東京から子連れで二度目の大阪・関西万博に行ってきました。この日は月曜日でしたが、やっぱり会場は混雑。パビリオンが不足しているように感じられました。計算してみると、一人2館程度しか回れないのが「仕様」になっているようです。
【最初から読む】
関西万博へ東京から子連れで再び行ってみた。日曜日、事前予約ゼロからの挑戦
エキスポライナー
6月9日(月)。前日に続いて、新大阪のホテルから万博会場へ向かいます。2日連続3回目の万博です。
この日はシャトルバスの予約が取れず、JRの「エキスポライナー」を利用しました。
「エキスポライナー」は221系の6両編成で、通路まで満席の混雑です。4月に乗ったときは、それほど混んでおらず、しかも半分くらいがユニバーサルシティ駅で降りてしまったのですが、今回は、8割方がJR桜島駅まで乗りました。
桜島駅からはタクシーを利用。万博の臨時改札口ではなく、橋上改札口を出て階段を降りたところに何台か停車しています。会場まで15分ほどで、料金は3,000円。
桜島駅からのシャトルバスより高いですが、乗車までの行列時間と混雑を考えれば、タクシーでもリーズナブルです。万博において、朝の時間は超貴重ですし、シャトルバスの行列で、限られた体力を削られないのもメリットです。
インド館とインドネシア館
前日と同じ9時すぎに西口ゲートに並び、9時半頃には入場。この日は、3日前予約でイタリア館が10時半ごろに取れていたので、それまでの時間に、ゲートに近いインド館とインドネシア館を訪問しました。
「自国を紹介する」という点でバランスが取れていたのがインド館です。悠久の歴史を展示しつつ、ITや宇宙開発にも触れていて、現代のインドの姿を感じられます。
いっぽう、インドネシア館は、熱帯雨林あり、シアターあり、ジオラマあり、実物展示ありで、力の込もった展示でした。
印象論ですが、新興国のパビリオンのほうが、先進国より面白いです。国に勢いがあり、目指すところがはっきりしているので、伝わりやすいのかもしれません。
イタリア館へ
そんな感想をいだきつつ、人気ナンバーワンのイタリア館へ。まだ10時半だというのに、すでに3時間待ちという行列ができています。
イタリア館の予約を確保できたのは、3日前予約のコツを、3回目にしてようやく摑んだからです。
詳細は略しますが、前夜21時から予約開始の0時まで、ひたすらブラウザをリロードするという、根気のいる作業でした。現地で行列しなかったぶん、自宅のパソコンの前で、3時間待ち続けたわけです。
その甲斐あり、行列を横目に、待つこともなく入館します。
イタリア館のテーマは、ルネサンスの理想都市。エントランスでは、市場を歩いているかのようなリアルな体験ができ、その後に映像を楽しみ、最後は価値の高い実物展示を拝めるという構成です。
すでに多くの方がレポートしているとおり、展示物の質が他国パビリオンと段違いで、なるほど、これは人気が出るわけです。
コモンズ
イタリア館を出たら11時すぎ。この時間を過ぎると、急激に混雑してきます。今日は月曜日の平日ですが、混雑具合は日曜日と大差ありません。
共同パビリオン「コモンズ」はまだ余裕があるので、見て回ります。コモンズ館は、限られたスペースで各国が展示を競っているのが興味深く、もっとも「博覧会らしさ」が感じられる場所かもしれません。
各国スペースはだいたい同じですが、展示物の濃淡には差があります。充実している国は非常に充実しているので、見ていて楽しめます。
ウズベキスタン館
この日は14時ごろの新幹線で東京に帰る予定なので、12時すぎには会場を出る予定です。
そう書くともったいないように思えますが、午後の万博は行列だらけで、たいして見学ができないので、粘って滞在する意味はあまりありません。万博は午前中にどれだけ見られるかが勝負です。
最後に1館だけ見て帰ろうということで、近くにあったウズベキスタン館に並びます。1時間ほどで、入場できました。
ウズベキスタン館の目玉は、ヒヴァのジュマ・モスクをイメージした木柱です。現地とはだいぶ雰囲気が違うものの、展示としては立派で、よくできていました。
日本人向けには、「シルクロードの歴史」に振ったほうがウケが良さそうですが、歴史に偏るのではなく、高速鉄道の模型があったりと、現代のウズベキスタンの展示に力を入れている様子でした。
2日で計10館
ということで、日曜日と月曜日の1日半にわたり、大阪・関西万博を訪問しました。見学できたパビリオンは、日曜日6館、月曜日4館の、計10館です(コモンズ除く)。
