JAL、ANAの燃油サーチャージがさらなる高値圏に。往復13万円も視野

もはや手が届かない

航空会社の燃油特別付加運賃(燃油サーチャージ)が、さらなる高値圏に突入しています。JAL、ANAとも2022年8月発券分から大幅に引き上げ、欧米往復は10万円近くになります。

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基準価格が1.7倍に

JALは国際線旅客が航空券購入時に支払う燃油特別付加運賃(燃油サーチャージ)について、2022年8-9月発券分で大幅に引き上げることを発表しました。すでにANAも同程度の引き上げを発表しており、航空大手2社の燃油サーチャージは、これまでにない高値圏に突入します。

燃油サーチャージは、燃油市況価格の直近2か月間の平均に基づき算定されます。

JALによりますと、8-9月発券分では、基準となるシンガポールケロシンの直近2ヶ月の市況価格が138.52米ドルで、同期間の為替平均が127.38円。これを乗じた1バレルあたりの金額は17,644円となりました。

前回(6-7月発券分)では、シンガポールケロシンが122.40米ドルで、為替平均が117.02円、1バレルあたり14,323円でしたので、2ヶ月の間に、燃油が13%高、為替が9%高となり、あわせて基準価格が23%高となりました。

その前(4-6月発券分)の基準金額は10,253円でしたので、4ヶ月で1.7倍に急騰したことになります。

JALとANA

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JALの新サーチャージ金額

これにより、JALでは8月1日発券分から燃油サーチャージの価格を引き上げます。ひとり1区間片道あたりの燃油サーチャージは、日本から北米・欧州・オセアニアなどが47,000円に、ハワイ・インドなどが30,500円に、タイ・シンガポールなどが24,700円になります。

これは片道の金額なので、往復で北米・欧州・オセアニアなどが94,000円に、インド・ハワイなどが61,000円に、タイ・シンガポールなどが49,400円となります。アメリカやヨーロッパには、サーチャージだけで往復10万円近くかかることになります。

4ヶ月前からの燃油サーチャージの変化は下表の通りです。前々回(4ヶ月前)に比べると、欧米が約2.4倍、東南アジアが約2.5倍、韓国が約3.3倍などとなっています。

JALの燃油サーチャージ(円)
路線 4-5月 6-7月 8-9月
北米・欧州・中東・オセアニア 20,200 36,800 47,000
ハワイ・インドネシア・インド・スリランカ 12,700 23,600 30,500
タイ・マレーシア・シンガポール・ブルネイ 9,800 19,600 24,700
グアム・パラオ・フィリピン・ベトナム・モンゴル 5,800 12,700 17,800
東アジア(韓国、モンゴルを除く) 5,200 9,900 11,400
韓国 1,800 4,100 5,900

※片道あたり、発券日基準

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ANAの新サーチャージ金額

ANAも同様で、8月1日発券分から燃油サーチャージを引き上げます。

日本から北米・欧州・オセアニアなどが49,000円に、ハワイ・インドなどが31,100円に、タイ・シンガポールなどが25,800円となります。

前々回と比べると、欧米が約2.5倍、東南アジア方面が約2.7倍、韓国は約3.1倍になっています。

ANAの燃油サーチャージ(円)
路線 4-5月 6-7月 8-9月
北米・欧州・中東・オセアニア 19,900 37,400 49,000
ハワイ・インド・インドネシア 12,500 23,800 31,100
タイ・シンガポール・マレーシア・ミャンマー・カンボジア 9,700 20,400 25,800
ベトナム・グアム・フィリピン 5,700 12,500 16,000
東アジア(韓国を除く) 5,200 11,400 15,100
韓国 1,800 4,100 5,600

※片道あたり、発券日基準

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ロンドン往復の最安値は?

いうまでもありませんが、運賃本体は別途です。試みに、JALの東京~ロンドン線を検索してみると、8月頃の運賃の最低価格は片道120,000円。日によっては片道225,000円という金額も見受けられます。

サーチャージを含めると、最安値で往復34万円程度、日によっては往復65万円以上となります。

しかも、最低価格で購入できるのは、たいていフィンエアーとの共同運航便で、ヘルシンキを経由するため片道19時間程度かかります。かつては、ヘルシンキ経由は所要時間が短かったのですが、ロシアとウクライナの戦争で、状況は変わっています。

ロンドンへ行くのに、往復40万円程度のチケットを購入し、乗り継いで片道20時間くらいかけなければならないわけです。もはや、夏休みのヨーロッパ旅行など、気軽にできる時代ではなくなりました。

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新たな適用条件表

燃油サーチャージの金額は、1バレル当たりの基準金額に基づいて、あらかじめ適用条件表が公開されています。JAL、ANAとも、これまで公開されていた上限は、基準金額14,000円~15,000円まででした。

今回の17,000円台は、この上限を超えたため、JALは新たに「20,000円~21,000円」までのゾーンを新設し、適用条件表を公開しました。北米・欧州方面への適用条件表を以下に示しますが、基準価格が20,000円台に達した場合、サーチャージは片道57,200円となっています。

JALの北米・欧州向け適用条件表
ゾーン
基準価格
サーチャージ額
ゾーン A
6,000円~7,000円
4,500円
ゾーン B
7,000円~8,000円
8,900円
ゾーン C
8,000円~9,000円
13,400円
ゾーン D
9,000円~10,000円
17,800円
ゾーン E
10,000円~11,000円
20,200円
ゾーン F
11,000円~12,000円
24,200円
ゾーン G
12,000円~13,000円
28,800円
ゾーン H
13,000円~14,000円
33,400円
ゾーン I
14,000円~15,000円
36,800円
ゾーン J
15,000円~16,000円
40,200円
ゾーン K
16,000円~17,000円
43,600円
ゾーン L
17,000円~18,000円
47,000円
ゾーン M
18,000円~19,000円
50,400円
ゾーン N
19,000円~20,000円
53,800円
ゾーン O
20,000円~21,000円
57,200円

新たな上限をすでに突破

ただ、直近のシンガポールケロシンの価格は1バレルあたり177ドル。最近の為替は1ドル135円台で推移しています。乗じると基準価格は23,895円となり、JALが用意した新たな適用条件表の上限(21,000円)をすでに突破しています。

目下の原油・為替水準が続くと、基準価格は「ゾーンO」の3段階上の「ゾーンR」となり、北米・欧州方面のサーチャージ金額はおおむね6万円台後半になりそうです。つまり、10-11月発券の北米・欧州への航空券は、燃油サーチャージだけで往復13万円程度になる可能性があります。

外国系では、燃油サーチャージの安い航空会社もあります。とはいえ、かかる燃料代は国際価格なので、航空券の総額に影響することに変わりありません。こうなると、アメリカやヨーロッパへの旅行は、もはや庶民の手の届く水準ではなくなってきそうです。(鎌倉淳)

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