宿泊税が全国に広まりそう。倶知安では全国初の定率制で導入へ

リゾート地で検討中

宿泊税を導入する地方自治体が増えています。北海道倶知安町では、2019年11月に導入する方針を固め、近く条例案が出されます。可決されれば、全国初の定率制の宿泊税となります。

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2%の定率課税

国際的リゾート・ニセコが位置する北海道倶知安町では、2015年度から観光客を対象とする新たな課税を検討してきました。観光客の急増を受け、域内交通網の整備や環境保全を目的としたものです。2030年に予定している北海道新幹線の倶知安駅開業に備えた観光事業の財源にもなります。

現在の案は、宿泊費に定率2%を課税するという内容です。宿泊税の導入は東京都、大阪府で前例がありますが、いずれも定額制で、定率制の宿泊税は全国初となります。

宿泊税の対象は、町内のホテルなどの宿泊施設。民泊やコンドミニアムも課税対象になります。修学旅行など、高校以下の学校行事の旅行は非課税です。

1泊1食の場合は、支払金額の10%、1泊2食の場合は支払金額の20%を食事代とみなして差し引いて課税します。

2018年8月には町民に対するパブリックコメントが募集され、おおむね導入に好意的な結果となりました。これを受けて、町では近く議会に条例案を提出します。導入後、2~3億円程度の税収を見込んでいます。

ニセコひらふ

東京都が先鞭

宿泊税は日本国内では、東京都が2002年10月に導入したのが最初です。2017年1月には大阪府でも徴収が開始されました。

東京都は1万円~1万5000円の宿泊料で100円、1万5000円以上で200円の宿泊税。

大阪府は1万円~1万5000円で100円、1万5000円~2万円で200円、2万円以上で300円の宿泊税となっています。

おおむね、宿泊料に応じて1%程度の税が定額で課されていることになります。いずれも1万円未満は非課税です。

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ハワイを参考

これに対し、倶知安町では宿泊金額にかかわらず、1泊2%の定率制が採用されました。1万円以下も課税対象で、かつ税率も高めです。東京、大阪の宿泊税に比べて、宿泊者にとって重税感があります。

導入を検討する有識者会議の議事録には、事務局側の考え方として「例えばハワイは泊まるだけで14~15パーセントの税金がかかるが、そういうところも参考にはしている。2%というのは、ウィスラー等の海外リゾートを知っている観光客からしても納得してもらえる範囲だろうということと、来年には消費税が10%になるということで、仮に道も宿泊税をかけることになったとしても、ハワイの15%と比較して過重な負担感ではないと考えている」と記されています。

消費税と北海道が検討中の宿泊税、そして倶知安の宿泊税とあわせて15%程度なら、受け入れられるだろう、という考えのようです。国、道、町の三重課税も見越しての税率のようです。

一方、1万円未満の宿泊者にも課税する理由としては、倶知安のホテル料金は、東京や大阪に比べれば宿泊単価が安いことが挙げられそうです。

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全国のリゾート地で検討

宿泊税は、全国各地で検討が始まっています。

公益財団法人日本交通公社では、2017年8月に観光財源研究会を設置しました。観光財源確保を目指す各自治体の取り組みを支援することを目的とした研究会で、宿泊税の導入や入湯税の超過課税などの課題整理や導入手法の検討を行っています。

ニセコ町の議事録によりますと、この研究会には、倶知安町、ニセコ町、熱海市、別府市、白馬村、恩納村といった、全国の有名リゾートの自治体が参加しています。これらの地域では、宿泊税の導入か、入湯税のかさ上げといった方法を検討していることになります。

実際、倶知安町に隣接するニセコ町は、倶知安町と足並みを揃えつつ宿泊税の検討をしています。また熱海市は、9月2日の市長選で、宿泊税導入を公約に掲げた現職の斉藤栄市長が無投票4選し、課税が具体的に検討されそうです。

宿泊税は、地元住民に直接的な痛みを伴わない課税手法のため、地方議会では反対する会派も少なく、議会を通りやすいという特徴があります。

これまで、東京や大阪の高級ホテルが主対象だった宿泊税ですが、今後はリゾート地での課税が、全国的に広まりそうです。(鎌倉淳)

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