岐阜県が、岐阜市を中心とした新たな交通システムの中間報告を公表しました。4つの幹線軸候補を示し、LRTやBRTなどを導入する構想を示しています。ただ、事業費や採算性は今後の検討事項で、とくにLRTについては、委員からは導入に慎重な意見も出ています。
中間報告を公表
岐阜県は2026年8月24日、「次の世代につなげる県都岐阜市を中心とした交通システムの在り方検討会」の中間報告を公表しました。検討会は2026年3月に発足し、6月までに4回開催しています。
中間報告では、岐阜圏域の基幹交通となる「幹線軸」の候補として、岐阜駅~長良地域、岐阜駅~岐阜大学周辺、岐阜駅~岐阜羽島駅、長良地域~則武地域の4区間を示しました。
検討会では、LRT、BRT、AGT、中・大型バスなどについて、定時性や輸送力、沿線への影響などを比較しています。

2025年に浮上
岐阜県のLRT構想が表面化したのは2025年夏です。江崎禎英知事が、岐阜羽島駅から岐阜市中心部を経て、岐阜IC方面までを結ぶ新たな交通システムを提案しました。
同年9月には、羽島~岐阜駅、岐阜駅周辺、岐阜駅~岐阜ICの3路線をベースに、開業まで10年を目標とする考えを示しています。
一方、岐阜市の柴橋正直市長は、課題として、事業費、自動車車線の減少による渋滞、既存の鉄道・バスへの影響、停留所や乗り継ぎ拠点、車両基地の整備、既存インフラへの影響などを課題として挙げました。市として新交通システムへの投資は財政的に厳しいとの認識も示しています。
江崎知事も2025年8月には「LRTと決まったわけではない」と説明し、輸送量やコストなどを踏まえて交通システムを検討する考えを示しました。
こうした経緯を踏まえて検討会が設置され、今回の中間報告に至りました。
人口減少、運転手不足を見据える
検討の背景には、人口減少や高齢化に加え、公共交通の担い手不足があります。
県は20~30年先を見据え、需要の多い区間を「基幹交通」、そこから枝分かれする路線を「支線交通」、地域内の移動を「生活交通」とする、階層性のある交通網を検討しています。
需要の大きい幹線に輸送を集約し、限られた車両や運転手を効率的に配置する考え方です。
そのうえで、中間報告では、人流データや鉄道・バスの利用状況、将来人口、沿線の開発計画などを分析し、上記の4つの幹線軸候補を抽出しました。
長良、岐阜大学方面は利用多く
4候補のうち、現在の需要が大きいのが、岐阜駅から長良、岐阜大学へ向かう2方向です。
長良方面では、路線バスの利用者数が、岐阜公園・岐阜城~長良橋南・川原町で朝7時台に2,305人と推計されています。

岐阜大学方面でも、西野町~忠節橋を通過する路線バスの利用者数は朝7時台に2,366人です。いずれも特定の1路線ではなく、その区間を通過する路線バスを合計した推計値です。

それぞれの沿線には、岐阜市役所、岐阜公園、高校、岐阜大学、大学病院などがあり、通勤・通学、通院、観光など多様な需要があります。
中間報告では、この2軸について、BRTやLRTなどを候補に、定時性や輸送力を確保できる交通システムの検討が必要としました。路線バスの拡充も含め、さらに詳しい利用実態や需要予測を調べます。
岐阜羽島方面は「需要限定的」
2025年の構想で主要な軸として示された岐阜駅~岐阜羽島駅について、中間報告は、現状の公共交通の移動ニーズを「限定的」としました。
ただ、柳津地域では産業拠点の整備が進められており、将来的には新たな移動需要が生まれる可能性があります。そのため、中間報告では、開発に伴う需要拡大や既存交通への影響を分析したうえで、最適な交通システム導入の必要性を検討を求めました。
長良地域~則武地域についても現状の公共交通需要は限定的ですが、沿線には医療・福祉施設、高校、岐阜メモリアルセンターなどがあります。
そのため、中間報告では、長良方面と岐阜大学方面の2軸を東西に結ぶことで、環状機能を持たせる効果が期待できるとし、最適な交通システム導入の必要性の検討を求めました。
既存バスの拡充も選択肢
検討会では、LRTなどの新たな交通システムについて、必要性を慎重に検証すべきとの意見も出ています。
委員からは、現状でも路線バスが輸送を担っていることから、現在の課題を整理したうえで、既存バスの拡充も含めて議論すべきとの指摘がありました。
岐阜駅~岐阜羽島駅については、岐阜市が位置づける既存の幹線軸と重なる区間があります。また、岐阜羽島駅には隣接する新羽島駅を介して名鉄羽島線が接続しているため、既存公共交通の輸送力増強も検討すべきとの意見が出ています。
交通システムの比較にあたっては、事業費や採算性、交通渋滞、既存公共交通への影響などについて、客観的なデータに基づいて検証する必要があるとの意見も示されました。
事業費、採算性はこれから
今回の中間報告では、交通システムごとの具体的な事業費や採算性は示されていません。
今後設置する作業部会で、既存公共交通の分析や将来需要に加え、事業費、事業スキーム、採算性、自動車交通や鉄道・バスへの影響、既存インフラへの影響、交通結節点機能などを調べます。
今回示した4つの幹線軸についても、検討の結果、幹線軸としての妥当性が確認できなければ、必要に応じて候補を再設定するとしています。

LRT実現へのハードルは高く
知事が打ち上げた「LRT構想」という視点でみてみると、需要の大きい長良、岐阜大学方面では、LRTは具体的な選択肢となっています。ただし、事業費や採算性、道路交通や既存公共交通への影響など、判断に必要な検証はこれからです。
一方、岐阜羽島方面などでは将来需要の見極めが必要という指摘があり、幹線軸そのものが再設定される可能性もあります。LRTの採否や具体的なルートについては、今後の作業部会での検証を踏まえて絞り込まれることになります。
ただ、検討会ではLRTに対する慎重論が相次いだ様子で、中間報告の文面からもLRT導入に対する熱意が感じられません。つまるところ、岐阜LRT構想の実現へのハードルは高そうです。(鎌倉淳)




















