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国鉄民営化40年、有識者会議の論点。鉄道ネットワークをどこまで維持すべきか

役割と機能と財源と

国土交通省が、国家的な観点から維持すべき「基幹的鉄道ネットワーク」について議論を始めました。新幹線網以外にどのような鉄道網が必要なのか、確保すべき輸送機能や維持費用の負担方法も検討します。国鉄分割民営化40年を前に、鉄道ネットワークのあり方を改めて考えます。

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新幹線以外の鉄道網を検討

国土交通省は2026年10月29日、交通政策審議会の「持続可能な鉄道ネットワークの在り方に関する検討小委員会」の初会合を開きました。

2027年に国鉄分割民営化から40年を迎えることを踏まえ、これまでの鉄道政策を振り返りながら、今後の鉄道ネットワークのあり方を検討するものです。

国交省が公表した事務局資料では、人口減少や少子高齢化、道路交通の発達、物件費・人件費の上昇などにより、鉄道を取り巻く環境が国鉄改革時から大きく変化したと指摘しています。

そのうえで、今後も国家的な観点から維持すべき「基幹的鉄道ネットワーク」とはどんな路線なのか、その範囲を検討し、維持するための方策を議論するのが、今回の小委員会の位置づけです。

資料では、最初の論点として、「国が整備している新幹線網以外に、どのような鉄道ネットワークが必要と考えられるのか」を提示しました。

特急いなほ

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特急・貨物路線の位置づけ

2023年に定められた地域公共交通法に基づく基本方針では、国とJR各社が「基幹的鉄道ネットワーク」を形成すると確認した区間を、当面、再構築協議会の対象としないことを定めています。

具体的には、特急列車などが拠点都市間を結び、相当程度の利用がある区間や、全国的な貨物輸送で重要な役割を果たす区間、災害時や有事に貨物列車が走行する可能性が高い区間などです。

これが「基幹的鉄道ネットワーク」の基本的な判断基準といえますが、今回の小委員会では、航空機や高速バス、自家用車などの利便性が向上するなかで、国家的に維持すべき鉄道ネットワークとは何かを明確にするというわけです。

鉄道ネットワークあり方
画像:第1回持続可能な鉄道ネットワークの在り方に関する検討小委員会資料

 
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維持すべき輸送機能も議論

基幹的鉄道ネットワークの範囲に加え、次の論点として掲げられたのが、どのような輸送機能を確保すべきかという点です。

国交省の資料では、鉄道に期待される役割として、大量・安定輸送による国民生活や社会経済活動の支援、他の交通手段では代替困難な基幹的輸送機能の確保などを挙げています。

旅客輸送では、全国的なネットワークを通じて広域移動を支え、二地域居住やインバウンドの地方誘客、観光振興などにつなげる役割を想定しています。

貨物輸送では、全国的な鉄道ネットワークを活用し、脱炭素化や輸送の担い手不足、安全保障などの課題に対応する役割を挙げています。

2026年4月に公表された「鉄道事業者と地域の協働による地域モビリティの刷新に関する検討会(第2期)」の提言では、維持すべき基幹的ネットワークについて、サービス水準もあわせて検討する必要があるとしていました。

この提言を踏まえ、今回の小委員会でも、基幹的ネットワークに必要な輸送機能を議論するわけです。具体的には、高速化や高頻度化などが挙げられるでしょう。

また、国鉄分割民営化40年という節目を小委員会設置の背景に据え、資料でも「全国的なネットワーク」を強調していることから、JR各社間の連携も議題にのぼりそうです。

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維持費用は誰が負担するか

最後の論点が、鉄道ネットワークを維持する費用の負担方法です。

国鉄分割民営化後、JR各社の間では収益力に大きな格差が生じています。赤字路線に対する内部補助や、鉄道の機能向上に向けた投資の限界も指摘されています。

前述の地域モビリティ検討会の提言では、維持すべき基幹的ネットワークを持続的に支えるため、安定的な財源の確保が必要との指摘がありました。

今回の小委員会では、民間事業者の経営自主性を確保しながら、鉄道網を維持する方策を検討します。必要な費用についても、「誰がどのように負担していくべきか」を論点に掲げました。

したがって、鉄道に対する公的資金の投入について、新たな枠組みが議論される可能性があります。

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国の支援で高速化も?

