2019年が幕を開けました。新しい元号のもと、新時代を迎える年です。そこで、これからの時代に開業しそうな鉄道新線計画をまとめてみました。具体的な開業予定が示されている、実現可能性の高い鉄道新線を紹介していきましょう。新駅の駅名には仮称を含みます。
おおさか東線
まず、2019年春には、JR西日本のおおさか東線が全線開業します。大阪府の放出駅から久宝寺駅を経て新大阪に至る路線で、2008年に放出~久宝寺間9.2kmが開業済み。残る久宝寺~新大阪間11.1kmが2019年3月16日に開業予定です。全長20.3kmの路線が完成します。
ゆいレール
続いて、2019年夏には、ゆいレールの首里~てだこ浦西間4.1kmが開業予定。当初の開業予定は2019年春でしたが、用地取得の難航や工事の不調などの影響で、開業が遅れています。
2018年9月に全ての軌道桁架設を終え、工事は最終段階にさしかかっています。ゆいレールでは、開業時期を「早くて2019年夏頃」としています。
相鉄・JR直通線
2019年度下期には、相鉄・JR直通線が開業を予定しています。相模鉄道西谷駅からJR東海道貨物線横浜羽沢駅付近(羽沢横浜国大駅)までの区間に連絡線を建設し、JR横須賀線・湘南新宿ラインと乗り入れる計画です。神奈川東部方面線の一部です。
公表されている運行計画では、相鉄・JR直通線の開業時に、海老名~新宿間の運転本数は1日46本で、ピーク時毎時4本、オフピーク時毎時2~3本とされています。10両編成の列車が二俣川~新宿間を約44分間で結びます。新宿から先は、埼京線に乗り入れる見通しです。
共同通信によると、開業日は2019年12月を軸に調整しているとのことです。
横浜シーサイドライン
2019年度には、横浜シーサイドラインの金沢八景駅延伸工事も完了します。横浜シーサイドラインは、新杉田~金沢八景を結ぶ新交通システムですが、これまでの金沢八景駅は京急と離れていました。
そこで、金沢八景駅東口の土地区画整理事業にあわせて、シーサイドラインを150m延伸し、京急との乗り換え利便性を改善します。
富山ライトレール
富山市では、富山地鉄の市内軌道線(セントラム)と富山ライトレール富山港線(ポートラム)の接続事業が行われています。ライトレールがJR富山駅の高架下に乗り入れて、市内軌道線と直通運転するもので、2019年度に完成します。
完成後、両線は富山地鉄が一元的に運営し、運賃も全区間均一となります。将来的には富山地鉄を存続会社として、富山ライトレールとの経営統合も検討されています。
北大阪急行線
2020年度には、北大阪急行線の延伸工事が完成する予定です。千里中央~箕面萱野間の2.5kmで、途中に箕面船場阪大前駅が設けられます。
運行本数は、ピーク時・オフピーク時とも、北大阪急行線の「全数乗り入れ」を想定しています。延伸区間には70円程度の加算運賃が設定されます。想定運賃は江坂~箕面萱野間が230円、梅田~箕面萱野間が470円などとなっています。
宇都宮ライトレール
2021年度には、宇都宮ライトレール(宇都宮LRT)の開業が予定されています。栃木県宇都宮市と芳賀町が主体となって整備を進めている路線で、全体整備区間として、宇都宮市中心部西側の桜通り十文字交差点~JR宇都宮駅~宇都宮テクノポリス~芳賀・高根沢工業団地までの約18kmが計画されています。
このうちJR宇都宮駅東口~本田技研北門の約14.6kmが建設中で、2022年3月に開業予定。自動車道路との併用区間が約9.4km、鉄道車両のみが走行する専用区間が約5.1kmで、停留所は合計19箇所です。「LRT」として全線新設される路線としては、日本初です。
北陸新幹線
2022年度には、二つの整備新幹線が開業します。北陸新幹線の金沢~敦賀間と、九州新幹線長崎ルート(長崎新幹線)の武雄温泉~長崎間です。
北陸新幹線の金沢~敦賀間は125km。途中、小松、加賀温泉、芦原温泉、福井、南越の5駅が設けられます。
その先、敦賀~新大阪間もルートが決定し、東小浜付近、京都、松井山手付近、新大阪に駅ができます。敦賀~新大阪間は143km。敦賀以南の着工時期や開業時期は未定です。
長崎新幹線
長崎新幹線は、武雄温泉~長崎間66.0kmが建設中です。途中、嬉野温泉、新大村、諫早の3駅が設置されます。
