主要旅行会社の取扱状況の11月実績速報がまとまりました。コロナ第3波の予兆があった時期ですが、GoToトラベルの追い風で各社とも業績回復。JALパックは前年比90%を超えました。
国内旅行は6割まで回復
観光庁が発表した2020年11月の旅行業者の旅行取扱状況速報によりますと、国内主要旅行会社の総取扱額は約1988億円で、対前年同月比44.5%となりました。依然として厳しい状況が続いていますが、GoToトラベル事業の追い風を受けて、新型コロナウイルス感染症拡大後、最高を記録しました。
11月の内訳は、国内旅行総取扱額が約1,932億円で対前年同月比74.2%。海外旅行が約45億円で同2.8%、外国人旅行(訪日旅行)が約10億円で同4.3%です。国内旅行に限れば、前年比74%にまで戻っています。
11月といえば、「GoToトラベル事業」により国内旅行が盛り上がりつつも、新型コロナウイルス感染症第3波の足音が聞こえてきた時期です。大阪府や北海道で急速に感染者数が増え始め、11月25日には西村経済再生担当大臣が「この3週間が勝負」として、感染対策を短期間で集中的に行うと呼びかけました。
とはいえ、11月時点では政府がGoTo推進姿勢を維持していたため、国内旅行の取扱額は堅調に推移。一方で、出入国規制がやや緩んだとはいえ、海外旅行と外国人旅行は壊滅的な状況が続きました。
主要旅行会社の2020年11月の取扱額を見てみましょう。
会社名 | 海外旅行 | 外国人旅行 | 国内旅行 | 合計 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
取扱額 | 前年比 | 取扱額 | 前年比 | 取扱額 | 前年比 | 取扱額 | 前年比 | |
JTB | 1,489 | 3.1 | 395 | 4.1 | 64,412 | 71.9 | 66,296 | 45.1 |
HIS | 346 | 1.2 | 24 | 1.0 | 5,696 | 128.3 | 6,067 | 17.1 |
KNT-CT | 100 | 0.7 | 53 | 1.5 | 22,548 | 76.9 | 22,705 | 48.0 |
日本旅行 | 238 | 2.2 | 232 | 4.6 | 21,526 | 77.0 | 21,997 | 50.1 |
阪急交通社 | 305 | 1.7 | 0 | 0.0 | 20,512 | 136.7 | 20,818 | 62.6 |
JALパック | 0 | — | 0.3 | 10.3 | 14,433 | 117.0 | 14,433 | 91.2 |
ANAセールス | 78 | 4.0 | 3 | 2.5 | 10,338 | 70.7 | 10,420 | 62.3 |
東武トップツアーズ | 72 | 2.2 | 243 | 20.1 | 4,649 | 44.4 | 4,965 | 33.0 |
JR東海ツアーズ | 2 | 1.9 | 0.9 | 0.5 | 6,219 | 77.3 | 6,222 | 74.4 |
名鉄観光サービス | 18 | 0.9 | 9 | 3.2 | 4,143 | 53.5 | 4,171 | 41.5 |
農協観光 | 3 | 0.3 | 0.6 | 0.5 | 1,601 | 20.4 | 1,605 | 17.6 |
ビッグホリデー | 0 | - | 0 | - | 1,893 | 55.6 | 1,893 | 51.1 |
日新航空サービス | 180 | 4.7 | 0 | - | 214 | 46.6 | 395 | 9.1 |
びゅうトラベルサービス | 0 | 0.1 | 4 | 2.0 | 2,396 | 62.7 | 2,401 | 58.0 |
読売旅行 | 2 | 0.5 | 0 | - | 3,033 | 86.5 | 3,035 | 75.7 |
合計 | 4,524 | 2.8 | 1,075 | 4.3 | 193,244 | 74.2 | 198,843 | 44.5 |
出典:観光庁「主要旅行業者の旅行取扱状況速報」。上位企業のみ抜粋。
読売旅行に「鉄印」効果?
国内・海外・外国人合計の対前年同月比でみた場合、大手旅行会社で好調だったのはJALパックの91.2%。海外旅行や外国人旅行はほぼ扱いがありませんが、国内旅行が前年比117%と好調。国内旅行に限れば、前年同月よりも取扱額が上回ったわけです。
つづいて読売旅行の75.7%。同社はバスツアーが主力ですが、大ヒットした「鉄印帳」の販売元で、「鉄印」を集めるツアーも実施しています。「鉄印帳」がどの程度業績に貢献しているのか不明ですが、新型コロナでバスツアーに向かい風が吹くなかで、貴重な成長分野になっていることでしょう。
JR東海ツアーズは74.4%で、引き続き堅調。同社は新型コロナ拡大後、もっとも回復の早い旅行会社で、その勢いは続いています。
大手は5割程度の回復
国内旅行に限れば、阪急交通社の前年比136.7%が目を引きます。同社はもともと海外旅行の扱い比率が高かったのですが、国内旅行に軸足を移して急回復。全体でも前年比62.6%と健闘しました。HISも国内旅行は128.3%と伸びていますが、主力の海外旅行の不振が続き、全体で前年比17.1%と深刻な数字です。
JTB、KNT、日本旅行の大手3社は、いずれも国内旅行が70%台、全体で50%前後の回復となりました。最悪期に比べればマシですが、厳しい局面に変わりありません。航空系ではANAセールスが国内70.7%、全体で62.3%と悪くありませんが、JALパックに比べると水をあけられています。
「GoToトラベル」の追い風は11月までで、12月に入ると新型コロナ第3波の逆風が強まります。そのため12月の取扱額は弱含みと予想され、11月のこの数字が、旅行会社にとって2020年後半のピークになりそうです。