JR旅客各社の2026年3月期決算が出そろい、インバウンド(訪日客)需要の取り込み状況にも明らかになりました。鉄道運輸収入に占めるインバウンド収入の割合を比較すると、JR東日本は2.6%にとどまり、JR上場4社でもっとも低い水準となりました。目標としていた金額にも届かず、苦戦しています。
全体の2.6%
2026年3月期決算で、JR上場4社は鉄道運輸収入と、運輸事業におけるインバウンド収入を公表しました。以下のようになります。
会社名 インバウンド収入(鉄道運輸収入)割合
・JR東日本 475億円(1兆8,485億円) 2.6%
・JR東海 1,560億円(1兆5,853億円) 9.8%
・JR西日本 494億円(9,479億円) 5.2%
・JR九州 78億円(1,726億円) 4.5%
インバウンド収入額がもっとも多いのはJR東海で、1,560億円となりました。鉄道運輸収入の1割近くをインバウンドが占めています。
一方、最大手のJR東日本は475億円にとどまりました。割合としては2.6%で、JR上場4社で最低です。

計画に届かず
JR東日本のインバウンド収入額は対前年比11%増で、訪日外国人数の伸び率の10%増に沿っています。したがって、訪日客の増加に比例した伸び率は確保しています。
ただ、同社は、インバウンド収入の当初計画を520億円としており、その金額に届きませんでした。
計画に届かなかった理由として、同社は、「消費単価の高い欧米豪市場の取り込み不足」や、「河口湖・軽井沢などインバウンド需要の高かった地域への利用動向の変化」を挙げ、対応が遅れたことが一因としています。
欧米豪の観光客には京都や広島、北海道が人気で、JR東日本エリアへ取り込むのが難しいことと、河口湖、軽井沢方面に対して十分な座席供給ができなかった、ということのようです。
JR東海は一人勝ち
いっぽう、JR東海のインバウンドは、前年度の1,170億円から1,560億円となり、33%の大幅増を記録しました。
同社が運営する東海道新幹線は、東京~京都~大阪をつなぐ日本観光の「ゴールデンルート」の一部となっていて、訪日客の多くが利用します。
それを考慮しても33%増というのは驚異的で、訪日客増以上の割合で東海道新幹線のインバウンド利用が増加していることを示しています。昨年は大阪・関西万博開催の恩恵があったとはいえ、それを踏まえても大幅な増加です。
インバウンドの鉄道運輸収入に占める割合も9.8%となり、10%の大台に近づきました。そのほとんどは東海道新幹線利用と思われますので、東海道新幹線の旅客の10人に1人が訪日観光客になっているようです。
JR西日本も堅調
JR西日本のインバウンド収入額は494億円で、対前年度比21%増。こちらも堅調で、割合が5%を超えました。
大阪・関西万博の影響もあり、関西空港から京都・大阪方面への訪日需要が手堅く、広島観光も欧米人を中心に人気です。そのため、関空特急「はるか」や山陽新幹線などが堅調でした。
JR九州は78億円と、金額は他社に比べて小さいですが、割合は4.5%に達しています。距離的にアジアに近く、訪日客が多いことに加え、観光列車などによる需要取り込みが実を結んでいるようです。
収入に結びつかず
JR東日本は、営業エリアに首都・東京や、日本の玄関口である成田空港を擁し、訪日客との接点は非常に多い会社です。ただ、鉄道収入への寄与という面では、他社に比べて小さく、インバウンドの恩恵を受けにくくなっています。
東京を訪れる外国人は多いですが、そこから西へ向かってしまうので、同社の営業エリアである東北・上越方面にはなかなか足が向かないのでしょう。
もっとも、JR東日本は鉄道運輸収入が1兆8000億円超と大きく、通勤輸送の比重が高い会社です。そのため、インバウンド比率が相対的に低く出やすい事情もあります。
今後の伸びしろも
見方を変えれば、JR東日本には伸びしろがあるともいえます。
上信越のスノーリゾートや、東北の温泉、日光や軽井沢方面など、訪日客に人気の高い観光地は、JR東日本エリアに数多くあります。もちろん同社も、外国人旅行者に対し、東北方面のPRに力を入れています。
さらに、日本政府も「ゴールデンルート」以外の地方への外国人誘客に力を入れはじめました。そのため、今後もインバウンドが増えるなら、東日本エリアへの流動も拡大するでしょう。
いっぽう、さすがに京都はオーバーツーリズムで、今後の伸びしろという点でみれば、厳しくなるかもしれません。そのため、現在の絶好調のJR東海のインバウンドは、他社より早く、頭打ちになる可能性もありそうです。(鎌倉淳)























