「ローカル路線バスの旅Z 第7回 宮城・塩釜~青森・恐山」の正解ルートを考える。不運が重なった希有な回

こういうこともある

テレビ東京系列の「ローカル路線バス乗り継ぎの旅Z」第7回が放送されました。田中要次と羽田圭介のコンビが、路線バスだけを乗り継いで旅をする番組です。

マドンナは秋本奈緒美。年齢は55歳です。これまで「Z」シリーズでは比較的若いマドンナが登場していましたが、今回はベテラン女優を起用しました。

お題は、宮城県の塩釜をスタートし、3泊4日で青森県の恐山に到達するというものです。途中、石巻・釜石・八戸の3か所のチェックポイントを経由しなければなりません。

例によって正解ルートを検証してみます。なお、以下はネタバレ100パーセントです。また、結果論100パーセントです。行ってない筆者が机上で語っているだけです。ご理解ください。

※以下、掲載時刻は確認しましたが、間違いや勘違いがあると思います。その場合はご容赦、ご指摘ください。文中は敬称略です。

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実際に旅したルート

最初に、番組で3人が実際に旅したルート(実際ルート)をたどってみましょう。時刻表上の定刻を確認してみました。

▽1日目
塩釜駅08:20→08:56物産館09:14→09:49松島町役場10:45→11:27上竹谷→徒歩2.5km→二子屋→3.7km→鹿島台駅13:25→13:57和多田沼→徒歩3.2km→涌谷駅前15:34→16:10三軒屋敷→徒歩2.2km→河南総合支所17:05→18:06石巻駅前

▽2日目
石巻駅前08:15→09:16河南総合支所→徒歩0.5km→前谷地09:56→12:25気仙沼/気仙沼駅前14:09→15:13商人橋→徒歩0.4km→大船渡駅→徒歩3.1km→盛駅17:57→18:23越喜来浦浜→徒歩3.5kmでリタイア→宿送迎→越喜来の民宿

▽3日目
越喜来の民宿→宿送迎→リタイア地点→徒歩11.0km→唐丹駅前08:22→08:50釜石駅前09:31→10:19道の駅やまだ10:41→11:46宮古駅前12:05→14:20盛岡駅前(東口)15:10→17:55久慈駅前

▽4日目
久慈駅前07:55→08:45陸中大野/大野09:04→10:05八戸中心街ターミナル(三日町)/ 同(六日町)10:15→10:40八戸駅前11:00→12:13十和田市中央14:17→15:29野辺地駅前16:19→17:48むつバスターミナル

むつバスターミナルから恐山へはバスで1本ですが、14時10分発が終バスで、一行が到着したときにはすでに終わっていました。

少し離れた下北駅を16時55分に出るバスもありますが、これにも間に合いません。ということで、ゴールを断念。恐山まであと10kmというところで、結果は「失敗」に終わりました。

では、正解ルートを探しながら検証してみましょう。

ローカル路線バスの旅Z7
画像:テレビ東京ホームページ

ローカル路線バス乗り継ぎの旅Z 第7弾
【出演者】田中要次、羽田圭介、秋本奈緒美
【ナレーター】キートン山田、太川陽介

初日の停滞は避けられたか

番組を見ていて気になったのは、やはり初日の停滞でしょう。塩釜駅を午前8時すぎに出発しながら、直線距離で30km足らずの石巻駅までたどり着くのがやっとでした。スタートの塩釜から、最初のチェックポイントの石巻まで、もう少し合理的なルートがないかを考えてみましょう。

塩釜駅を8時20分のバスに乗った一行は、大郷町住民バスで物産館に達します。物産館は、このエリアのバスのターミナルになっています。

物産館から一行は松島町役場に向かいました。住民バスの路線図上は、鹿島台駅方面へ行く路線もありますが、時刻表を見ると火金のみ運行の1日1便のみ。一行が物産館に着いた午前9時頃からでは、運行日であっても間に合いません。そのため、物産館から鹿島台へバスで行くことはできません。

午前9時すぎの時間帯で、物産館から出るバスは松島町役場方面のみで、他に選択肢はありませんでした。

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松島町役場まで乗らなかったら

ただ、物産館からのバスを、松島町役場まで乗らず、途中で降りるという方法はありました。不来内分館という停留所で降りて鹿島台駅まで歩けば、歩く距離を減らして、時間を節約できます。

▽1日目
物産館09:14→09:29不来内分館→徒歩7.1km→鹿島台駅11:35→12:07和多田沼→徒歩3.2km→涌谷駅前12:49→13:25三軒屋敷→徒歩2.2km→河南総合支所14:25→15:26石巻駅前17:00→17:57河南総合支所→徒歩0.5km→前谷地19:16→21:44気仙沼22:09→23:17盛

