2017年の九州北部豪雨で被災し不通が続くJR日田彦山線の添田~夜明間について、JR九州と沿線自治体は、BRTで復旧することで正式合意しました。これにより、同区間の鉄道路線は廃止となります。
63カ所の被害
JR日田彦山線は、2017年の九州北部豪雨で被災し、添田~夜明間で不通が続いています。複数の橋梁損傷を含む63カ所の被害が確認され、JR九州と沿線自治体による「日田彦山線復旧会議」が2018年から復旧方法について議論してきました。
復旧会議が初開催された2018年の時点では、鉄道での復旧を前提としてきました。しかし、復旧費用が約56億円と巨額であること、復旧後も大幅な赤字が見込まれることから、JR九州が2019年に姿勢を転換。鉄道による復旧の場合は年間1億6000万円の運行支援を沿線自治体に継続して求め、支援なき場合としてBRT(バス高速輸送システム)による復旧を提案しました。
専用道延伸案で合意
沿線自治体は当初はBRT案に反対したものの、JR九州の強い姿勢の前に矛を収め、最後まで抵抗したのは福岡県の東峰村だけとなりました。福岡県が仲裁に乗り出し、JR九州が当初提案したよりも専用道区間を伸ばす案を提示。東峰村全体が専用道区間に含まれるようにし、東峰村とJR九州もこれを受け入れました。
最終的に、2020年7月16日に福岡市で開かれた会合で、BRT復旧することで正式に合意。被災した鉄道をBRTで復旧するのは、九州では初めてとなります。
専用道48%
合意では、不通となっている添田~夜明間の29.2kmの全区間をBRT、つまりバスに転換します。JR九州が提案した当初案では、このうち彦山~筑前岩屋間の7.9kmを専用道として整備するというものでした。しかし、最終的な合意では、専用道を彦山~宝珠山間の14.1kmに拡大。それ以外の区間は、バスが一般道を走ります。不通区間に占める専用道の割合は48%です。
復旧費用の26億円はJR九州が負担。8月の着工をめざし、工期は約3年と見積もられました。すなわち、順調にいけば2023年にBRTの運行が開始される見通しです。JR九州が将来にわたって運行を維持します。
60年の歴史に幕
専用道区間を延伸したことにより、「バス」の強みである機動性が減衰し、東峰村の利用者の利便性は高まりません。住民の利便性を優先するなら、バスを一般道に走らせ、集落の近くに停留所を設置するべきでしょう。しかし、合意では、集落から遠い場所を走る鉄道路線を専用道にする途を選びました。
実用面から見れば、渋滞の少ない区間を専用道にする意味はないと思われますが、東峰村の顔を立てるためには必要だったのでしょう。結局、「政治決着」といえる結末になりました。
鉄道路線としての日田彦山線の添田~夜明間は復旧しないまま、1956年の同区間全通以来、60年あまりの歴史に幕を閉じることになります。(鎌倉淳)