2020年度 旅行会社取扱額ランキング。HISが激減、JR東海ツアーズは躍進。

JTBは不動

主要旅行会社の2020年度の取扱高ランキングをまとめてみました。海外旅行へ出かける人が激減した影響でHISが大幅に順位を落とす一方、東海道新幹線ツアーを主力とするJR東海ツアーズが躍進しています。業界平均では、前年度の2割程度の額にとどまり、旅行会社には厳しい1年間となりました。

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1兆円割り込む

観光庁が発表した2020年度(2020年4月~2021年3月)の旅行業者の旅行取扱状況速報によりますと、国内主要旅行会社の総取扱額は9997億円で、1兆円を割り込みました。対前年度比は21.6%、新型コロナの影響を全く受けなかった対前々年度比では19.7%にまで落ち込んでいます。

内訳は、国内旅行が約9481億円で対前年度比36.9%。海外旅行が約424億円で同2.3%、外国人旅行(訪日旅行)が約90億円で同4.0%です。海外旅行と訪日旅行の需要がほぼ消滅した結果、国内旅行が総取扱額の約95%を占めるに至りました。以下で、主要旅行会社の2020年度の取扱額を見てみましょう。

なお、旅行会社の取扱額は、いわゆる「売上高」に相当します。「取扱額ランキング」が、一般の認識の「売上高ランキング」とほぼ同義になります。

2020年度旅行会社取扱額ランキング
順位 前年度
順位
会社名 総取扱額 前年度比
1 1 JTB 4215億円 26.7%
2 3 KNT-CT 998億円 21.8%
3 4 日本旅行 978億円 23.0%
4 5 阪急交通社 584億円 17.4%
5 6 JALパック 563億円 31.5%
6 7 ANAセールス 475億円 27.4%
7 10 JR東海ツアーズ 297億円 36.6%
8 2 HIS 269億円 5.8%
9 8 東武トップツアーズ 252億円 20.6%
10 9 名鉄観光 242億円 28.4%
11 12 ビッグホリデー 132億円 24.6%
12 14 びゅうトラベル 101億円 23.2%
13 11 農協観光 76億円 13.3%
14 15 読売旅行 71億円 20.0%
15 22 西鉄旅行 68億円 23.2%
16 20 HTB-BCDトラベル 54億円 17.1%
17 18 T-LIFE 40億円 12.2%
18 32 京成トラベル 38億円 29.4%
19 28 イオンコンパス 37億円 24.8%
20 19 日通旅行 34億円 10.9%
合計 9997億円 21.6%

出典:観光庁「主要旅行業者の旅行取扱状況速報」。21位以下省略。1億円未満切り捨て。JTBは9社合計、HISは6社合計、KNT-CTは13社合計、阪急交通社は3社合計、T-LIFEは4社合計。オンライン専業旅行社である楽天トラベルやリクルート(じゃらんnet)は、KNTや日本旅行の上位に入るとみられますが、上記統計には非掲載です。

 

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HISが7位転落

ランキングトップはJTBで、不動の地位に変わりはありません。全体シェアは42%で、前年度の37%より5ポイントも高くなりました。新型コロナによる観光不況で、安定のトップ企業に旅行を申し込む人の割合が高くなったのかもしれません。

前年度2位のHISは7位に転落。海外旅行を主力とする同社は、総取扱額の前年度比が5.8%にまで沈みました。新型コロナの影響を最も強く受けた旅行会社といえるでしょう。HISは、子会社に国内バス旅行を主力とするオリオンツアーを抱えていますが、バス旅行も全体として不振だったためか、国内旅行の伸びも限られたものになりました。

富士山

阪急交通社も苦戦

HISに変わって2位に入ったのが、KNT-CT。近畿日本ツーリストを中心とするグループです。僅差で3位が日本旅行。KNTと日本旅行の2社は、取扱額がともに1,000億円弱で、前年度比もほぼ同じとなりました。

4位の阪急交通社は、対前年度比17.4%と、大手旅行会社のなかでは苦戦した会社です。ただ、上表にはありませんが、国内旅行の取扱額は対前年度比43.5%と抜群で、大手旅行会社トップの成績を残しました。それでも全体の落ち込みが大きかったのは、もともと海外旅行の割合が高い会社だからです。

6位のJALパックと7位のANAセールスの2社は、例年は取扱額に大きな差がありませんが、今期はJALパックがやや優勢です。国内旅行で対前年度比42%と踏ん張り、海外旅行の落ち込みを埋めました。ANAセールスは国内旅行で対前年度比31.3%にとどまり、平均以下でした。

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JR東海ツアーズが躍進

躍進したのが、JR東海ツアーズです。東武トップツアーズ、名鉄観光、さらにはHISまで抜き去って、ランキング7位に食い込みました。同社は東海道新幹線を使ったキャンペーン「ひさびさ旅は、新幹線!」を実施。ネット予約のシステムを一新し、新幹線を使ったダイナミックパッケージなどの新商品を投入。その成果が出たのか、国内旅行が対前年度比38.4%と健闘しました。

ただ、JR東海ツアーズは、もともと海外旅行の扱いが少なかったため、全体の落ち込みが相対的に小さかった、という側面もあります。

同じJR系では、JR東日本系のびゅうトラベルも堅調で、順位を二つあげて12位に入りました。対前年度比23.2%は平均水準ですが、こちらも海外旅行の比重が少ないことが影響したとみられます。

そのほかに注目せざるを得ないのは農協観光で、対前年度比13.3%。国内旅行が主力の会社にもかかわらず落ち込みが大きかったのは、同社が地方の顧客をメインにしているからでしょう。新型コロナの影響で、地方から都市へ旅行に出る旅行者が減ったことを示しています。(鎌倉淳)

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