「ローカル路線バス乗り継ぎ対決旅 陣取り合戦」第12弾が放送されました。太川陽介が率いるチームと河合郁人が率いるチームが、宮城県内の市町村を陣に見立てて競いました。
乗り継ぎで気になった部分を検証してみましょう。なお、以下はネタバレ100%です。あらかじめご了承ください。(文中敬称略)
市町村を取り合う
「ローカル路線バス乗り継ぎ対決旅 陣取り合戦」は、ローカル路線バスを乗り継いで「陣」に見立てた各市町村の名所・名物を体験し、その数を競うテレビ番組です。
その第12弾が2023年8月23日にテレビ東京系列で放送されました。対決したのは、ルイルイこと太川陽介が率いるチームと、A.B.C-Zの河合郁人が率いるチームです。
太川チームには、山之内すずとバイきんぐの西村瑞樹が参加。河合チームには、元フィギュアスケート日本代表の高橋成美と、ボディービルダーの横川尚隆が参加しました。
どちらのチームも使っていいのはローカル路線バスのみ。ただし、両者とも1万円までタクシーを利用できます。
スタートは宮城県仙台市の仙台駅。ゴールは仙台城です。宮城県内の35市町村を陣に見立て、1泊2日で陣取りを競います。ゴール時刻は18時までで、より多くの陣を確保したチームが勝ちです。
今回も面積の広い自治体を取ると2ポイントとなる「どデカ陣地ボーナス」が設定されました。ただし、陣の位置を確認できるのは、2日目の朝8時以降という制約が付いています。対象となるのは、大崎市、栗原市、登米市、石巻市の4市です。
水バラ ローカル路線バス乗り継ぎ対決旅 陣取り合戦 第12弾
【出演】太川陽介、山之内すず、西村瑞樹(バイきんぐ)、河合郁人(A.B.C-Z)、高橋成美、横川尚隆
【放送日】2023年8月23日(水) 18時25分~21時00分(テレビ東京系列、見逃し配信あり)
太川チームの実際ルート
まずは、両チームが実際に旅したルートをおさらいしてみましょう。時刻表上の定刻をわかる範囲で確認しました。番組ではっきり示されなかった時刻や距離、経路は、筆者による推定です。ロケは土曜日から日曜日にかけて行われたようなので、1日目が土曜ダイヤ、2日目が日曜ダイヤに依拠しています。
最初に太川チームのルートです。☆は獲得した「陣」の市町村名です。★は空振りです。
▽1日目
仙台駅09:13→09:47岩切駅前10:40→11:00多賀城駅→徒歩0.7km→末の松山(☆多賀城市)→徒歩0.7km→多賀城駅12:15→タクシー2.4km、1,130円→12:26塩釜駅前12:30→12:33塩釜神社前→鹽竈神社(☆塩竃市)→12:46塩釜神社前12:47→13:11利府駅前14:10→14:33陸前浜田駅→徒歩1.8km→馬の背(☆利府町)→徒歩3.6km→16:17松島遊覧船(★松島町)→徒歩1.8km→17:13二本椚17:23→17:44利府駅前18:28→19:07岩切駅前19:22→19:55仙台駅前
▽2日目
仙台駅前08:30→09:35みちのく公園口→徒歩0.3km→生駒農場(☆川崎町)→徒歩0.3km→みちのく公園口10:47→11:56仙台駅前12:15→12:47中野→徒歩2km→かわまちテラス閖上(☆名取市)→閖上公民館前14:02→14:20名取駅前14:30→15:06南東北病院→タクシー4.5km、1,760円→金蛇水神社(☆岩沼市)→タクシー12.5km→南仙台駅東口16:35→16:43長町駅・たいはっくる前→徒歩0.7km→長町南駅・太白区役所前17:03→17:23仙台駅→タクシー1.9km+徒歩→仙台城跡
※Googleマップのルートは概略です。以下同。