これを多いとみるか、少ないとみるかは人それぞれでしょう。筆者としては、遠方から足かけ3日もかけてきているのですから、もう少し見てみたかった、というのが正直な感想です。
混雑がひどすぎて
思うようにパビリオンを回れなかった理由は、混雑です。
筆者が訪れた日の入場者数は、6月8日が151,565人(うち関係者19,040人)、9日が137,452人(うち関係者17,886人)でした。
関西万博の有料入場者数の目標は、1日平均で13万人程度だそうです。つまり、筆者が訪れた日の入場者数は、想定された平均的な水準です。
それでも混雑がひどく、午後になると、パビリオン見学は難しい状況になっていました。
パビリオンが少なすぎ
混雑について、もう少し正確に言うと、入場者数に比して、パビリオンの数が少なすぎるといえます。
公式サイトで数えてみると、大阪万博の海外パビリオンは52館で、北欧館を一つと数えると49館です。国内パビリオンが17館(うち民間13)、シグニチャーパビリオンが8館です。そのほかに、共同館として複数のコモンズ館があります。コモンズ館を除くと、実質的に74館しかありません。
公表されている各パビリオンの総枠数(1日に観覧できる人数の総数)をみると、ほとんどのパビリオンが5,000人未満で、1,500人未満も少なくありません。平均すれば、各パビリオンの1日あたりの受け入れ客数は2,000~3,000人程度のようです。
実際に入ってみても、主要パビリオンの多くは10分に50人以下しか捌けないように見えましたので、1日12時間営業なら、3,000人がいいところでしょう。
計算上、2館程度
仮に1館平均1日3,000人を受け入れられるとしても、74館での受け入れ総数は1日222,000人。1日の入場者数が13万人の場合、1人が訪問できるのは、計算上、2館程度です。
つまり、平均的には、一人が見られるパビリオンは2館程度というのが、関西万博の「仕様」と受けとめられます。
もちろん、これは限られた情報を基にした推測にすぎません。また、パビリオン以外にも、見学できる場所はたくさんあります。そして、筆者もそうですが、頑張れば5~6館は回れるでしょう。
しかし、コモンズ館とイベントだけ見ておしまい、というグループも多そうです。
12カ国が撤退
思い返せば、万博では工事の遅れや工費高騰などにより、いくつかのパビリオンが参加を断念しました。
報道を見返してみると、撤退したのは12か国です。独自パビリオン(タイプA)は、当初予定の60か国から、47か国42棟(北欧5カ国、イタリアとバチカンが共同)に縮小されたそうです。しかも、そのうちネパールは、筆者が訪れた時点でオープンしていません。
いまさらですが、工事が順調にすすみ、もう少し独自パビリオンの数が多ければ、各所の行列も、多少は緩和していたかもしれません。
並んでまで入る価値があるか
留意しなければならないのは、行列ができているからといって、各パビリオンの内容が興味深いとは限らない点です。行列しているのは、容量に比して入場者が多すぎることが主因です。内容が評価されて行列が伸びているとは限りません。
筆者はごく一部のパビリオンを見学しただけですが、その個人的な感想としては、1時間以上並んで入る価値のあるパビリオンは、限られるように思えます。
イタリア館くらいの水準の展示物を各国が揃えているならともかく、実際の多くのパビリオンは、映像技術に頼り、バーチャルな体験を提供しているに過ぎません。
ふらりと入って見られるなら楽しいですが、1時間以上の行列の価値に見合うかは、何ともいえません。
パビリオンを見なくても楽しい
万博は、パビリオンを見なくても、雰囲気だけで楽しいものです。多くの方は、行けば楽しめるでしょう。それだけは強調しておきます。
そのため、関西エリアの在住者が通期パスを買って、何度も通う気持ちは理解できます。筆者も関西に住んでいた頃に万博があったなら、通い詰めていたかもしれません。
しかし、遠方から行くとなると、話が違ってきます。交通費もかかりますし、宿泊費は驚くほど高騰しています。高いお金をかけて訪れて、数カ所のパビリオンを見学できるだけなら、二の足を踏んでしまいます。
ということで、筆者の大阪・関西万博は、これにて閉幕です。現代における万国博覧会の価値と限界の両方を感じ取ることができました。(鎌倉淳)