長崎新幹線では、新鳥栖~武雄温泉間をフリーゲージトレインで結ぶ構想でしたが、車両の開発が間に合わず暗礁に乗り上げています。そのため、新幹線開業時には、武雄温泉駅で博多とを結ぶ在来線特急と乗り継ぐリレー方式になります。
新鳥栖~武雄温泉間はフル規格で作るのか、ミニ新幹線にするのかなど、結論は出ておらず、着工の見通しは付いていません。
北陸新幹線金沢~敦賀間と、長崎新幹線の武雄温泉~長崎間は2022年度の開業が予定されており、どちらも2023年3月の開業になりそうです。
相鉄・東急新横浜線
2022年度には、相鉄・東急新横浜線(相鉄・東急直通線)の開業も予定されています。相模鉄道西谷駅から羽沢横浜国大、新横浜を経て日吉に至る路線です。相鉄・JR直通線と同じく、神奈川東部方面線の一部です。
開業予定時期は2022年度下期とされていて、北陸・長崎両新幹線と同じ2023年3月になりそうです。
公表されている運行計画では、相鉄方面からの東急線への直通列車を、1日102~138本運行します。ピーク時は相鉄線から毎時10本程度、さらに毎時4本程度の新横浜駅始発の列車を運転し、合計14本の列車うち、東横線直通が4本程度、目黒線直通が10本程度となるようです。
日中時間帯は、相鉄から東急への直通が毎時4本程度、新横浜発が毎時2本程度運転されます。二俣川~目黒間を約38分で結びます。
東海道支線地下化
正確には新線ではありませんが、2023年春には、JR西日本の東海道支線地下化も実現します。大阪市北区豊崎~福島区福島までの2.7kmが地下化され、大阪駅北地区(うめきた)の地下に北梅田駅を新設、おおさか東線などが乗り入れるとみられています。
関空特急「はるか」や紀勢線特急「くろしお」も北梅田を経由します。「はるか」「くろしお」が梅田エリアに停車することになり、キタと大阪府南部・和歌山方面が直結されます。
福岡地下鉄七隈線
同じく2022年度には、福岡市営地下鉄七隈線の博多延伸も実現しそうです。天神南駅から、キャナルシティ博多付近を通り博多駅に至る1.4kmです。天神南から国体道路を進み、祇園町西交差点ではかた駅前通りに入ります。途中、キャナルシティ博多付近に中間駅が設けられます。
開業予定時期は当初2020年度とされていましたが、道路陥没事故などの影響で遅れており、2022年度に延期されました。2023年3月頃の開業が有力でしょう。
全ての事業が予定通り進めば、2023年春は、北陸、長崎両新幹線に、相鉄・東急新横浜線とJR北梅田駅が開業、福岡地下鉄七隈線は延伸と、開業ラッシュに湧きそうです。
大阪メトロ中央線
2024年度には、建設が本決まりになったばかりの、大阪メトロ中央線の夢洲延伸が実現しそうです。コスモスクエア~夢洲間の約3kmが開業します。
2025年の大阪万博決定を受け、そのアクセス鉄道として整備されます。そのため、大阪万博が開催される2025年5月3日より前に開業することが求められています。2024年度末にあたる、2025年春の開業が有力でしょう。
この区間は「北港テクノポート線」の一部として計画されています。下図は同線の全線計画図ですが、建設が決定しているのはコスモスクエア~夢洲間のみ。夢洲~新桜島間については未定ですが、統合型リゾート(IR)の夢洲誘致が実現すれば、JR桜島線が延伸する可能性があります。
ひたちなか海浜鉄道湊線
同じく2024年度に延伸が予定されているのが、ひたちなか海浜鉄道湊線です。一時は廃止も議論されたローカル私鉄ですが、第三セクター化されてから経営が持ち直し、阿字ヶ浦~国営ひたち海浜公園の延伸が計画されています。
延伸距離は約3.1km。阿字ケ浦駅から北上し、海浜公園の南側外周に沿って進み、公園中央口を超えて公園西口付近を終点とします。途中駅は、当初、阿字ヶ浦の土地区画整理地区と、海浜公園中央口付近の2駅が設けられる計画でしたが、事業費の兼ね合いで1駅となる見込みです。
広島電鉄駅前大橋ルート
広島電鉄の駅前大橋ルートも、2024年度頃の開業予定です。広島電鉄の広島駅電停が駅ビル内に入り、そこから高架線で駅前大橋へと伸びる新線が建設されます。
その先、稲荷町交差点を経て比治山町交差点までが、駅前大橋ルート開業後の新線区間です。新線開業後は、広島駅~駅前大橋線~稲荷町~紙屋町方面が「本線」になります。
また、稲荷町~比治山下が「比治山線」(皆実線)となります。稲荷町~的場町~比治山下は「循環線」に組み込まれます。広島駅~猿猴橋町~的場町間は廃止となります。
