東京の水族館で、独特の存在感を放つのが「しながわ水族館」です。都市型のコンパクトな施設ながら、イルカショーや大型水槽といった、水族館の定番が一通り揃います。地域密着型ながら実力派の水族館といえそうです。
公設民営の水族館
しながわ水族館は、品川区が整備した公設民営の施設です。1991年の開業以来、株式会社サンシャインエンタプライズが運営を受託しています。つまり、水族館としてはサンシャイン水族館と同系列です。
立地はしながわ区民公園の南端。京浜急行大森海岸から徒歩8分ほどの距離です。まちなかにあるため規模はコンパクトで、本館の延床面積は3,753平米に過ぎません。新江ノ島水族館の12,804平米、葛西臨海水族館の12,727平米と比べると、おおむね3分の1以下です。
小さいプールでイルカショー
しながわ水族館で特筆すべきなのは、この小さな施設にショープールを備え、イルカやアシカのショーが実施されている点です。3倍以上の面積を備える葛西臨海水族館でもショープールはありません。都内でイルカショーが見られるのは、しながわ水族館とアクアパーク品川だけです。
水族館において、イルカショーは人気があります。ある週末のオープン直後に訪れてみると、一直線にショープールに向かい、座席を確保するお客さんが大勢いました。ショープールはとても狭く、座席数は限られていて、すぐに満席になってしまうとのこと。日によりますが、いい場所でショーを見たいなら、開始30分前にはショープールに到着している必要がありそうです。
狭いプールで、2頭のイルカが飛び回ります。小さい施設だけにプールと客席が近く、迫力あるイルカショーを楽しめました。座席の確保は大変ですが、座ってしまえば十分楽しめて、遠くのリゾートに来た気分。ここが品川であることを忘れてしまいそうです。イルカのほか、アシカショーやアザラシのショーもあります。
過不足ない展示
ショー以外の施設も充実しています。水中トンネルのある大水槽のほか、日本初のアザラシのトンネル水槽もあります。
ガラ・ルファなどを触れる「ふれあい水槽」もしっかり設置しています。そして行列していました。
展示では、地元・東京湾の生物が充実しているのは当然として、南洋のチョウチョウウオ、スズメダイ、カクレクマノミや、南米のピラニアなども集めています。イワシの回遊やクリオネ、チンアナゴといった、人気の「小物」もしっかり押さえ、流行のクラゲのデザイン展示もしています。
まあなんというか、「小さいながらも定番を一通り揃えました」という過不足のない展示。地域型の区民施設でよくこれだけ集めたな、と感心します。
「偉大なる地域型水族館」という形容が適当でしょうか。小規模ながらも定番展示を詰め込んだ、実力派の水族館といえそうです。
居住スペースが狭いのが
全体的に生き物の居住スペースが狭く、見ていてかわいそうになってくるのが難点でしょうか。イルカの泳ぎ場所が狭いのは前述したとおりですが、ペンギンのスペースなどは猫の額ほどで、ちょっと同情してしまいます。
アザラシのショーも、「ショー」と呼ぶにはささやかすぎる空間。イワシの回遊も、もう少し広いところで泳ぎたいだろうに、と見ていて思わずにはいられませんでした。
レストランは残念
利用者目線では、付帯施設の「レストランドルフィン」が残念ポイントでしょう。座席はまずまずゆったりしているのですが、メニューのラインナップが今ひとつ。筆者は「ミニしながわ丼と讃岐うどんセット」を試してみましたが、味も量も「うーん」という印象。その割に1,150円と、お値段だけは立派です。
このレストランは、水族館に隣接する唯一の飲食施設です。公園周辺の飲食店が乏しいからか、子連れファミリーが並んで待っていました。並ぶくらいなら、8分歩いて大森海岸駅近くの飲食店に行った方が美味しいものが食べられるとは思いますが、子連れだとそうもいかないのでしょう。
運営は名の知れた喫茶店チェーンですが、もう少しの努力を期待したいところ。公営施設のレストランが今ひとつなのは仕方ないですが、ここはいちおう民営施設。値段が多少高いのはやむをえないとして、メニューと味の改善の余地はありそうです。
スムーズに回るには
ということで、しながわ水族館全体はコンパクトで、ショーを見なければ1~2時間で回れます。ショーを見るとなると、席取りをしたりで1つにつき1時間くらいは余計にかかります。
狭いからか、全体的に混雑していることが多く、通路も狭いのでストレスになりやすいです。スムーズに回りたいならオープン直後か、ファミリーが帰り始める夕方がいいでしょう。レストランがアレなので、食事は持参して公園で食べるか、別のところで済ませるプランが良さそうです。(鎌倉淳)