円安が続いています。新型コロナも明け始めて、海外に行きたくなってきた旅行者のみなさまの参考に、コロナ前に比べてどのくらい円の価値が下がってしまったか、調べてみました。
約24年ぶり水準に
円安は2022年の春先から急激に進展し、最近では1ドル135円付近となっています。約24年ぶりの為替水準だそうです。
では、米ドル以外ではどんな状況なのでしょうか。旅行者に人気のあるエリアの世界17通貨について、新型コロナ前の2019年1月1日のレートと、直近のレートを比較してみました。
通貨 | 2019年1月 | 2022年6月 | 騰落率 |
---|---|---|---|
米ドル | 109.72 | 135.47 | 23% |
カナダドル | 80.44 | 104.62 | 30% |
ユーロ | 125.78 | 139.85 | 11% |
英ポンド | 139.91 | 162.51 | 16% |
スイスフラン | 111.78 | 135.24 | 21% |
豪ドル | 77.39 | 93.01 | 20% |
韓国ウォン | 0.0985 | 0.104 | 6% |
台湾ドル | 3.59 | 4.55 | 27% |
中国元 | 15.95 | 20.09 | 26% |
香港ドル | 14.00 | 17.12 | 22% |
タイバーツ | 3.42 | 3.85 | 13% |
マレーシアリンギット | 26.55 | 30.61 | 15% |
シンガポールドル | 80.48 | 96.32 | 20% |
インドルピー | 1.57 | 1.73 | 10% |
トルコリラ | 20.72 | 7.84 | -62% |
エジプトポンド | 6.12 | 7.18 | 17% |
ブラジルレアル | 28.26 | 26.26 | -7% |
※数字は2019年1月1日と2022年6月14日終値
おおむね20%高
まず、基軸通貨となるドルですが、約23%高くなっています。そのほか、台湾ドル、中国元、香港ドルといった東アジア通貨が、おおむね20%を超える軒並み高。これらの地域に行くと、3年前よりもかなり物価が高くなったと感じられそうです。
ヨーロッパ方面では、ユーロ12%、ポンド17%と、多少マイルドな上がり方ですが、スイスフランは20%を超えています。ヨーロッパはもともと物価が高いので、1~2割も円が弱くなったら、旅行するのには大変です。
もっとも上昇率が高いのは、カナダドルでした。日本経済新聞5月31日付によりますと、「投資家が原油高の恩恵や地政学リスクの少なさを背景にリスク回避で買っているため」、カナダドルは、このところ独歩高になっているとのこと。
アジアでは台湾ドルが高いですが、半導体を中心とする輸出に支えられて経済が好調なためです。いまや、台湾ドルはアジア最強の通貨になりつつあるようで、日本人にとって、台湾旅行は物価の高さがネックとなる時代が来るかも知れません。
トルコとブラジルは通貨安
バックパッカーに人気のタイはバーツが13%高。こちらは比較的マイルドな上がり方にとどまっています。韓国ウォンは6%と上げ幅が相対的に小さく、韓国旅行の人気は持続しそうです。
2年半前より円高になっている国もあります。今回調べたなかでは、トルコとブラジルです。どちらも物価上昇率に金利が追いついていないので、通貨価値が下落しているようです。
1990年代の水準だが
バックパッカーの全盛期ともいえる1990年代は、1ドル140円~150円くらいが相場でした。この数字だけみれば、最近のレートは「昔に戻っただけ」ともいえます。しかし、海外はこの20数年でインフレが格段に進んだので、昔の感覚で旅行できるかといえば、そんなわけはありません。とくに、アジアの物価は1990年代と今とでは比較になりません。
最近は世界的にインフレが進んでおり、円安とのダブルパンチで、海外の旅先で物価の高さに音を上げるかもしれません。さらには、原油高や戦争による航空運賃の高騰もあり、海外旅行そのものが高嶺の花になりそうです。
とはいえ、高い物価に苦しみながら、海外で節約旅行をするのもまた楽しいもの。「円が弱いから」というだけで、旅を諦めるのはもったいない気もします。
そして何よりも、これからもっと円が弱くなる可能性も十分にあるのです。ならば、行けるなら行けるうちに、旅をしておきたいところです。(鎌倉淳)