JRバス「東京駅~東京港フェリーターミナル線」に乗ってみた。鶴見線を彷彿と

都会のローカル線

東京駅から東京ビッグサイトを経て東京港フェリーターミナルに至る路線バスが昨年12月に運行を開始しました。高速バス車両が都区内完結で走るという、異色の路線です。

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高速道路を通らない「高速バス」

東京駅~東京港フェリーターミナルの路線バスを運行しているのは、JRバス関東です。2021年12月20日に路線開設し、1日13往復を運行しています。

東京駅の発着は八重洲南口高速バスターミナル。そこから国際展示場駅、東京ビッグサイトを経て東京港フェリーターミナルに至ります。途中のバス停は2つだけで、東京駅とビックサイト、東京港を直結します。

要は、JRバス関東が、都区内の近距離区間に高速バス車両で参入したわけで、「高速道路を通らない高速バス」といえます。新型コロナで高速バスの利用者が減少するなか、近距離路線にリソースを転用したのでしょう。開業ブームが落ち着いた2月の平日に乗ってみました。

東京港バス

筆者一人を乗せて

東京港フェリーターミナル行きのバスは、東京駅八重洲南口ターミナル8番線から出発します。11時10分発のバス車両は水戸ナンバーの日野セレガ。東京・水戸間の高速バス「みと号」などで使われてきた車両のようです。

乗車したのは筆者一人。東京駅を出発すると、鍛冶橋通りで八丁堀に至り、新大橋通に入って築地、さらに環二通りへと進みます。運河を渡って勝ちどき、月島に向かうあたりは、ハイデッカーの最前列からの眺めは良く、観光バスで遠足をしている気分になります。

東京港バス

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途中乗降もなく

豊洲大橋を渡り、有明に。国際展示場駅に立ち寄るものの、乗降はありません。

東京港バス

少し走って東京ビッグサイトのバスターミナルに入りますが、ここでももちろん乗降はなし。

東京港バス

そこから東京港臨港道路に入ると、港湾エリア。埠頭は広々として、東京にいる気がしません。終点の東京港フェリーターミナルの小さなバス停に到着しました。

東京港バス

最初から最後まで、乗客は筆者一人。筆者を降ろすとしばらくして、バスの運転手もフェリーターミナルの中に消えていきました。折り返し時間は35分もあるので、一休みするのでしょう。

東京港バス

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フェリーターミナルは閑散

東京港フェリーターミナルに発着する旅客船は、オーシャン東九フェリー徳島経由の北九州行きだけです。1日1往復で、朝着、夜発のスケジュールのため、昼間のフェリーターミナルは閑散としています。

東京港フェリーターミナル

窓口は閉まっていますし、コンビニなどの店舗もまったくありません。昼食を摂ろうにもカフェもなく、わずかにカップラーメンの自動販売機が一台あるだけです。

人気のない交通ターミナルというのは、それはそれで面白いのですが、まるですることがありません。周囲には倉庫のような施設しかなく、折り返し便をただ30分あまりを待つだけです。

フェリーターミナルを出てみると、遠くお台場の観覧車が眺められます。観覧車をこの角度から見ることは、ふだんありませんので、なんとなく新鮮です。ビッグサイトからバスで5分ほどなのに、ずいぶんと遠くに来た気がします。

東京港フェリーターミナル

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国際展示場で降車

折り返し便の出発3分前に停留所に戻ると、バス運転手も運転席に座っていて、ドアが開いています。帰りの便には、筆者のほか、用務客とおぼしき人が1名乗っていました。実用で乗っている人をみると、ほっとします。

帰りは東京駅まで行かず、国際展示場駅で降りてみました。東京港から国際展示場までは10分かかりません。もう一人の客もここで降り、バスは乗客ゼロとなって、東京駅へ向かっていきました。

所要時間は、東京駅から東京ビッグサイトまで29分、東京港フェリーターミナルまで35分です。東京港フェリーターミナルから国際展示場駅までは10分です。

東京港バス

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1日1便のフェリーターミナルに

この路線の開設は、驚きを以て迎えられました。理由は大きく2つあり、一つには、東京都区内の湾岸部を走るだけなのに、高速バス車両を用いて、高速バスターミナルから発着することです。途中、高速道路を走らないものの、東京駅と湾岸部を直結する「高速バス」のような扱いで運行されます。

驚かされたもう一つの理由は、1日1便しか旅客船が発着しない東京港フェリーターミナルに、1日13往復のバス全便が乗り入れることです。東京港発着のフェリーはオーシャン東九フェリーの徳島経由北九州便のみで、利用するのはほとんどがトラックです。バスで東京港を訪れるフェリー利用客はわずかでしょう。

イベント客輸送が目的?

フェリーターミナル周辺への通勤客も多くは見込めません。そんな場所に毎時1本程度のバス路線を開設して、どれほどの利用者がいるのだろうか、と疑問に思った人は多いでしょう。乗ってみた感想としても、実需をあてにして東京港までの運行しているようには思えません。

このバスに役割があるとすれば、東京駅と東京ビッグサイトを、高速バス車両で直結することでしょう。新幹線で上京したイベント客を快適に会場まで運ぶことが目的と推察されます。あるいは、有明周辺の住民や通勤客が東京駅に向かうのには便利かもしれません。

いずれにせよ、東京港まで足を伸ばす必要はないわけですが、全便が東京港発着となっている理由は定かではありません。ひょっとすると、バスの待機場所の問題などの事情があるのかもしれません。

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都会のローカルバス

旅行者の視点でみた場合、このバス路線の魅力は、東京駅発着とは思えないローカル感です。旅客の多くを東京ビッグサイトのイベント客に依存するとみられることから、イベント時以外はガラガラで、およそ日本の中心ターミナルを発着する交通機関とは思えない閑散状況となっています。

思い起こさせるのは、JRの鶴見線です。鶴見線は朝夕の通勤時間帯は混雑するものの、日中や土休日はガラガラです。工業地帯の雰囲気は、通い慣れていない人からみれば非日常的で、「都会のローカル線」とも呼ばれています。

なぞらえれば、東京港フェリーターミナルへのバスは、「都会のローカルバス」と表現できるかもしれません。利用者の少ない時間帯はほとんど誰も乗っておらず、多くの人にとって非日常的な港湾風景を味わえる点で、鶴見線を彷彿とさせます。

「旅をするのに、遠出する必要はない」ことを、改めて認識させてくれるバス路線ではないでしょうか。(鎌倉淳)

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