放送で明らかにされていたのは、金蛇水神社からタクシーで出発した場面までです。時刻表をたどると、南仙台駅に16時半ごろにいないと、バスを乗り継いで仙台城に18時まで着けなさそうなので、時間的には金蛇水神社からタクシーで遠くに行くことはできません。
となると、太川チームは、岩沼市の陣を得た後、さらなる市町村奪取を検討したものの、実際には南仙台駅に直行したのではないでしょうか。とまれ、最終局面の乗り継ぎはよくわかりません。
太川チームが獲得した陣は、多賀城市、塩竃市、利府町、川崎町、名取市、岩沼市の6陣でした。
河合チームの実際ルート
つづいて、河合チームの実際ルートです。
▽1日目
仙台駅09:31→10:44富谷営業所前→徒歩1.9km→いさわ屋(☆冨谷市)→富谷学校前12:31→12:45吉岡上町→徒歩0.1km→富永精肉店(☆大和町)→徒歩3.4km→万葉パーク(☆大衡村)→タクシー12.5km→16:30色麻町役場(☆色麻町)→タクシー2.9km、計5,180円→金村屋(☆加美町)→徒歩0.2km→16:53中新田西町17:57 →18:23古川駅前
▽2日目
古川駅前08:16→08:53三本木音無→徒歩1km→ひまわりの丘(☆☆大崎市)→タクシー9.9km、3,560円→10:01吉岡営業所10:40→11:28泉中央駅11:50→12:50仙台駅前13:07→13:40余方13:56→仙台駅前15:00→仙台城跡(☆仙台市)
放送されたのは、余方バス停で名取市のコミュニティバスに乗ることを検討する場面までです。実際には乗らず、仙台駅に戻ったようです。
河合チームが獲得した陣は、富谷市、大和町、大衡村、色麻町、加美町、大崎市(2陣)、仙台市の、計8陣です。6陣の太川チームを上回り、河合チームの勝利となりました。
「陣取り」は訪問しなかった陣の位置が不明なので、全面的な検証は不可能ですが、ここでは、番組で気になった場面について検証してみます。
平日ダイヤと間違わなければ
最初に太川チームの検証です。
1日目、太川チームは9時13分発の岩切駅行きバスに乗車して東へ向かいます。岩切駅が多賀城市に隣接しているからです。岩切駅から徒歩で多賀城市に入り、陣のある末の松山の位置を確認。バスで多賀城駅に至り、さらに歩いて陣を確保します。
多賀城駅からは、岩切駅に戻り利府町を目指す作戦です。ところが、多賀城駅で土休日ダイヤと平日ダイヤを間違えて、11時40分発のバスを乗り逃します。仮に、このバスに乗れていたらどうなっていたでしょうか。
▽1日目
多賀城駅前11:40→12:00岩切駅前13:32→14:08利府駅前14:10→14:33陸前浜田駅前→徒歩2km→馬の背(☆利府町)
岩切駅前から利府駅前へと乗り継げますが、利府町の陣は町外れの馬の背です。利府駅前ですぐに乗り継いで陸前浜田駅に行けるので、陣は確保できるでしょう。馬の背の到着時刻も同じです。ただ、途中で塩竃市の陣は取れていません。
つまり、多賀城駅から岩切駅に戻っていたら、「塩竃市の陣が取れない」で実際ルートと同じ結果に終わっていた可能性があります。
1,130円のタクシー代は手元に残りますので、それを使って別の展開はありえます。しかし、全体でみて、11時40分に乗り遅れて、タクシーで塩竃市に向かったことは、結果的には塩竃市の陣を得られたので、悪くなかったとみなせそうです。
松島遊覧船に間に合うには
太川チームの痛手となったのは、松島まで足を伸ばしながら、遊覧船の出航時刻が過ぎていて、空振りとなってしまったことです。
松島遊覧船の最終出航時刻は15時30分。これに間に合うには、陸前浜田駅からタクシーを使えばよかったでしょう。
▽1日目
