新幹線は「IC乗車」が標準へ。JR東日本が「タッチでGO!」拡大、新幹線回数券廃止

ただし、盛岡はまたげません

JR東日本が、ICカード乗車券「Suica」などで新幹線に乗れるサービス「タッチでGo!新幹線」のエリアを全路線に拡大します。あわせて、6枚つづりの「新幹線回数券」など、紙の割引きっぷを多数廃止。新幹線もICカードで乗車するのが標準的な時代になってきたようです。

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2021年春に全路線がエリアに

「タッチでGo!新幹線」は、Suica、PASMOといった交通系ICカードで新幹線普通車自由席を利用できるサービスです。2018年4月にスタートしました。

初回のみ駅の券売機などで登録手続きをおこなえば、以降は乗車券や特急券を買うことなく、ICカード乗車券のチャージ残額でそのまま新幹線の改札を通過できます。事前に新幹線のチケット購入手続きが要らないという点で、「新幹線eチケット」とは異なります。

「タッチでGo!新幹線」の現在のサービス区間は、東京~那須塩原、上毛高原、安中榛名までの各駅間。これを、2021年春のダイヤ改正日から東北・山形・秋田・上越新幹線の全線(ガーラ湯沢含む)と、北陸新幹線の上越妙高までに拡大します。首都圏近郊のみのサービスだったのが、JR東日本の新幹線全路線に広がるわけです。

タッチでGO!新幹線
画像:JR東日本プレスリリース
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盛岡駅はまたげない

ただし、東北・秋田新幹線は、盛岡駅をまたがって乗車することはできません。たとえば、東京~八戸や仙台~秋田、といった区間では、「タッチでGO!新幹線」は使えません。

なんでこんな不便な運用になっているのかというと、盛岡以南は「やまびこ」の自由席利用が前提になりますが、盛岡以北(新青森、秋田方面)を走る「はやぶさ」「こまち」には自由席がなく、指定席の立席利用という扱いになるためとみられます。

盛岡以南は自由席特急券、盛岡以北は立席特急券の扱いなので、券種が異なります。そのため、「タッチでGO!」で通しの特急券の扱いができず、こうした不便な運用になってしまうようです。

ちなみに、盛岡~新青森と盛岡~秋田のみ完結で利用する場合は、普通車指定席車両の空席を利用できます。これらの区間は特定特急券のみで利用できるからでしょう。

また、仙台~盛岡で完結する利用の場合も、途中駅に停車駅のある「はやぶさ」の普通車指定席車両の空席が利用できます。これは同区間の「はやぶさ」は自由席特急券で立席利用ができるというルールを適用したとみられます。

そのほか、大宮駅で乗り継いで東北新幹線と上越・北陸新幹線を大宮駅で乗り継ぐ場合なども、「タッチでGO!新幹線」は利用できません。

特定都区市内駅制度は適用なし

そうした細かい制約はあるものの、ひとつの列車の自由席をシンプルに利用する場合は複雑なルールはなく、ICカード乗車券をタッチするだけでJR東日本管内の新幹線に乗車できるようになります。これは間違いなく便利なことでしょう。新幹線駅窓口や券売機は混んでいることもあるので、自由席にさっと乗りたい場合、「きっぷを買わなくて済む」は魅力です。

運賃・料金の引き落としは、新幹線の降車駅で新幹線改札機から出場する際におこなわれます。利用区間の金額が、チャージ残額から引き落とされます。

この金額は、新幹線の自由席を利用した場合の所定金額です。いわゆる通常運賃・料金です。ただし、特定都区市内駅制度は適用されませんので、新宿駅など新幹線駅以外の都区内駅や市内駅からJR線を利用する場合は、紙のきっぷより高くなります。

片道1万円を超える区間でもICカード1枚で乗れるようになりますので、十分なチャージ残高が必要です。なお、新幹線停車駅には入金ができる自動券売機などが設置されます。

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「新幹線回数券」など廃止

「タッチでGo!新幹線」の区間拡大にあわせて、紙の企画乗車券が多数廃止されます。廃止対象は以下の通りです。

■2021年3月31日に発売終了
・新幹線Wきっぷ(2枚つづり)
・定期券用新幹線自由席回数券(6枚つづり)
・新幹線料金回数券(4枚つづり)
・えちご料金回数券(新幹線用:新潟~長岡、4枚つづり)

■2021年6月30日に発売終了
・新幹線回数券(普通車)(6枚つづり)
・こまち4枚回数券(普通車)(4枚つづり)

JR東日本管内の新幹線回数券類が全てなくなる、と考えてよさそうです。存続するのは、「フレックス・グリーン料金回数券」くらいでしょうか。「こまち4枚回数券」などは、今回の「タッチでGO!新幹線」導入と関係ない区間(東京・仙台~秋田)の設定なので、「タッチでGO!」のエリア拡大と回数券廃止とは、必ずしも直接の関係はなさそうです。

ただ、JR東日本としては、ネット予約とIC乗車を新幹線利用の標準にしていきたいようですので、紙の割引きっぷ廃止は、その流れに沿った措置といえます。同社の割引きっぷの代表格となった「えきねっとトクだ値」も、「新幹線eチケット」専用商品となり、ICカードでの乗車が前提となりました。

とはいえ、新幹線の割引きっぷの代名詞ともいえる「新幹線回数券」の全面廃止は驚きです。国鉄時代からの歴史ある割引きっぷが、JR東日本から姿を消すわけです(JR東海・西日本では存続)。また、割引率の高かった新幹線Wきっぷの廃止は、愛用者には手痛いことでしょう。

せめて今後は、インターネット「えきねっとトクだ値」などの設定拡充を期待したいところです。

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