BRTは終バスが遅いので、1日目に盛まで到着することができます。

盛に1日目に到着したとして、実際ルートと同じ道のりをたどった場合を検討してみます。

▽2日目
盛駅07:22→07:48越喜来浦浜→徒歩14.5km→唐丹駅前12:47→13:15釜石駅前14:26→15:14道の駅やまだ15:38→16:49宮古駅前17:05→19:20盛岡駅前(東口)

▽3日目
盛岡駅前(東口)06:10→09:12久慈駅前13:00→13:50陸中大野/大野14:30→15:31八戸中心街ターミナル(三日町)/ 同(六日町)15:35→15:59八戸駅前16:20→17:23十和田市中央18:44→19:48野辺地駅前

▽4日目
野辺地駅前07:20→08:49むつバスターミナル09:20→09:53恐山

このように、4日目の午前中に恐山に到着できます。ここまで急がなくても、1日日に盛まで着けば、2日目以降がとてもラクになりそうです。

ただ、1日目の大郷町住民バスで、不来内分館で降りて鹿島台駅まで歩くルートを選択するのは、情報不足で困難だったでしょう。松島町役場まで行き情報収集をした一行の選択が、間違っていたとはいえません。

東松島市を突っ切ったら

1日目のもう一つの選択肢として、路線バスの走っていない東松島市を突っ切って歩いてしまう方法もあったと思います。その場合はどうなっていたでしょうか。

▽1日目
塩釜駅08:20→08:56物産館09:14→09:49松島町役場前10:56→11:26古浦→徒歩15.5km→石巻運転免許センター15:44→16:30石巻駅前17:00→17:57河南総合支所→徒歩0.5km→前谷地19:16→21:44気仙沼22:09→23:17盛

徒歩15.5kmを歩くのは大変ですが、起伏の少ない道のりですので、できなくはなかったでしょう。4時間あまりで歩き切れば、石巻駅17時発のバスに乗って、1日目に盛まで到達できます。

とはいえ、先の見えない1日目に、いきなり15㎞以上の徒歩に挑むのは勇気がいります。現実的に、一行が松島町役場から町営バスに乗り、上竹谷から鹿島台駅を目指したのは順当といえそうです。

初日は手堅く進んだ

実際ルートに戻ります。一行は松島町役場から松島町営バスに乗り上竹谷に至り、美里町に入り二子屋というバス停を見つけます。時刻は11時59分。しかし、バスは11時40分に行ったばかりでした。時間的にどうがんばっても、このバスには乗れなかったでしょう。

となると、上竹谷から二子屋を経て鹿島台駅まで歩いたことは、やむを得なかったといえます。

振り返ってみると、塩釜~石巻間をもう少し早く通り抜ける方法はありますが、情報収集の手順を踏んで進んだ場合、一行が通ったルートは間違っていなかったように思えます。

したがって、初日に石巻までしか到達できなかったことは、失敗とはいえず、徒歩距離を抑えながら手堅く進んだという印象です。

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内陸か海岸か

2日目、一行は石巻から前谷地にいたり、BRTで気仙沼へ向かいます。このBRTは、東日本大震災で被災したJR気仙沼線の代替路線として整備されているもので、柳津~気仙沼間は、おおむね1時間おきに便があります。

しかし、前谷地発着は1日5便だけで、一行は始発便である9時26分発に乗車。昼過ぎに気仙沼に到着しました。

ここで一行は、大きな選択を迫られました。一ノ関行きバスに乗り内陸を目指すか、引き続き海岸沿いに進むかです。

一ノ関行きバスは13時。田中と羽田は乗ろうしますが、秋本が躊躇し、ぐずぐずしているうちに、乗り逃してしまいました。もし、このバスに乗って一ノ関を目指していたらどうなっていたでしょうか。

一ノ関に向かっていたら

結論を先に書くと、一ノ関へ至っても、釜石方面へのバスはありません。そのため、一ノ関からJR東北線沿いに北上して、北上や花巻あたりから釜石へのルートを探ることになります。しかし、実際のところ、釜石方面へ向かうのは困難です。

もし、一ノ関を経て北上していたら、釜石へのルートを見つけられず、盛岡に至る羽目になっていた可能性もあります。たとえば、以下のようになります。

▽2日目
気仙沼駅前13:00→14:15一ノ関駅前14:25→15:06イオン前沢15:20→15:51水沢駅前16:27→16:47金ヶ崎高校前17:30→17:52北上駅前18:10→18:54花巻駅前

