成田空港の鉄道アクセスが、かつてない規模で再編されようとしています。国土交通省などによる「今後の成田空港施設の機能強化に関する検討会」による最終とりまとめ案では、空港拡張を見据え、鉄道ネットワークの抜本的強化が盛り込まれました。単線区間の複線化、新駅の整備、東成田駅との事実上の統合などが計画され、「空港アクセスの再構築」といえる内容です。
「容量不足」で全面再構築へ
成田空港(成田国際空港)では滑走路の延伸や増設により、年間発着容量が34万回から50万回に増加する予定です。これにより、2030年代にかけて旅客需要が急増し、ピーク時には既存アクセス鉄道の輸送力が逼迫するという予測が示されています。
現状のままでは、京成スカイライナーやアクセス特急、JR成田エクスプレスなどの主要列車で、2030年代前半に混雑率が100%を超え、将来的に150%超となる可能性も指摘されています。
成田空港駅および空港第2ビル駅では、利用者が現在の1.5倍規模に増加し、深刻な混雑となる可能性が高まっています。
そのため、国交省は、成田空港の施設や、鉄道アクセスの抜本的な改善を目指し、ターミナルのみならず線路や駅も作り替える、再構築に踏み切ることになりました。
新ターミナルを建設
最終とりまとめ案によると、第1、第2ターミナルの間に新ターミナルを建設し、既存の第1~第3ターミナルを統合していきます。
ロングピア型の新ターミナルを段階的に整備し、既存施設を活用しながら、最終的にひとつにまとめる計画となっています。
新ターミナルは単なる搭乗施設ではなく、商業、オフィス、滞在機能を備えた複合拠点として設計されます。鉄道駅との動線も含め、空港内の移動を極力シンプル化し、利便性を世界水準まで引き上げることを目指します。

京成スカイアクセス線を高架・複線化
成田空港アクセスの鉄道路線のうち、京成スカイアクセス線は、空港付近で高架・複線化し、新ターミナルに接着します。京成の成田空港新駅は、現在の京成本線東成田駅付近の高架上に建設し、東成田駅と一体的に運用します。
これにより、東成田駅は京成新駅と、事実上統合されることになるようです。
高架新駅南側には、新ターミナルに接続する改札口を設けます。東側には、第2ターミナルに接続する改札口を整備します。

スカイライナー専用ホーム
京成の高架新駅は3面5線と大規模です。図をみると、1面2線はスカイライナー専用ホームとし、1面2線をスカイアクセス線の一般列車のホームとするようです。残り1面1線が京成本線ホームとなるようです。
地下駅(現東成田駅)は1面2線で、京成本線・芝山鉄道線の列車が発着するようです。京成スカイアクセス線と京成本線とは連絡線で接続します。図を見る限り、少なくとも本線の列車は、高架・地下の両方に発着できるようです。

JR駅も大規模改良
JR線については、現状の成田空港駅と、空港第2ターミナル駅をそのまま使います。
京成線が地上に移転するため、現在の京成線の線路を改軌し、JRが複線として運用します。JRは成田空港駅で2面3線、空港第2ターミナル駅で2面2線となります。
現成田空港駅は1面2線が成田エクスプレス用になるようです。また、成田空港駅では、新ターミナルに接続する改札口を新たに整備します。

単線区間は消滅へ
成田空港アクセスで、長年の課題とされてきたのが、単線区間の存在です。
今回の計画では、京成線について、空港周辺から成田湯川・成田駅方面にかけての単線区間を複線化する方針が明記されました。
具体的には、成田空港新駅~イオンモール付近(土屋付近)において新線を整備し高架・複線化するとともに、土屋付近~成田湯川駅間の既存単線区間を複線化します。
また、北総線との共用区間である印旛日本医大駅~新鎌ヶ谷駅間については、有料特急列車専用の新線を整備し、複々線化します。
都心側の鉄道施設についても、ボトルネックを解消するための改良について引き続き検討します。

JRも複線に
JR線については、空港第2ビル駅~土屋付近において、既存の京成スカイアクセス線を改軌して複線化するとともに、土屋付近~成田駅付近までの既存単線区間についても複線化します。
これらの改良による効果は抜群です。まず、京成線はスカイライナーと押上方面への新型有料特急(押上ライナー)を最大毎時6本運行できます。また、アクセス特急を最大毎時3本運行できます。
スカイライナーの日暮里~空港第2ビル間は、現状の最速36分から30分台前半に、押上ライナーは、押上~空港第2ビル間を最速30分台前半から20分台後半に所要時間を短縮できます。
また、JRは成田エクスプレス(NEX)を最大毎時3~4本運行できる可能性があります。

段階的に整備
これらの改良工事は、2030年代には鉄道旅客の需給が逼迫する状況も踏まえ、その需要に対応できるように整備を進めます。新駅は、新ターミナルの供用開始に併せて供用開始することを目指します。
最初にステップ1として、新ターミナルと京成新駅を供用開始します。このとき、第2ターミナルは第3ターミナルと接続のうえ維持し、一体的に運用します。ステップ1は2030年代に実現します。
ステップ2は、新ターミナルに集約し、ワンターミナルとします。需要動向に応じて整備されるので、2040年代以降になるようです。ステップ2においても、JR空港第2ビル駅は残るようです。

京急直通ライナーも
鉄道ネットワークとしての注目は、新設される押上ライナーです。第1フェーズとして、2028年度に押上駅までの乗り入れが決まっていますが、第2フェーズとして、2030年代に都心への直通運転実現を目指します。
まず、京急が進めている品川駅改良工事完了後、成田空港駅から都営浅草線乗入れによる京急線品川駅までの直通運転を目指します。次に、 羽田空港駅(第1・第2ターミナル駅)引上線の供用開始後に、京急線を経て羽田空港駅までの直通運転を目指します。
現在公表されている予定では、品川駅改良は2030年3月、羽田空港駅引上線完成も2030年頃とされています。実際の工事状況はわかりませんが、いずれにしろ、2030年代の早い時期に完成予定なので、押上ライナーの品川・羽田空港乗り入れも、そう遠い将来ではなさそうです。
ただし、この構想には、車両規格の統一、ホームドア対応、運行管理システムの整合、乗務員運用など多くの技術的・運用的課題が残されています。そのため、運行開始時期は、線路設備以外の準備状況にもよるでしょう。

JR羽田空港アクセス線直通も検討
JRでは、現在整備が行われているJR東日本の羽田空港アクセス線(仮称)を活用したルートの乗入れの可能性について、「検討が望まれる」としました。
現時点で具体的な計画はありませんが、総武線・京葉線接続新線(市川塩浜~津田沼)の建設を想定しているのかもしれません。ただ、これは構想程度の話にとどまりますので、検討はこれからといったところでしょう。

空港アクセスの「再設計」
今回の最終とりまとめ案が示すのは、単なる輸送力増強ではありません。空港アクセスを構成する駅・線路・ダイヤ・直通体系を一体で組み替える「再設計」です。
京成、JR、さらには都営浅草線・京急線までを含めた広域ネットワークの再編により、成田空港アクセスはいまと大きく異なる姿へと進化するわけです。
実現には長い時間と調整が必要ですが、計画通り進めば、成田空港の鉄道アクセスは、旅行者にとって便利に生まれ変わりそうです。(鎌倉淳)























