JR各社は全国の各新幹線の「割引きっぷ」を、4月以降に大整理します。窓口販売の紙の割引きっぷを減らし、ネット販売への移行を進めます。とくに、新幹線回数券は設定区間を大幅に縮小します。旅行者向けの割引きっぷに焦点をあて、4月以降の変更点を簡単にまとめてみましょう。
東海道・山陽新幹線
東海道・山陽新幹線では、新幹線回数券が大幅に削減されます。廃止されるのは、「グリーン席用」が3区間、「普通車指定席用」が18区間、「普通車自由席用」が65区間で、合計86区間に及びます。
東京発着では、普通車指定席用で静岡、浜松、西明石、小倉が廃止。普通車自由席用で三河安城が廃止。グリーン席用で静岡、京都、新神戸が廃止となります。
名古屋発着では、普通車指定席用で西明石、福山、小倉が廃止。普通車自由席用で熱海、三河安城が廃止。
新大阪発着では、普通車指定席用で徳山、新山口が廃止。普通車自由席用で、小田原、熱海、三島、新富士、掛川、豊橋、三河安城、米原、新神戸、西明石、相生、新倉敷、新尾道、三原が廃止です。
上述の通り、新大阪発着の自由席回数券が大幅に縮小されます。
そのほか、東海道・山陽新幹線では「東京ディズニーリゾート往復きっぷ」「世界遺産白川郷・五箇山フリーきっぷ」が廃止となります。JR東海ツアーズの「ぷらっとのぞみ」も販売終了です。
なお、2022年3月末で、東京~名古屋、京都、新大阪をはじめとした主要区間の指定席回数券も廃止されることも発表されました。1年後の話ですので、当面、変更はありませんが、新幹線回数券はいずれ、すべてなくなりそうです。
山陽新幹線
山陽新幹線では、窓口販売をしない「新幹線 近トク1・2・3」「新幹線 直前割きっぷ」を2021年4月以降に設定します。「近トク」は継続発売、「直前割きっぷ」は「直前割50」から名称変更です。いずれも、新型コロナ禍以降に誕生した新たな割引きっぷですが、一部区間で割引幅を3月までより縮小し、値上げします。
「新幹線 近トク1・2・3」は、山陽新幹線の1~3駅区間で、自由席が割引価格になります。JR西日本のインターネット列車予約「e5489」と、JR西日本の主要駅の「みどりの券売機」で購入できます。発売は1ヶ月前から前日までです。
旧価格で1,000円(1駅)、1,500円(2駅)の区間は価格据え置きですが、2,000円だった3駅区間が2,500円になります。新大阪~姫路、新山口~小倉などが値上げとなります。
「新幹線直前割きっぷ」は、山陽新幹線の中長距離区間で、「こだま」「ひかり」の指定席が割引になります。こちらは「e5489」でのみ購入できます。発売は3日前から前日までです。
3月までの「直前割50」は文字通り一律半額でしたが、4月からの「直前割きっぷ」では、約35~45%の割引となりました。距離が長いほど割引率が高い形です。それでも、新大阪~岡山、広島といった中距離区間では、貴重な割引きっぷとして存在感を発揮しそうです。
九州新幹線
窓口販売の割引きっぷの大削減が行われるのが九州新幹線。3月末で発売終了となるのは、「九州新幹線2枚きっぷ」(全21区間)、「九州新幹線日帰り2枚きっぷ」(全5区間)、「京都往復割引きっぷ・大阪往復割引きっぷ・神戸往復割引きっぷ」(全21区間)、「新幹線往復割引きっぷ」(全7区間)の5種類に及びます。
インターネット販売の「九州ネットきっぷ」は存続しますが、区間により値上げとなります。たとえば博多~熊本は3,670円が4,300円に、博多~鹿児島中央は9,430円が9,900円になります。「九州ネット早特3」や「九州ネット早特7」も、それぞれ値上げになります。「つばめ限定!九州ネット早特7」と「JQ限定!九州ネット早特14」は、3月31日乗車分を以て発売を終了します。
一方、「B&Sみやざきネットきっぷ」では、博多~人吉、えびの、小林、都城の区間が新設されます。
東北・北海道・上越・北陸・山形・秋田新幹線
JR東日本の新幹線では、3月末を以て東北・上越新幹線などの「新幹線Wきっぷ」を全区間で廃止。さらに、6月末を以て、「新幹線回数券」と「こまち4枚回数券」も廃止します。これにより、JR東日本エリアの新幹線で、回数券はほぼ全て廃止となります。東京~仙台、盛岡、新潟といった主要区間の回数券も、6月末で発売終了です。
一方、4月1日から通年商品として、東北・北海道・上越・北陸新幹線の「グランクラス(飲料・軽食なし)」にネット販売の「えきねっとトクだ値」を設定します。
設定区間は「はやぶさ」の場合、仙台~新青森、新函館北斗などで、5%割引からです。「やまびこ」には東京~仙台間の設定があり、15%割引です。「とき」「たにがわ」「あさま」も15%割引。「かがやき」「はくたか」には設定しません。
また、期間限定商品として、「お先にトクだ値スペシャル」を東北・北海道・山形・秋田新幹線に9月30日まで設定します。こちらは50%割引で、普通車指定席は「はやぶさ」の東京~仙台、新青森、新函館北斗間などに設定。「グリーン車」「グランクラス(飲料・軽食なし)」も、一部区間で設定されています。
JR東日本は、えきねっとのリニューアルを2021年夏に予定しており、それにあわせて窓口販売のきっぷを大幅に整理する一方で、ネットの割引きっぷを充実させる方針を示しています。(鎌倉淳)