米坂線、廃止も含め議論。今泉~坂町間の復旧費用86億円、自治体と協議へ

単独で復旧しづらい

JR米坂線の今泉~坂町間について、JR東日本は、沿線の自治体と路線の存廃を含む協議を求める方針を明らかにしました。

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復旧に5年、86億円

JR米坂線は、米沢~坂町間90.7kmを結ぶローカル線です。2022年8月の大雨で鉄橋が崩落するなど大きな被害を受け、今泉~坂町間67.7kmで不通が続いています。

JR東日本は、この区間の復旧について約86億円という試算を初めて示し、沿線自治体に対し、路線の存廃を含む協議を求める方針を明らかにしました。

JR東日本によると、米坂線の被災箇所は、線路上の土砂流入や盛土の流出、橋梁損壊など計112箇所。復旧には5年の工期と約86億円の費用がかかる見通しです。

米坂線

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単独で復旧は判断しづらい

2023年4月25日に記者会見したJR新潟支社長は、「(JRが)単独で復旧することは、非常に判断のしづらい額なので、新潟県、山形県と沿線自治体に説明をして、関係者を含めて相談をしていきたい」と述べ、費用負担を含めて沿線自治体と協議する方針を示しました。

また、「赤字であると言うことを議論の出発点にすることは適切ではない」としながらも、「復旧のみを議論の対象とするだけでなく、さまざまな可能性が検討されるべき」と述べ、路線の存廃を含めた「あり方」の議論になることを示唆しました。

ただ、「私どもはここの区間の地域交通の役割を放棄することは考えていない」と付け加え、仮にバス転換をした場合でも、JR東日本が交通機関として維持することを強調しました。

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年間13億円の赤字

米坂線の輸送密度は、新型コロナ禍の影響の小さい2019年度で、今泉~小国間が298、小国~坂町間が169です。コロナの影響を受けた2021年度は226と124に落ち込んでいます。

今泉~坂町間の赤字額は、2019年度で12億8000万円。2021年度は13億9400万円に達しています。

利用者がきわめて少なく、年間10億円以上の赤字を生んできたわけです。こうした赤字ローカル線の復旧のために、86億円もの巨費を投じることに関して、JRとして慎重な姿勢を示したと言えます。

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高速道路も整備中

米坂線は、かつては仙台と山形を結ぶ急行列車が走るなど、準幹線として機能した時代もありました。しかし、現在は高速バスがその役割を果たしています。

並行して新潟山形南部連絡道路という高速道路の整備も進められていて、県境付近の「小国道路」や「鷹ノ巣道路」などは、すでに事業化されています。

こうした状況で、米坂線復旧を目指す必要性を問われると、自治体としても明快な答えを出すのは難しそうです。

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早くても2029年ごろ

JR新潟支社長の一連の発言は、鉄道復旧を一概に否定する内容ではありませんでした。ただ、86億円というお金の重みから、にわかに復旧に手を付けるわけにもいかない、という躊躇が感じられます。

復旧するにしろ5年の工期がかかるわけで、協議の時間を含めると、米坂線が全線運転再開をするのは、早くても2029年頃になりそうです。復旧せずに、バス転換となる可能性もありそうです。(鎌倉淳)

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