JR東日本「2020年度輸送密度」を分析する。公表区間を細分化した意味は?

新型コロナで深刻に

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地方路線は落ち込み小さく

地方路線に目を転じてみると、首都圏に比べれば輸送密度の落ち込みは小さく、対前年度比70%~80%程度に踏みとどまっている路線が多くなっています。新型コロナウイルスの感染者数が、地方で少ないことや、もともと通勤客が少ないため、在宅勤務の影響を受けにくかったことなどが理由として挙げられそうです。

地方路線は高校生をはじめとする通学客の占める割合が高いですが、高校の休校は在宅勤務に比べれば短期間で終わった、という背景もありそうです。

ほぼ観光輸送のみの上越線「越後湯沢~ガーラ湯沢」間の輸送密度は414にとどまりました。対前年度比で67%とみれば、レジャー需要が全般に落ち込んだシーズンにしては健闘したといえるかもしれません。ただ、同区間の輸送密度は2014年度の1,091をピークに近年は減少傾向で、ガーラ湯沢スキー場の人気が落ちているのでは、と心配になります。

輸送密度200以下の路線

ローカル線では、輸送密度が絶対的に低い路線も数多くあります。以下では、輸送密度200以下の路線を、低い順に並べてみました。

JR東日本で輸送密度が低い路線2020年度版(人/日)
路線名 区間 輸送密度
只見線 会津川口~只見 15
陸羽東線 鳴子温泉~最上 41
花輪線 荒屋新町~鹿角花輪 60
久留里線 久留里~上総亀山 62
磐越西線 野沢~津川 69
北上線 ほっとゆだ~横手 72
飯山線 戸狩野沢温泉~津南 77
山田線 上米内~宮古 80
只見線 只見~小出 82
津軽線 中小国~三厩 107
水郡線 常陸大子~磐城塙 109
米坂線 小国~坂町 121
大糸線 白馬~南小谷 126
只見線 会津坂下~会津川口 141
陸羽西線 新庄~余目 163
五能線 能代~深浦 177
気仙沼線 前谷地~柳津 189
磐越東線 いわき~小野新町 196

東北地方の県境区間で低く

最も輸送密度が低かったのは只見線の会津川口~只見間の15ですが、同区間は長期不通で、バス代行輸送を行っています。そのため、この数字は参考記録と表現した方がよさそうです。

それを除くと、最も輸送密度が低かったのが陸羽東線の鳴子温泉~最上間の41。そのほか、花輪線、磐越西線、北上線といった東北地方の肋骨線の県境区間で、輸送密度がきわめて低くなっています。

輸送密度が200以下の路線は、16路線18線区にも及びました。新型コロナの影響が大きいとはいえ、それを勘案しても、これだけの不採算路線を維持していくのは大変だろうと心配になります。

こうした路線は、これまで首都圏の高収益により支えられてきましたが、首都圏でもかつてのような採算を見込めなくなった今、先行きが心配です。

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