利府駅前14:10→14:33陸前浜田駅→タクシー1.8km→馬の背(☆利府町)→タクシー3.6km→松島遊覧船(☆松島町)15:30-16:30→徒歩1.8km→二本椚17:23→17:44利府駅前18:28→19:07岩切駅前19:22→19:55仙台駅前
陸前浜田駅からタクシーで馬の背を訪問して、そのまま松島に抜ければ、時間的には15時30分に遊覧船乗り場に着くことはできそうです。その後も実際ルートに収斂します。
とはいえ、これこそ結果論で、「なぜタクシーを使わなかったのか」と責められる話でもありません。
陸前高砂ルート
結果論ついでに書くと、太川チームが当初、仙台市から多賀城市を目指すのであれば、岩切方面以外の選択肢はなかったか、という話になります。
仙台駅から多賀城方面へ行くには、陸前高砂駅方面のバスもあります。このバスは、高橋というバス停まで足を伸ばすのですが、そこは多賀城市です。つまり、仙台駅から一本で多賀城市内へ入ることもできました。
▽1日目
仙台駅前09:03→09:33高橋→徒歩0.2km→高橋三丁目09:51→10:00多賀城駅前
このように、仙台駅09時03分発の陸前高砂方面行きのバスに乗ると、高橋バス停に09時33分に到着します。近くに高橋三丁目という、多賀市のコミュニティバスの停留所があるので、それに気付けば多賀城駅に10時頃に到着できます。実際ルートより1時間早いです。
高橋バス停から多賀城方面に歩き出せば、高橋三丁目のバス停を通るので、気付くことは不可能ではないでしょう。
高砂・七ヶ浜ルート
多賀城駅に10時に着ければ、多賀城市の陣を得た後、七ヶ浜町方面のコミュニティバスにうまく乗り継げます。
七ヶ浜町の陣がアクアアリーナ付近と仮定し、陸前浜田駅からタクシーを使うと、以下のように乗り継げます。
▽1日目
仙台駅前09:03→09:33高橋→徒歩0.2km→高橋三丁目09:51→10:00多賀城駅前→末の松山(☆多賀城市)→10:30多賀城駅10:58→11:25アクアアリーナ(☆七ヶ浜町?)11:42→12:13塩釜神社入口→鹽竈神社(☆塩竃市) →塩釜神社前12:47→13:11利府駅前14:10→14:33陸前浜田駅→タクシー1.8km→馬の背(☆利府町)→タクシー3.6km→松島海岸遊覧船(☆松島町)→徒歩1.8km→二本椚17:23→17:44利府駅前18:28→19:07岩切駅前19:22→19:55仙台駅前
この場合、1日目に5陣を得て、仙台駅近辺に宿泊できます。5陣は河合チームの1日目と同じなので、互角の勝負になっているといえます。翌朝、かわさき町のみを獲得してゴールに先着すれば、仙台市の陣を得て7陣で同点に持ち込めます。
タクシー代を使っているので、岩沼市に足を伸ばすのは難しそうですが、名取市の帰趨が勝敗を決する形になるでしょうか。
村田町に向かったら
2日目、太川チームは08時30分発の便で川崎町を目指します。
始発が遅いので、もう少し早い便で他の市町を目指してもよさそうですが、候補となる名取市を目指しても、陣となるかわまちてらす閖上店の営業開始は11時。朝早く向かっても陣を得ることはできません。そう考えると、川崎町へ向かった判断は悪くなさそうです。
気になるのは、川崎町から隣接する村田町に向かわず、仙台駅に戻って名取市へ展開した点です。近くの村田町を経由して岩沼市に抜けた方が、地図上は効率的に思えます。乗り継ぎを調べると、以下のようになります。
▽2日目
仙台駅前08:30→09:35みちのく公園口→徒歩0.3km→生駒農場(☆川崎町)→みちのく公園口10:35→10:41かわさきまち→川崎役場前12:45→13:04村田中央(☆村田町?)→タクシー14.1km→金蛇水神社(☆岩沼市)→タクシー4.5km→南東北病院15:30→16:08名取駅