開業時期は平成30年代なかば(2023-24年頃)とされていますが、広島電鉄の椋田社長は、2018年11月の会見で「遅くとも2025年にはできる」「当初の予定よりも若干遅れ気味に進んでいる」と述べていて、2024年~2025年頃の開業になりそうです。
鹿児島市電
市電つながりでは、鹿児島市電もウォータフロント地区への延伸計画があります。
ウォーターフロント地区には、鹿児島県が複合施設を整備する構想があり、その整備方針が固まり次第、路面電車の延伸経路も決定すると見通しです。
ルートも開業時期も未定ですが、順調にいけば2020年代半ばには開業しそうです。
中央リニア新幹線
2027年には、次世代鉄道計画で最大のトピックス、中央リニア新幹線開業が控えます。
品川~名古屋間285.6km。途中、神奈川県駅(橋本駅)、山梨県駅(甲府市大津町)、長野県駅(飯田市上郷飯沼)、岐阜県駅(美乃坂本駅)の4駅が設けられます。開業後は、品川~名古屋間が約40分で結ばれます。
その先、名古屋~大阪間に関しては、2045年の開業を予定していましたが、財政投融資の活用により最大8年前倒しされます。つまり、早ければ2037年に開業します。
羽田空港アクセス線
2028年度には、JR東日本が計画している大型路線、羽田空港アクセス線の開業が視野に入ります。
東海道貨物線の一部を旅客化しつつ、新線も建設し、羽田空港から東京駅、上野駅、渋谷駅、新宿駅、新木場駅などに直通列車を運行する構想です。
計画では、羽田空港の国内線第1ターミナルと第2ターミナルの間に「羽田空港新駅」を設け、東京貨物ターミナルまで約6kmの新線を建設します。そこから田町駅への「東山手ルート」、大井町駅への「西山手ルート」、東京テレポート駅への「臨海部ルート」の3ルートを建設します。将来的には国際線ターミナルへの延伸も検討します。
開業予定時期は未定ですが、完成までは最短10年程度を見込んでいて、最速で2028年頃に一部区間が開業する可能性があります。
アストラムライン
アストラムライン(広島高速交通)の延伸工事も、「平成40年代初頭」が開業予定とされていて、早ければ2028年頃に開業しそうです。
アストラムラインは、広島市中心部の本通から、大町、長楽寺を経て広域公園前駅に至る新交通システムです。延伸計画は、終点の広域公園前駅から、五月が丘団地、石内東開発地を経由し、己斐中央線の全線を通り、西広島駅に接続するものです。延伸区間の路線延長は約7.1kmで、「新交通西風新都線」と名付けられました。
6駅が新設され、広域公園前~石内東開発地までに3駅、その先2駅が導入空間となる己斐中央線に設置されます。残る1駅は西広島駅です。
さらに平和大通りを経て本通に戻る環状線構想もありますが、現時点で事業化が決定しているのは、西広島までです。
大阪モノレール
2029年度には、大阪モノレールの延伸も実現します。大阪モノレールは、大阪空港~門真市間を結ぶ路線ですが、さらに門真市~瓜生堂間の9.0kmの延伸が計画されています。
途中、門真南、鴻池新田、荒本の3駅を設置します。軌道はおおむね中央環状線に沿って建設されますが、荒本駅付近のみ東側にせり出し、東大阪市道上を走り、東大阪市役所に隣接する形で駅を設けます。終点瓜生堂の北には、中央環状線の未利用地を使って車庫を設置します。
門真南駅では地下鉄鶴見緑地線と接続。鴻池新田駅ではJR学研都市線と接続。荒本駅では近鉄けいはんな線と接続。瓜生堂駅では近鉄奈良線と接続します。瓜生堂に近鉄の駅はありませんが、モノレール延伸にあわせて設置される予定です。
多摩都市モノレール
モノレール関連では、東京の多摩都市モノレールの箱根ヶ崎延伸も実現可能性が高そうです。上北台~箱根ヶ崎間の約6.7kmを延伸します。
導入空間となる新青梅街道の拡幅が進んでおり、2021年度までに工事が完了する予定です。完成すればモノレール用地がすべて確保されることになり、モノレール着工の条件が整います。2022年度以降に着工したとして、早ければ2020年代後半に、完成する可能性があります。
多摩都市モノレールには、下図のように多数の構想路線がありますが、現時点で開業の見通しが立っているといえるのは、上北台~箱根ヶ崎間のみです。
