葛西臨海水族園は、日本屈指の人気水族館です。年間入場者数は130万人以上で、イルカショーを実施していない水族館では、日本トップクラスです。ショーがなくてもこれだけの入場者数を集められる魅力はどこにあるのでしょうか。
スタジアムなき人気水族館
日本の有名水族館の多くは、イルカやアシカといったショーパフォーマンスを売り物として、客を集めています。そのなかで、葛西臨海水族園はショースタジアムを持たず、イルカやアシカといった海獣を飼育すらしていません。それでも、2016年度の年間入場者数は137万人あまり。全国屈指の人気を誇ります。
人気の理由は、何よりも立地と規模でしょう。首都高インターからすぐ、JR駅からも徒歩圏という抜群の利便性と、東京23区内にありながら1万4000平米を超える延床面積を兼ね備えます。そして東京都運営という公設の安心感と、大人700円、中学生250円という低価格の入園料も魅力でしょう。
ショーパフォーマンスを行っていないのが葛西臨海水族園の最大の弱点ですが、そのくらいのハンディがないと、民業圧迫になってしまいそうです。
「世界の海」が充実
さて、葛西臨海水族園の最初の見どころは、エントランスでしょう。階段を上がった場所に現れるガラスドームは美しさに目を奪われます。周囲は海を見渡せる展望スポットになっており、リゾート感満載。ここが江戸川区であることを忘れさせてくれます。
入場するとサメの水槽があった後、「世界の海」と題して、各地の魚がエリア別に分類展示されています。紅海やらカリブ海やら南シナ海やら。色鮮やかな南洋魚が豊富です。
こうした展示じたいは目新しいものではありませんが、魚の量と種類が他の水族館よりも充実している印象があり、説明板もしっかりしています。
回復した「マグロの大水槽」
そして、葛西臨海水族園の目玉となる、「マグロの大水槽」。一時期謎の病気で激減したと聞きますが、現在は平常展示に戻っています。見学用のシートがたくさんありますので、のんびり座って癒やしの時を過ごす場所でしょうか。
外に出るとペンギンの展示があります。フンボルトペンギンとフェアリーペンギンの2種で、小さなほうがフェアリーペンギン。「赤ちゃんペンギンではありません!」との掲示が親切というか、飼育員の情熱を感じます。
続いて、東京の海。小笠原・伊豆七島と、東京湾に分かれています。シンプルにまとまっていて、きれいですが、展示としてはやや平凡で、お勉強向きでしょうか。
最後に、水族園の外にも展示が広がっていて、水辺の鳥としてコウノトリが見られたりします。その先には、淡水生物館もあり、渓流を再現した展示もありました。
レストランもまずまず
レストランは、1ヵ所。建物内に「シーウィンド」というセルフサービスの施設があります。席数はホール内280席と、周辺屋外150席の計430席。水族館の施設内レストランの規模としてはかなり大きいと思います。
おすすめは、「まぐろカツカレー」ということでしたので、食べてみました。
カツの身が柔らかく、カレーによくあいます。とんかつのように、胃にどんとこないのもいいですね。850円という値段は標準的でしょうか。
公営施設の動物園・水族館のレストランとしては、メニューやオペレーションの水準は高い方だと思います。入場口と出場口をきちんと分けて、席取りを防止しているのも、巧みな工夫でした。
ガイドツアーも充実
話を展示に戻すと、全体を見渡してみて、「海の生物を知ろう」というには、とても向いている水族館に思えます。筆者は利用しませんでしたが、ガイドツアーや情報資料室も充実していて、スタッフがさまざまな質問に答えてくれるそうです。
反面、客を喜ばそうという、「驚きの展示」は見当たりません。流行りのトンネル水槽などもありませんし、デジタルや色彩を駆使したアート展示もありません。葛西臨海水族園の展示手法は、良くも悪くもシンプルです。
そうしたシンプルさが、葛西臨海水族園の魅力だと思います。エンターテインメント的な演出に頼らない、優等生的な存在感。それこそが、葛西臨海水族園の価値なのでしょう。(鎌倉淳)