高速バス新路線「柏の葉・流山~東京駅線」に乗ってみた。ローカル線並みの乗車率

初速は厳しそう

柏の葉キャンパス・流山おおたかの森~東京駅間に新たな高速バスが10月1日に運行を開始しました。東京近郊では珍しい、鉄道路線に並行した近距離の高速バス新線です。さっそく乗ってみました。

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3社共同運行

2021年10月1日に運行を開始したのは、「柏の葉キャンパス・流山おおたかの森~東京駅線」(以下、柏の葉・流山~東京線)。JRバス関東、東武バスセントラル、京成バスの3社協同運行です。

この路線は、流山おおたかの森駅、柏の葉キャンパス駅周辺と東京駅を常磐道経由で結びます。柏の葉キャンパス地区にある「国立がん研究センター」にも全便が停車するなど、駅から少し離れた施設と東京駅を直結する役割も担います。

とはいえ、つくばエクスプレス(TX)と並行する区間であり、鉄道からどの程度の利用者を奪えるのか、疑問もあります。ということで、10月上旬の平日、柏の葉キャンパス発の午後便に乗車してみました。

柏の葉キャンパス・流山おおたかの森~東京駅線

平日午後便

筆者が乗車したのは、10月上旬の平日の、柏の葉キャンパス駅西口15時30分発の便です。税関研究所、国立がん研究センターを経て、東京駅日本橋口へ直行します。この便は、流山おおたかの森には寄りません。

TX柏の葉キャンパス駅前のバスターミナルで待っていると、定時3分前にバスが入線。東武バスのいすゞガーラです。

柏の葉キャンパス・流山おおたかの森~東京駅線

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「予約席」を用意

柏の葉・流山~東京線は、「Sokko-bus」という座席予約システムをはじめて導入しました。スマートフォンとメールアドレスがあれば簡単に予約でき、アプリのダウンロードも不要、予約時の決済も不要というお手軽な仕組みで、使いやすいです。

乗車時には、スマホの予約画面を運転手に提示。スマホ画面の「乗車する」というボタンを自分で押すと、乗車が確認されます。予定停留所で「乗車する」を押さないと、予約が取り消されます。

運転手から、「予約席」と掲示された2列目に座るように案内されました。座席指定はないものの、予約者の座席はきちんと確保しているようです。ちなみに、「予約席」は2列目の4席のみ。実際に予約していたのは私一人でしたが、とりあえずこの4席を「予約席扱い」にしているようです。

最前列は新型コロナ感染予防のため使われておらず、座席数は40席です。始発の柏の葉キャンパス駅西口バス停から乗車したのは筆者一人で、39席を空けたまま、バスは出発しました。

柏の葉キャンパス・流山おおたかの森~東京駅線

がん研究センターで

5分ほどで税関研修所に到着。「税関の方々はここで研修するのか~」とベタな感想を抱くものの、乗車はなし。次は国立がん研究センターで、敷地内にバス乗り場があり、ざっとみたところ20人くらいが乗車待ちをしています。

そうか、がん研究センターだから全国各地から医師や患者が来ているはず。だから、新幹線に接続する東京駅直結バスが好まれるのか、と合点しました。

……が、誰も乗ってきません。どうやら、他のバスを待っているようでした。我らが東京直行便は、ドアを開け、むなしく閉めて、出発します。

柏の葉キャンパス・流山おおたかの森~東京駅線

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客は一人

がん研究センターの次のバス停は、終点東京駅日本橋口です。かくして、筆者1名の乗客だけを乗せて、バスは常磐道へ入っていきました。

バスは快適で、なにしろ一人しかいませんので、リクライニングを思い切り倒せますし、Wi-Fiもさくさく動きます。トイレだって行き放題です。地方のローカルバスならいざ知らず、東京発着の高速バスで一人きりというのは、なかなか味わえるものではありません。

柏の葉キャンパス・流山おおたかの森~東京駅線

道路状況はよく、常磐道は快調に進みました。ただ、都心環状線に入る部分で渋滞に引っかかります。

やや遅れ気味で宝町出口を出て、八丁堀まで回り込んで東京駅日本橋口に至ります。いまさらの話ですが、呉服橋出口があった頃は、首都高速を降りたらすぐに東京駅だったのに、ずいぶんと大回りをすることになってしまいました。5分くらいは余計にかかったでしょうか。長距離路線なら誤差の範囲ですが、近距離路線で「5分」は意外と大きいものです。

結局、東京駅日本橋口到着は16時40分頃。定刻より10分ほどの遅延です。高速バスの遅延としては問題にならない程度ですが、TXならとっくに着いていただろうな、という気もします。

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想定の範囲だが

平日午後の東京方面行きの高速バスの乗車率が悪いことは、想定の範囲内といえます。新設路線は知名度が低いので、路線の存在を知らない人も多いでしょうから、今後伸びる余地はあります。だとしても、東京駅発着の路線が「乗客1人」というのには、驚かされました。

筆者が気まぐれで乗らなければ、このバスは乗客ゼロで走っていたことになります。

「Sokko-bus」では、出発直後のバスの空席状況もみられますので、気になって、その後の利用状況をチェックするようになりましたが、上り便(東京駅行き)はだいたい似たようなもので、乗客は数えるほどの様子。

下り便は表示対象外なのでわかりませんが、上り便を見る限り、これだけガラガラで大丈夫? というのが、利用後の偽らざる感想です。

柏の葉キャンパス・流山おおたかの森~東京駅線

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生き残れるのか

高速バス「柏の葉・流山~東京線」の開設目的は、つくばエクスプレス(TX)の混雑を回避して移動したい、という需要に対応するためだそうです。最近のTXはラッシュ時の混雑が激しいので、それを避けてゆったり移動したい、という人のための高速バスということです。

所要時間は便によりますが、おおむね1時間あまり。運賃は1,000円です。TXなら柏の葉キャンパス~東京駅が秋葉原乗り換えで約45分、830円ですので、所要時間も価格もTXに軍配が上がります。がん研究センター~東京駅といった、TXの駅から離れた区間の移動でようやく互角という状況でしょうか。

運行本数や定時性でもTXが上回りますし、高速バスの強みは着席保証だけの気がします。ラッシュ時に座って移動できるなら越したことはありませんが、首都高や常磐道はよく渋滞しますので、朝の通勤に上り便は使いづらいでしょう。利用価値が高いのは、下りの夕方・夜便くらいです。

ローカル線並みの乗車率が続けば、いずれ厳しい状況に陥るでしょう。新路線は生き残ることができるのか、目が離せません。(鎌倉淳)

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