東海道・山陽新幹線「のぞみ」の自由席が、2025年ダイヤ改正で2両に減少する方針であることがわかりました。朝日新聞が報じています。背景に何があるのでしょうか。
3号車85席を指定席に
朝日新聞は、2024年11月28日付朝刊で、東海道・山陽新幹線「のぞみ」の自由席を、来春に「3両から2両に減らす方針を固めた」と報じました。「来年3月に予定されるダイヤ改定を機に、3号車計85席を自由席から指定席に変更する」とのことです。
東海道・山陽新幹線「のぞみ」の自由席は、1号車65席、2号車100席、3号車85席の計250席です。3号車85席を指定席にした場合、自由席は165席となり、34%が減少します。16両編成の総計は1,319席または1,323席ですので、約87%が指定席になります。
普通車に限れば、1,122席または1,126席のうちの165席ですので、約85%が指定席になる計算です。
ピーク時には全車指定席に
「のぞみ」は、1992年に全車指定席で登場しました。2003年10月に「のぞみ」中心のダイヤになった際、自由席3両を設定。それ以来、自由席の号車は変わっていません。
ただし、2023-24年末年始から、ピーク時のみ全車指定席で運行するようになっています。
朝日新聞の報道によれば、2025年3月のダイヤ改正で、ピーク時以外でも自由席を縮小することになります。事実であれば、「指定席拡大」の流れが強まります。
なぜ指定席が拡大されるのか
では、なぜ、「のぞみ」の指定席が拡大されるのでしょうか。
大きな理由として考えられるのは、利用者の着席志向の高まりです。「のぞみ」に限った話ではなく、近年の長距離列車や大都市圏では、交通機関を問わず、確実な着席を求める旅客が増えています。
「のぞみ」は、新横浜~名古屋間で1時間20分も停まりませんので、着席需要がもともと高いという背景もあります。
実際に「のぞみ」に乗ってみると、指定席が満席でも、自由席には余裕がある、といったケースに出くわします。
なぜ指定席が拡大されるのか
鉄道事業者側としては、混んでいる時間帯に自由席に空席があると、輸送効率が低くなります。逆に、自由席が混みすぎると、乗降に時間がかかり、遅延の原因になることがあります。
自由席が空いていると効率が悪く、混んでいると遅延が生じやすくなるので、扱いづらい側面があるわけです。
さらに、混雑時には駅ホームで行列が長くなりすぎ、安全面での問題も生じます。
ネット販売の普及で
いっぽうで、自由席は、出札(発券)が簡単であるという長所もあります。日付と区間だけで発券できるので、駅の券売機での発売も容易です。そのため、窓口の負荷を減らす意味では、鉄道事業者側にメリットがあります。
しかし、最近では、ネット販売の比重が高まっています。ネット販売では、窓口の負荷は高まりませんし、高機能券売機も必要ありません。
ネット販売が主流になりつつある状況で、鉄道会社として自由席を勧める理由は乏しいといえます。
利用者としても、シートマップで好きな座席を選べるのはメリットです。
つまり、出札を理由とした自由席設定は、いまの時代に意味がなくなりつつあります。ネット販売の普及が、自由席の存在意義を減衰させたというわけです。
全車指定席になる日も
自由席の存在意義が小さくなっているのであれば、定時運転と安全性、輸送効率を重視し、全車指定席にするという考え方もあるでしょう。実際、今回も全車指定席化が検討されたとみられます。
ただ、東海道・山陽新幹線は頻繁運転が特徴で、好きなときに駅を訪れて、任意の列車に乗れる自由席制度には、一定の需要があります。また、直通する山陽新幹線では、停車駅間距離が短いことから、自由席のほうが利用しやすい側面もあります。
そうした状況も考慮して、いまの段階で、2両を残したのではないでしょうか。
とはいえ、指定席拡大は時代の流れです。ネット販売がさらに普及し、着席を求める旅客がより指定席を利用するようになれば、「のぞみ」が全車指定席になる日も、遠くなさそうです。(鎌倉淳)