▽3日目
花巻駅前07:22→07:51石鳥谷駅口08:46→09:12大迫バスターミナル09:24→10:20盛岡駅前10:40→12:55宮古駅前13:05→14:12道の駅やまだ15:43→16:31釜石駅前

3日目の夕方に、ようやく2カ所目のチェックポイント・釜石に着くわけで、かなり絶望的な展開です。

一ノ関まで行った後、釜石へのルートが難しいと判断して引き返すこともあり得ます。その場合、以下のようになります。

▽2日目
気仙沼駅前13:00→14:15一ノ関駅前15:35→16:50気仙沼駅前17:59→19:16盛

▽3日目
盛駅07:22→07:48越喜来浦浜→徒歩14.5km→唐丹駅前12:47→13:15釜石駅前14:26→15:14道の駅やまだ15:38→16:49宮古駅前17:05→19:20盛岡駅前(東口)

▽4日目
盛岡駅前(東口)06:10→09:12久慈駅前13:00→13:50陸中大野/大野14:30→15:31八戸中心街ターミナル(三日町)/ 同(六日町)15:35→15:59八戸駅前16:20→17:23十和田市中央18:44→19:48野辺地駅前

このように、野辺地で行き詰まることになります。

他にも検討してみましたが、気仙沼13時発の一ノ関行きバスに乗り、最終ゴールできるルートは見つかりませんでした。つまり、このバスに乗った瞬間にゲームオーバーだったわけです。

番組では、秋本は一ノ関行きのバスを乗り逃したことに責任を感じて動揺していた様子でした。しかし、実は超ファインプレーだったわけです。

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14.5kmの徒歩は減らせないか

実際ルートに戻りましょう。気仙沼14時09分のバスに乗った一行は、大船渡で案内所に寄るなどして、慎重にルートを探ります。その結果、越喜来浦浜から徒歩で唐丹まで14.5kmのルートに挑むことになりました。

途中、秋本が足をくじいて民宿の送迎を仰ぐものの、翌朝、同地点から再開し、唐丹駅まで歩き通しています。

今回の番組の最大の難関だったと思われるのが、この大船渡~釜石の区間。熊が出るような山道を、2日かけて14.5kmも歩いたわけです。別ルートはないのか、と誰もが思ったことでしょう。

これは結構難題で、遠野を経由するルートも検討してみましたが、一行の旅した時間帯ではうまくつながりません。かろうじて、以下のルートが見つかりました。

▽2日目
気仙沼駅前14:09→15:13商人橋→徒歩0.4km→大船渡駅→徒歩2.2km→大船渡警察署前16:19→19:20盛岡駅前19:45→22:00宮古駅前05:40→06:42道の駅やまだ10:38→11:26釜石駅前06:53→07:41釜石駅前09:31→10:19道の駅やまだ

大船渡から盛岡まで行って、釜石に折り返すというルートです。

大船渡から盛岡経由で釜石に至るというのは、大回り過ぎて現実感のないルートです。大船渡で情報収集する時間はありますので、見つけられないルートとまではいえませんが、実際には選択しえないルートかもしれません。

それでも、もしこのルートを見つけられれば、過酷な越喜来浦浜から唐丹駅への徒歩を免れることができました。

また、一行は越喜来から唐丹駅まで歩きましたが、唐丹の手前の荒川というバス停があり、そこで釜石行きバスを掴まえることも可能です。その場合、1.4kmくらいは徒歩距離が短くなったでしょう。

気仙沼でBRTに乗っていたら

少しさかのぼりますが、気仙沼では、一ノ関行きのバスだけでなく、盛行きのBRTも見逃してしまいました。このBRTに乗っていたらどうなっていたでしょうか。

▽2日目
気仙沼駅前13:09→14:26盛/盛駅前17:57→18:23越喜来浦浜

盛より先のバスの便数が少ないため、実際ルートに収斂します。

また、大船渡から盛岡へのバスは、盛駅を経由するため、このルートでも盛岡経由が可能です。

▽2日目
気仙沼駅前13:09→14:26盛/盛駅前16:22→19:20盛岡駅前(以下同上)

簡単にいえば、気仙沼でBRTを乗り逃したことで、大きな影響はなかった、ということです。

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陸中大野で泊まれたら

釜石以降の一行は順調で、山田、宮古とバスを乗り継ぎ盛岡へ。そこから久慈行きのバスの情報も聞き出して、18時頃、久慈駅前に到着します。ところが、一行が久慈駅に到着したと同時に、陸中大野行きのバスが発車してしまいます。

幸い、19時40分発の最終バスがあったので、一行はこのバスに乗ろうと考えます。しかし、大野での宿が見つからず断念。3日目は久慈泊まりとなりました。もし、この日に大野まで行って宿泊できた場合、翌日はどうなっていたでしょうか。

