サハリン航路の2016年度運航継続を稚内市が断念。三セク運航計画撤回で「現代の稚泊航路」は瀬戸際に

稚内とロシア・サハリンのコルサコフを結ぶフェリー航路の来年度の運航が行われないことになりました。稚内市が、第三セクターの新会社を設立して定期便を2016年度から引き継ぐとしていた事業計画を白紙撤回したためです。新会社の設立は延期となり、2016年度のサハリン航路定期便の運航はなくなりました。

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ハートランドフェリーは撤退

サハリン航路は、1999年から定期運航してきたハートランドフェリーが不採算を理由に2015年9月を最後に撤退しました。これを受けて、稚内市は使用していた貨客船「アインス宗谷」を4億1000万円で買い取り、定期運航を引き継ぐ事業計画を立てていました。

稚内市と民間企業が出資する第三セクターを2015年に資本金3億円で設立し、運航を船舶管理会社に委託するという計画で、2016年度以降の通年運航を模索していたものです。

しかし、工藤広・稚内市長は、2015年12月18日に開いた市議会の全員協議会で、「第三セクターがアインス宗谷を所有し定期フェリーを運航する手法は採用できない」と述べ、「2016年6月をめどに考えていた定期航路の再開はかなわない」と定期便の断念を明言しました。

写真:稚内市写真:稚内市

外国船籍にできず

稚内市は人件費削減のため、アインス宗谷を日本船籍から、外国人船員が乗務する外国船籍に転籍する策を探ってきました。しかし、安全検査や保険適用に必要な船級の取得が困難で、アインス宗谷を外国船籍にできず、外国人船員の雇用も行き詰まりました。

そのため、予定していた船の購入取得も断念し、年内が目標だった第三セクター運航会社設立も延期しました。

工藤市長は「今後も定期航路の再開に全力を傾注する。当面は不定期便の運航も視野にあらゆる可能性を模索していきたい」と述べました。定期便は難しくとも、貨物船を中心としたチャーター運航だけでも実施、航路を存続させたいとの姿勢です。

サハリン航路は戦前の稚泊航路の伝統を受け継ぎます。地元住民の方には思い入れの強い航路だと思いますし、旅行者としても外航定期航路は貴重です。存続計画は瀬戸際に立った印象もありますが、なんとか新会社を設立し、航路存続を実現してほしいところです。(鎌倉淳)

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