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福島臨海鉄道旅客化、採算面のハードル高く。JR常磐線直通も困難で

事業性の検討結果公表

福島臨海鉄道の旅客化について、採算面のハードルが高いことがわかりました。収支を均衡させるには1日5,000人程度の輸送人員が必要ですが、それだけの利用者を見込めないためです。また、JR常磐線への直通も困難とされました。

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スタジアム観客輸送を検討

福島臨海鉄道は、福島県いわき市の常磐線泉駅と小名浜駅とを結ぶ貨物鉄道です。1907年に小名浜馬車軌道として開業し、1941年に常磐線と直通できる1067ミリ軌間の路線となりました。1972年に旅客輸送を廃止し、貨物専業となっています。

福島臨海鉄道の終点付近の小名浜港では、近年、再開発が進められていて、サッカーチームいわきFCの新スタジアムの整備も予定されています。その観客輸送などで、いわき市では、福島臨海鉄道の旅客化を検討しています。

旅客化を検討しているのは、泉駅~小名浜駅の4.8kmです。所要時間は片道12分、毎時最大2往復の運行が可能で、2両編成の場合、毎時660人を輸送できます。

福島臨海鉄道旅客化
画像:いわき市資料

 
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事業性の概略を検討

2026年3月23日に開催された、小名浜港周辺エリアにおける防災・交通対策協議会の第4回会合では、福島臨海鉄道の旅客化について、事業性の概略の検討結果が明らかにされました。

それによりますと、収支を均衡させるために必要な旅客輸送人員は、毎日運転の定期路線とする場合、1日あたり5,000~6,000人と見積もられました。

ちなみに、発着地となるJR泉駅の乗降人員は1日4,454人。いわき駅は10,234人です。定期運行で採算を取るなら、小名浜駅で泉駅以上の乗降客が必要になる、ということです。

事前のアンケートによりますと、 1試合ごとに利用する想定旅客は600人程度です。この数字からみても、採算ラインの1日5,000人を定期運行で達成するのは難しそうです。

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観客輸送で採算はとれない

いっぽう、試合日のみ運行する臨時運行の形を取ると、年20日の営業として、1日3万人の利用がなければ、採算点に達しません。現実的な数字ではないので、イベント実施主体が費用を負担する必要が生じます。

検討結果では、「コストを賄うためには相応の輸送需要や運賃以外の収益確保、支援が求められる」としたうえで、「行政はもとより、住民や立地企業等の積極的な関与が必要」と指摘しました。

スタジアムの観客輸送だけでは到底採算がとれないので、行政が支援したうえで、通勤・通学輸送なども取り込む必要がある、ということでしょう。

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常磐線直通は困難

利用者増加策として考えられるのが、JR常磐線への直通です。いわき駅まで直通運転できれば、利便性が向上し、観客輸送でも通勤・通学輸送でも利用者増が期待できます。

ただ、実現するには、泉駅を大規模改修した上で、鉄道事業者間で運用やダイヤなど複雑な調整も必要になるとし、「技術的にも運行上も課題多い」という結果になりました。

そのため、今後の検討では、JR直通は想定から外し、まずは福島臨海線内で完結する形での運行を模索することになりました。

福島臨海鉄道旅客化事業
画像:いわき市資料

 
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ハードルは高く

ここまでの検討概要を見る限り、福島臨海鉄道の旅客化は簡単ではなく、採算を取るためのハードルは高いといえます。

月数日の試合の観客輸送にとどまるなら、実現は難しいでしょう。そもそも、1試合あたりで600人程度の利用者しか想定していないなら、バスで事足ります。

実現させるのであれば、鉄道をスタジアム施設の一部として捉え、独立採算をあきらめ運行費用を行政や実施主体が負担する必要があるでしょう。そのうえで、通勤・通学など、住民の日常利用をどれだけ取り込めるかが課題になりそうです。(鎌倉淳)

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