですが、平川市役所付近と仮定した場合、田舎館村役場(田んぼアート)から平川の陣を経て弘前城までタクシーで乗り通すのは、予算的にも時間的にも難しくありません。その場合、平川の陣を得て太川チームは9陣となり、勝利していた可能性が高いでしょう。

大鰐町まで足を伸ばせたか

ちなみに、平川市のさらに南にある大鰐町まで足を伸ばしても、以下のようにゴールできます。

▽2日目
田舎館村役場→タクシー8.2km、2,740円→平川市役所→タクシー8.5km、2,830円→大鰐温泉駅前16:42→17:20弘前バスターミナル

大鰐温泉駅前16時42分発のバスに乗れば、弘前城に18時までにゴールが可能です。実際ルートに基づけば、田舎館村役場を15時頃に出発し、約1時間半で20km弱をタクシーで移動しミッションを2箇所こなせば計10陣を得られた、という話なので、現実的には難しかったでしょうが。

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タクシー代の使いどころ

振り返ってみると、太川チームは、2日目午前中までタクシー代を全く使わず、1万円を温存していました。太川自身が反省していたように、この1万円を残さず使えば、終盤にもう1陣を奪えた可能性があります。

その点で惜しまれるのは、黒石の陣(すごう食堂)を得たあと、14時10分発のバスを待ってしまったことかもしれません。2日目の14時にタクシー代を温存する意味はありません。

黒石の陣のミッションは13時半頃には終わっていたはずで、バスを待たずにタクシーで藤崎町の陣に向かっていたら、河合チームの先手を打てた可能性もあります。

さらにいえば、黒石を13時半に出て、直接弘前城に向かっていれば14時前にゴールできていたはずで、河合チームより早かったでしょう。その場合、ゴールの陣を奪って、8対7で太川チームが勝利していました。

東北町の陣は?

疑問点があったとすれば、七戸から野辺地に向かうバスは東北町を通ったはずですが、そのしおりをめくるシーンがなかったことです。チーム3名が揃って見落とすとも思えないので、おそらくは確認の上、スルーしたのでしょう。オンエアでカットされたのは、何か事情があったと思われます。

もし、バスの沿線に東北の陣があったなら、途中下車して獲得してからタクシーで野辺地に向かう方法が優れていたかもしれません。その場合、1日目に1陣が純増でした。

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