外環道の東名高速~湾岸道路間のルート決定へ向けた検討が進んでいます。多摩川の北側を走る「東京側ルート」と、南側を走る「川崎側ルート」がありますが、川崎側で大師JCTに接続する案が有力なようです。
東名高速~湾岸道路
東京外かく環状道路(外環道)は、都心から約15km の圏域を環状に連絡する道路です。現在、大泉JCT~高谷JCT間の49.2kmが開通しており、大泉JCT~東名JCT(仮称)が建設中です。
残る区間は東名高速~湾岸道路間です。2016年に、国交省、東京都、川崎市の3者による計画検討協議会を設置し、計画の必要性や概略ルートを検討していて、2019年までに5回の会合を実施してきました。
その後、新型コロナ感染症などの社会情勢を受けて議論が停滞していましたが、2023年2月1日に、約4年ぶりに協議会を開催。今後の方針などを検討しました。
会合の結論をまとめると、「早期整備の必要性が高く、速やかに計画を具体化するべき」という点で一致。計画の基本的な方針の取りまとめに向けて、意見交換を続けることとなりました。
2つのルート案
ルート案は大きく分けて二つあります。第1案は、多摩川の北岸を通す「東京側ルート」で、昭和島JCTで首都高速に接続します。第2案は多摩川の南岸を通す「川崎側ルート」で、大師JCTで首都高速に接続します。
「川崎側ルート」は、川崎縦貫道路計画と一体化します。
川崎縦貫道路は川崎浮島JCTと東名高速を結ぶ道路計画で、川崎浮島JCT~国道15号が1期として事業着手済み。このうち川崎浮島JCT~大師JCT間が開通済みです。ただ、大師JCT~国道15号(富士見出入口)間については、採算性の問題から整備が先送りされています。
川崎市は、第2期以降の国道15号~東名高速間について、外環道としての整備を求めています。それが決まれば、第1期の大師JCT~国道15号間も整備着手となる見通しです。
第三京浜と接続
「東京側ルート」「川崎側ルート」ともに、詳細なルートは未決定です。ただ、いずれのルートでも、第三京浜との接続地点にジャンクションを設けます。
「東京側」の場合は玉川ICを活用します。「川崎側」の場合は玉川料金所付近で接続します。
「東京側」で玉川ICに接続する場合は、周辺に野毛大塚古墳など埋蔵文化財包蔵地が点在しています。民家も密集していますので、支障物件数は数百件に上ると見積もられています。公有地としては玉川野毛町公園があり、隣接する公務員等々力宿舎跡地とあわせて、道路用地として活用できそうです。
「川崎側」で玉川料金所に接続する場合は、隣接してアマゾンの大型物流センターがあります。民有地のようですが、地権者が単一企業という点で、用地取得がしやすいかもしれません。取得できれば、料金所スペースとあわせて、インターチェンジの用地に充てられるでしょう。
いずにしても、外環道延伸により、第三京浜の東京側が他の高速道路ネットワークとつながることになり、環状8号の混雑が緩和されそうです。
中間ICも検討
第三京浜と首都高速の中間付近に、中間ICの設置が検討されています。具体的な位置は全く未定です。
「第三京浜と首都高速の中間付近」ということだけで予想すれば、「東京側」の場合は、久が原周辺で国道1号と接続する形などが考えられるでしょう。「川崎側」の場合は、平間付近でガス橋と接続する形などが考えられそうです。
ただ、「東京側」の場合、久が原付近にインターチェンジの用地を確保するのは難しそうです。「川崎側」も、用地の話だけなら等々力緑地か丸子橋公園付近のほうが確保しやすそうです。
下図の淡いオレンジが東京側ICの想定エリア、淡い緑が川崎側ICの想定エリアです。いずれも可能性の話であって、どこにインターができるかは全く未定です。
ルート予想
全体ルートを筆者が勝手に予想をしてみると、以下のようになるでしょう。
まず、「東京側ルート」(第1案)は、東名JCTから野川に沿って地下を進み、二子玉川の地下を経て第三京浜玉川ICに接続。そこから田園調布、池上、大森付近を経て昭和島に至ると思われます。途中、久が原付近で国道1号に接続するインターができるかもしれません。
「川崎側ルート」(第2案)は、東名JCTから野川に沿って地下を進み、二子玉川から多摩川に沿って第三京浜玉川料金所に接続。さらに多摩川沿いに進んで、国道15号に至ると思われます。途中、平間付近にインターができるかもしれません。
「川崎側ルート」の場合、川崎縦貫道計画ですでに川崎駅付近に富士見出入口ができるのは決まっているので、そこにもインターができます。
「東京側」の場合は、大深度地下を活用するとみられます。「川崎側」も大深度地下を活用するとみられますが、多摩川に沿った高架道路とする選択肢もありそうです。
「川崎側」が有力か
「東京側」「川崎側」のどちらになるかは、今後の議論に委ねられます。
筆者の感想としては、「東京側」は、大深度とはいえ、二子玉川、田園調布といった土地の地下を抜けるのは、なかなか大変ではないか、という気がします。また、多摩川北岸は古墳など埋蔵文化財が多いので、その点でも配慮が必要になります。
さらに、昭和島JCTで接続するには用地買収が必要で、一部は東京モノレールの車両基地にかかるかもしれません。その場合、東京モノレールの車両基地の代替地を確保しなければなりませんが、至難の業に思えます。
「川崎側」は、ほぼ多摩川沿いに進むので、その地下空間または地上空間を活用できるのであれば、「東京側」より住民の反対は小さいでしょう。大師JCTは周辺の用地も確保されているので、用地買収のハードルは低いです。
となると、どうみても「川崎側」が有利で、外環道の東名以南は、多摩川南岸を通る案(第2案)が有力でしょう。協議会の資料を読んでも「川崎側という結論ありき」の記述に感じられますので、当局もその方針なのでしょう。
東名JCTから東へ進み、第三京浜と、平間付近、川崎駅付近(国道2号との交点)にそれぞれインターチェンジができ、大師JCTで首都高速横羽線と、川崎浮島JCTで首都高速湾岸線・東京湾アクアラインと接続する、という形になりそうです。
開通はいつになる?
完成すれば、東名JCTから川崎浮島JCTまで20分程度で結ばれるでしょう。とくに関越道から湾岸へのアクセスが大きく改善され、羽田空港へは大泉JCTから28分になります。
計画検討協議会では、今後、計画の基本的な方針の取りまとめに必要となる検討を進める予定です。
気になる完成時期は未定です。都市計画決定まで5年、事業期間20年と見積もっても、四半世紀はかかりそう。2050年頃に開通すれば順調なほうでしょう。
心配なのは、川崎浮島JCTです。現在でも、アクアラインとの合流渋滞がひどく、湾岸線の羽田付近にまで影響を及ぼしています。これに外環道が加われば、合流渋滞がさらにひどくなるかもしれません。
アクアライン渋滞の影響が外環道にまで及んでしまっては、せっかく整備したのに所要時間は山手トンネル経由と変わらない、などということも起こりえます。JCTの改良などの手立てが必要になるかもしれません。(鎌倉淳)