最近、ガーラ湯沢(GALA湯沢)の混雑がすさまじい、と聞きました。週末はレンタルスキーを借りるのに1時間待ち、メインのリフトも20分待ち。ゲレンデに出ても人だらけ。そんな状況を耳にすると、スキー人気は復活しているのか、と思い、なぜか自分までスキーに行きたくなりました。
大混雑の週末は避け、火曜日に訪れてみました。
「レジャー白書」によると、スキー人口はピーク時に比べると3割程度にまで落ち込んでいます。ピークの1993年には1800万人を越えていましたが、直近のボトムの2007年には600人を割り込みました。しかし、その後3年間は回復していましたし、スノーボーダーの人口も増えています。スキーとスノーボードをあわせた人口は1100万人程度で、これは1988年の1200万人とそれほど変わりません。つまり、スキー、スノボをあわせた「スキー・スノボ人口」は、まだ十分な数がいますし、底打ちの兆しも見せているようです。1993年のピークが「バブル」で、異常だっただけでしょう。
それでも、各地でスキー場の閉鎖は続いています。ガーラの繁盛ぶりを見るに付け、スキー場の「人気格差」は広がっていることがうかがえます。
今回使ってみて実感しましたが、ガーラ湯沢は、とても便利なスキー場です。利用したことのある方にはいまさらの話ですが、新幹線直結で、改札を出たら十数歩で受け付けカウンターがあり、さらに数十歩でレンタルスキーやウエアを借りられます。そして数十歩歩いて更衣室で着替え、数十歩歩けばゴンドラです。そこを降りたら、もうゲレンデなのです。
この便利さは、帰りの時に、より実感します。着替えて、レンタルをぽい、と返せば、あとは新幹線に乗るだけなのです。おまけに、夕方の新幹線は20分おきぐらいに出ていて、それほど待ちません。乗ってしまえば寝ているうちに1時間強で東京駅まで連れて行ってくれます。疲れている帰宅時に、これはとてもありがたく感じます。
ガーラはゲレンデのコースが今ひとつ、と聞いていましたが、今回使った限りでは、十分な水準です。初中級者向けのコースが多いので、上級者には不満かもしれませんが、スキー利用者の多くは中級者までなので、これで十分でしょう(と、自称中級の筆者は思います)。コース取りにも無駄がありません。
ただ、ガーラが繁盛しているのは、便利さだけが理由ではないようです。
ガーラはJR運営のメリットを活かして、JR駅で割引きっぷや自社関連のツアーを販売しています。数年前からは、旅行会社「びゅう」でのツアーの値段を下げてきて、平日なら、東京から往復の新幹線とリフト券がついて6000円台から利用できます。JR本体でも割引きっぷを販売していて、こちらは往復の新幹線とリフト券が付いて11000円程度。当日でも自販機で購入でき、列車変更が自由など利便性が高くなっています。「思い立ったらすぐガーラ」に、手頃な値段で行くことができます。デフレに対応した価格設定といえるでしょう。
また、設備が全体として、1人でも利用しやすくなっている、というのもガーラの特徴です。リフト待ちには「1人乗車用」の優先レーンがありますし、食堂には「1人用、2人用席」まで設置されています。こういう気配りがあると、「1人でもいいんだ」と利用者は思います。上記のきっぷの手頃さと相まって、自分の予定に合わせて1人でスキーに来るにも便利なのです。
最近は、1人で行動する人を「ヒトリスト」と表現します。スキー・スノボではヒトリストが増えていますし、これからも増えるでしょう。それは、非婚者が増えていく、ということもありますし、結婚しても、家族がスキー・スノボに行かない場合に、バブル世代の父親が1人で出かけていく、ということも多いようです。いままでは「1人でスキーなんて」という先入観がありましたが、ガーラのように「お一人様にも優しいスキー場」があれば、1人で出かける人は増えるでしょう。そもそも、スキーは個人スポーツですから、1人でも楽しいのです。
こうした「便利な施設」「デフレに対応した価格」「お一人様に優しい環境」が、ガーラが支持されている理由だと思われます。新幹線直結の便利さは、他のスキー場にはマネができませんが、それ以外は対応可能です。とくに「お一人様に優しい」は、これからのスキー場のキーワードになりそうで、他のスキー場でも参考になるでしょう。
また、今回のガーラでは、外国人スキー客をたくさん目にしました。ここに、日本のスキー場の光明があるともいえます。手頃な価格で、設備が整っていて、雪が豊富な日本のスキー場は魅力があり、外国人もたくさん呼び寄せることができるのです。とくに、東アジアでは、日本以外に洗練されたスキー場はほとんどありません。海外のスキーヤーに、日本のスキー場の魅力を上手に発信することができれば、日本のスキー場の将来は、案外明るいのではないでしょうか。