ざっくりまとめると、今回の小委員会の大きな目的は、新幹線以外の鉄道網のうち、どのような路線を基幹的ネットワークと位置づけるかを整理し、必要な輸送機能と、それを実現するための方策や財源を検討することです。

興味深いのは、国交省が公表した資料に、「在来幹線鉄道高速化実績一覧」を掲載していることです。

資料では、「サービス改善の取組の限界」という項目に、この一覧を掲載しています。つまり、既存のスキームでは高速化に限界があるものの、今後は財源を確保し、基幹的ネットワークにおいて、さらなる高速化を目指すことを示唆しているとみることもできるでしょう。

基幹的ネットワークに位置づけられた路線については、たとえ赤字であっても、その維持や高速化・高機能化に対し、国が支援していく方向につながるかもしれません。

鉄道ネットワークあり方
画像:第1回持続可能な鉄道ネットワークの在り方に関する検討小委員会資料

 
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中速新幹線も?

基幹的ネットワークの対象は、「全国新幹線整備法に基づき、国が整備している新幹線網以外」とされました。つまり、整備新幹線とは別に、必要な鉄道ネットワークを検討するということです。

一方、基本計画路線に並行する在来線は、検討対象から明確に除外されていません。そのため、基幹的ネットワークの対象となる可能性もあるでしょう。

すなわち、基本計画路線に並行する在来線で、高速化や高機能化を推進する方策が含まれる可能性がある、というわけです。いわゆる「中速新幹線」を後押しする枠組みができるかもしれません。

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基幹的ネットワーク以外の路線は?

気になるのが、基幹的ネットワークに位置づけられないローカル線についてです。

国交省の資料では、基幹的ネットワークに含まれない鉄道路線について、「期待される役割」を論点としました。厳しい表現をすれば、「どう役に立つのか」を話し合うという、身も蓋もない論点設定です。

資料では、ローカル鉄道について、「他の交通手段では代替困難な社会経済的な価値が認められる場合」に、「維持・機能向上を図っていく」という考え方を示しました。

裏を返せば、他の交通手段で代替可能な路線については、国として鉄道維持を支援しない方向性を示唆しているとも読めます。

鉄道ネットワークあり方
画像:第1回持続可能な鉄道ネットワークの在り方に関する検討小委員会資料

 
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大臣指針の見直しにも

2001年、JR東日本、JR東海、JR西日本の本州3社がJR会社法の適用対象から外れるにあたり、国交省は同法の改正法に基づく大臣指針を公表しました。

指針では、国鉄改革後の「輸送需要の動向その他の新たな事情の変化」を踏まえ、「現に営業する路線の適切な維持に努めるものとする」と定めています。

この指針は、JR本州3社などがローカル線を廃止する際の歯止めの役割を果たしていて、沿線自治体としてはローカル線維持をJRに求める錦の御旗となっています。

上述の通り、今回の小委員会では、他の交通手段で代替可能な路線について、国として鉄道維持を支援しない方向性を示すことになるかもしれません。

しかし、JRにローカル線廃止の大義名分を与えるような制度変更になるのであれば、大臣指針の実質的な見直しとも受け止められます。その場合、ローカル線を抱える地方自治体から強い反発を招く可能性があります。

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民営化時の考え方を見直し

現在、利用者の少ないローカル線について、各地で鉄道事業の再構築や、バスなどへの転換を含めた議論が始まっています。

資料では、JR各社や並行在来線各社に対し、「旧国鉄が築いた全国的な鉄道ネットワーク」の維持について、中心的な役割を果たしていくことを期待するとしました。一方で、「その役割は社会経済情勢の変化に伴ってどのように変化しているのか検証が必要」とも指摘しています。

つまり、人口減少や経営環境の変化に応じて、JR各社などが鉄道網の維持に果たす役割も変わり得るという考え方をにじませています。国鉄分割民営化当時の考え方を見直すものともいえるでしょう。

国鉄分割民営化から、まもなく40年。道路網の発達、人口減少、国力低下など、さまざまな環境が変わり、当時の見通しを転換しなければならない時期にさしかかったことは確かでしょう。

それをどう議論し、国民が納得する形でまとめることができるのかが、問われることになりそうです。(鎌倉淳)

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