▽3日目
久慈駅19:40→20:20陸中大野

▽4日目
大野06:55→07:56八戸中心街ターミナル(三日町)/ 同(六日町)08:15→08:40八戸駅前09:10→10:23十和田市中央12:17→13:29野辺地駅前14:19→15:48むつバスターミナル16:20→16:30下北駅16:55→17:30恐山

このように、最終日にゴールできました。

番組では「グリーンヒルおおの」が満室でしたが、仮に空室だったら宿泊してゴールできていたでしょう。

陸中大野近辺に他に宿はありませんが、送迎を使って遠くの宿に泊まる方法もありますので、少しもったいなかったです。

十和田市へのバスが遅れなかったら

実際ルートに戻りましょう。

最終日、久慈から大野、八戸と順調に乗り継いだ一行ですが、十和田市で思わぬ障害に出遭います。八戸からのバスが、途中の渋滞で遅延し、十和田市中央で野辺地行きのバスをタッチの差で乗り逃すのです。

この乗り継ぎは、時刻表上では可能でした。以下の通りです。

▽4日目
八戸駅前11:00→12:13十和田市中央12:17→13:29野辺地駅前14:19→15:48むつバスターミナル16:20→16:30下北駅16:55→17:30恐山

八戸駅前のバスが定時運行だったら、十和田市中央で4分の接続で野辺地方面行きバスに乗り継ぐことができ、ゴール可能だったのです。

十和田~野辺地のバスは、十和田市中央を出た後、中央病院というバス停に立ち寄り、元町東を経て野辺地に向かいます。一方、八戸発のバスは、十和田市中央を出た後、中央病院を経由せずに元町東に至ります。元町東が路線の終点です。

そのため、十和田市中央~元町東間は、八戸系統のほうが早く走ります。定刻では以下のようになっています。

八戸駅前11:00→12:13十和田市中央→12:17元町東
十和田市中央12:17→12:28元町東12:31→13:29野辺地駅

つまり、元町東で乗り換えれば乗り継ぎに14分の余裕があり、八戸発のバスが多少遅れていても、追いつけた可能性があります。

オンエアによると、十和田市中央に12時25分には着いていたので、遅延は12分。元町東まで乗っていれば、ギリギリ乗り継げたかも知れません。

ただ、十和田市中央には、停留所の目の前にバス会社の案内所がありますが、元町東にはありません。十和田市中央はこのエリアの拠点停留所になっているようで、バスの運転手が乗り換え地点として案内すること自体は、妥当だったでしょう。

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不運な一行

今回の一行は、不運でした。

八戸~十和田のバスが遅延しなければ、ゴールできていたでしょうし、少しさかのぼれば、陸中大野に宿があれば、やっぱりゴールできていたわけです。

振り返って見れば、今回のロケで、一行のルート取りに大きなロスやミスはありませんでした。ですので、結果が失敗に終わったのは、たんに運が悪かっただけです。

陸中大野に宿があれば。十和田市行きのバスが遅れなければ。

2つの不運は、いずれも一行にはどうしようもないことです。今回は「成功に限りなく近い失敗」といえるでしょう。

夜道歩きには価値があった

今回のお題を、定刻の時刻表通りで逆算してみれば、ゴールするには3日目の夜に久慈に到着している必要があります。盛岡~久慈のバスは盛岡発18時が最終なので、3日目の18時に盛岡に着いていればゴール可能でした。

さらに逆算すると、3日目の釜石駅12時26分発のバス(道の駅やまだ行き)に乗ればゴール可能ということになります。そのためには唐丹駅前9時37分のバスに乗らねばなりません。

これに乗るには、2日目に盛に泊まっていては間に合いません。2日目に、なんとか盛から釜石に向けて進み、唐丹が視野に入る位置まで進んでいる必要がありました。

そう考えると、2日目の夕方、大船渡から越喜来方面へ向けバスに乗って、夜道を歩き進んだ一行の勇気には、大きな価値があったといえます。

ほぼ「正解ルート」をたどったのに

全体を見てみると、チェックポイントが3箇所もあったため、ルート選択の余地は小さかったといえます。つまり、平易と言えば平易なお題でした。

そのわりに難しそうに感じられたのは、バスがつながりにくいよう絶妙に配置された、チェックポイントのおかげでしょう。

一行は、現実的に取り得る選択肢の中で、ほぼ「正解ルート」といえるルートを進みました。正解ルートでもゴールできなかったのは、「2つの不運」が重なっただけです。

その意味では、今回は「正解ルートをたどったにもかかわらずゴールできなかった希有な回」と表現できそうです。こういうこともありますよね。(鎌倉淳)

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