川崎町から村田町へバスが12時45分までありません。これを待つと、村田町の陣を取るのが遅くなります。
村田町から岩沼市にはタクシーを使うほかなく、金蛇水神社へ立ち寄ることはできますが、名取駅に着くのが順調にいって16時すぎ。名取市の陣(閖上)に寄る時間的余裕はなさそうです。となると、ゴールできたとしても2日目の獲得は3陣にとどまり、実際ルートとかわりません。
つまり、川崎町から仙台市に戻ったことは、間違いとはいえないようです。というよりも、ルイルイは、川崎町の陣(生駒農場)で、村田町方面へのバスについて聞き込みをしていたのでしょう。放送されていないだけで、村田方面を確認のうえ、無理と判断して仙台に戻ったと考えるのが自然です。
県南部を目指したら
では、最初に戻って、太川チームが初日に名取市に向かい、宮城県南部の制圧を目指したら、どうなっていたでしょうか。
仮に仙台から閖上方面を目指した場合、以下のような乗り継ぎが考えられます。実際に放送されていない陣の位置は仮定です。
▽2日目
仙台駅前09:15→09:46中野→徒歩2km→かわまちテラス閖上(☆名取市)→閖上公民館前11:32→11:50名取駅前14:30→15:06南東北病院→タクシー4.5km→金蛇水神社(☆岩沼市)→タクシー13.5km→柴田町役場(☆柴田町?)→タクシー2.7km→大河原駅(☆大河原町?)17:25→18:09遠刈田温泉(☆蔵王町?)
▽2日目
遠刈田温泉06:25→06:55村田町役場前(☆村田町?)→村田中央08:25→08:44川崎役場前→徒歩0.2km→かわさきまち09:40→09:47みちのく公園口→徒歩0.3km→生駒農場(☆川崎町)→徒歩0.3km→みちのく公園口10:47→11:56仙台駅前
名取駅からタクシーで岩沼市、柴田町を経て大河原駅に至れば、バスで遠刈田温泉を経て川崎町に出ることができます。陣の位置は仮定ですが、乗り継ぎだけを見てみれば、2日目午前中終了時に7陣を得て仙台駅に戻ることができます。
河合チームが7陣を得て仙台駅に戻ったのが12時50分ですので、状況的には太川チームがやや有利です。
とはいえ、上記の陣の位置は仮定ですし、営業時間なども考慮していません。実際に7陣を得て仙台に戻れるのかは不明で、おそらくは難しいでしょう。
河合チームの検証
河合チームに関しては、とくに検証できる部分はありません。1日目の展開やタクシーの使いどころが見事で、2日目に大崎市のどデカ陣地を得た時点で、事実上勝敗は決しました。
戦術的には、大崎市から仙台市に戻ったところでゴールしてもよいところですが、一行は最終局面で名取市へ向かいました。まだ時間が早かったこともあるでしょうが、番組を盛り上げるための配慮、あるいは演出の一種かもしれません。
結果的に名取市を取り損ねましたが、すでに勝敗が決していた段階のことであり、あまり論じても意味がないのでスルーします。
まとめてみると
まとめてみると、河合チームが富谷市方面へ初手で向かった場合、太川チームが多賀城市方面や名取市方面で、それを凌ぐルートを見つけ出すことはできませんでした。
要は、初手で富谷市方面を選択した時点で河合チームが有利だったわけです。それにくわえて、河合チームはタクシーの使いどころを間違わなかったことが勝因でしょう。
対照的に、太川チームで悔やまれるのが、タクシーの使いどころです。実際ルートに沿った乗り継ぎでも、利府町の陣(馬の背)を訪れる際にタクシーを使っていれば、松島の陣も得ることができ、1日目4陣で仙台市に戻ることができました。
それでも勝てなかった可能性が高いですが、もう少し互角の勝負に持ち込めたかもしれません。
これで通算成績は5勝5敗2分けの五分となりました。次回も楽しみです。(鎌倉淳)