「ときライナー」の研究。新潟県6社の高速バスが統一ブランドに

新潟県で「ときライナー」という高速バスネットワークが誕生しました。県が音頭を取って、複数の会社の高速バスを一つのブランドに統一したものです。地方の高速バスの新たなモデルになるのでしょうか。

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6社9路線が統一ブランドに

「ときライナー」は、新潟県で運行を開始した新たな高速バスネットワークです。県内6事業者による9つの既存バス路線を「ときライナー」というブランドに統一しました。

参加したのは、新潟交通、新潟交通観光バス、越後交通、蒲原交通、頸城自動車、アイ・ケーアライアンスの6社です。新潟県内の主要バス会社3グループ(新潟交通、越後交通、頸城自動車)が全て参加しています。

これらの会社が運営する、長岡線、上越線、柏崎線、糸魚川線、十日町線、東三条線、五泉村松線、巻潟東IC駐車場線、燕線の9路線が、2022年4月1日から「ときライナー」のブランドで運行を開始しました。

「ときライナー」のホームページをつくり、9路線の時刻や運賃などの情報をまとめています。各社のバスのサービスも統一し、予約不要、運賃は車内でICカード支払いができ、全車フリーWi-Fiを備えます。

全ての路線でバスロケーションシステムを導入し、バス位置情報をリアルタイムで確認できます。パークアンドライドも充実させ、ウェブサイトで駐車場の位置などを表示しています。

利用者としては、新潟県内の高速バスの情報を得るのが容易になり、どの路線に乗っても同等のサービスが期待できる、というわけです。

ときライナー
画像:ときライナーホームページより
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高速バスのあり方を検討

「ときライナー」が生まれた背景として、新潟県内の高速バスで減便や路線廃止が相次いだという状況があります。利用者が減少していることにくわえ、運転手不足が拍車を掛けました。

新潟県では、北陸新幹線の開業により、新潟市と上越エリアを結ぶ特急が廃止され、都市間移動で高速バスの重要性が高まったという事情もありました。

このため、新潟県では、県内高速バスを中心とした都市間高速交通ネットワークのあり方を検討。持続可能で利便性の高いネットワークの実現を目指し、2020年3月に報告書をとりまとめました。

報告書は高速バスについて、「以前は収益性が高く、公的関与が及ばない事業であったが、近年では、特に郊外路線で収益が悪化」し、「これからは、行政も関与」すべきと指摘。現在の高速バス事業は、路線ごと、事業者ごとに検討されていますが、「今後は、高速バスネットワーク全体として、一体的に事業を検討・企画する体制が必要」と提言しました。

さらに、「二次交通も含めた高速バスネットワーク全体の利便性向上や情報発信等を行う体制の構築が必要」という方針を示し、「ときライナー」という形で結実したわけです。

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MaaS活用も視野

現時点で、「ときライナー」は「県内高速バス会社が共通ブランドで運行し、サービス水準を統一する」というだけです。しかし、報告書では、さらなる「高速バスネットワークの充実に向けた取組」を提言しています。

具体的には、高速バスを降りてから目的地に行くことができるよう、二次交通としてカーシェアリングやレンタサイクル、(デマンド)タクシーなどの整備を求めています。また、MaaSを活用し、「多様な交通モードによる最適な移動方法の検索・予約・配車・決済」を可能にする仕組みも提案しています。

現在、情報はホームページにまとめられているだけですが、今後はスマホアプリなども開発し、高速バスと二次交通を組み合わせた取り組みを進めるのかもしれません。

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さらなる取り組みも

「パーク&ライド駐車場や待合環境の充実」も必要としました。高速バスは乗ってしまえば楽ですが、バス停は必ずしも便利な位置にはなく、バス停で待つのも大変です。新潟県内では、全ての高速バス停に待合室または上屋があるものの、トイレの整備率は44%にすぎません。とくに、長岡以西の北陸道では、13か所のバス停のうち1か所しかトイレがありません。

運転手不足の対策としては、「県外路線の県内バス停での停車による路線の充実」を提案。新潟県からは、山形、福島、東京、長野、名古屋、富山、金沢、大阪方面など、豊富な県外バス路線がありますが、こうした路線で途中乗降ができる県内バス停を増やせれば、バスや運転手を増やさずに、県内ネットワークを拡充できるという話です。

また、「県内高速バスは、市内周回に相当の時間を要しているので、市内周回はフィーダー路線等に任せることで、短縮された時間分を新たな運行に充てることも考えられる」というアイデアも披露しました。

こうした提案がどこまで実現するかはわかりませんが、高速バスを地域交通機関と位置づけ、県が主体となって環境整備を推進する取り組みは注目で、今後、地方の高速バスの新たなモデルになるかもしれません。(鎌倉淳)

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