このほか、多摩センター~町田間についても、都道47号線を中心に導入空間道路の確保が進んでいて、全体の半分の約7kmで導入空間が確保されています。ただ、残り区間では道路計画がない部分もあり、モノレール事業化へはもう少し時間がかかりそうです。
北海道新幹線
2030年度には、北海道新幹線・新函館北斗~札幌間が開業します。途中、新八雲、長万部、倶知安、新小樽の4駅が設けられます。開業の予定は2031年春で、札幌から鹿児島中央まで、日本列島を貫く新幹線が完成します。
その先、札幌~旭川間についても「基本計画路線」と位置づけられていますが、建設のメドは立っていません。
札幌まで開業した場合の所要時間は、函館~札幌間が約1時間13分、青森~札幌間が約2時間18分、東京~札幌間が約5時間1分になると試算されています。JR東日本では、最高時速360kmの次世代新幹線「ALFA-X」を開発中で、導入されれば大幅な時間短縮ができるでしょう。
JR・南海なにわ筋線
2031年春には、JR・南海なにわ筋線も開業予定です。大阪市の北梅田駅からJR難波駅、南海新今宮駅へ至る路線で、JRと南海が共同で営業します。2017年に事業化が決定し、開業予定は2031年春とされています。
ルートは、2023年春に開業予定の北梅田駅から、なにわ筋に沿って南下し、中央大通の南で2方面に分岐、JR難波駅と南海新今宮駅にそれぞれ接続します。
途中駅として、中之島、西本町、新難波の3駅が設けられます。このうち、新難波駅は南海のみが使用します。中之島駅では京阪中之島駅と連絡し、南海新難波駅で地下鉄、南海、近鉄の各駅と連絡します。
阪急新大阪連絡線
JR・南海なにわ筋線開業後、阪急も北梅田に乗り入れる新線を建設する予定です。北梅田から十三を経て新大阪に至る路線です。
開業予定は明らかではありませんが、なにわ筋線の開業後とすれば、2030年代半ば以降になりそうです。
阪急では伊丹空港への路線建設も計画していますが、まだ事業化を検討している段階です。
横浜地下鉄ブルーライン
時期未定ですが、横浜市営地下鉄ブルーラインも2030年頃に開業しそうです。あざみ野から先、新百合ヶ丘まで約6kmを延伸する計画があり、現在、事業化に向けた調査が行われています。
あざみ野~新百合ヶ丘間に4つの駅が設置される予定です。横浜市青葉区に2駅と川崎市麻生区に2駅ずつです。
途中駅の位置は公表されていませんが、横浜市側は、あざみ野ガーデンズ付近、すすき野付近に設置されそうです。川崎市側の途中駅は複数案がありますが、最短経路をたどるなら王禅寺周辺が有力でしょうか。終点、新百合ヶ丘駅では小田急線と接続します。
神奈川新聞2019年1月1日付によると、1月下旬に横浜・川崎両市から延伸案の概要が公表される予定です。
ブルーライン延伸は、2014年度から横浜市が事業化に向けて本格的な調査をしてきました。事業化が決まったとして、建設には10年程度を要しますので、開業予定時期は早くても2020年代後半、実際には2030年頃になりそうです
東京メトロ豊住線
同じく時期は未定ですが、2030年代には、東京メトロ豊住線(東京8号線)も開業する可能性があります。豊住線は有楽町線の支線で、豊洲駅から分岐して、半蔵門線の住吉駅に至ります。
路線長は豊洲~住吉間約4.8kmで、途中3駅が設けられます。東陽町駅と、豊洲~東陽町間、東陽町~住吉間の概ね中間地点に各1駅を想定しています。
現時点では本決まりの路線ではありませんが、東京都が事業の枠組みを2018年度中を目指して決める考えを示しており、実現可能性は高いでしょう。とはいえ、早くても開業は2030年頃になるとみられます。
ほかにもある!
このほかにも、開業見通しがはっきりしていないだけで、実現可能性の高い鉄道新線はまだあります。
都営大江戸線の大泉学園町延伸は、導入空間の道路整備が進んでおり、完了すればいずれ実現するでしょう。東急多摩川線の京急蒲田延伸(新空港線)についても、東京都が事業化へ向けて検討を進めています。
東京メトロ南北線の品川延伸、つくばエクスプレスの東京駅延伸と臨海地下鉄計画なども、計画の練度が高まれば事業化の有力候補でしょう。
相鉄いずみ野線の慶應SFC延伸についても、相鉄の都心直通プロジェクトが一段落したら、先に進むかもしれません。
大阪では、夢洲へのIR誘致が実現すれば、JR桜島線の夢洲延伸や、京阪中之島線の九条延伸も事業化される可能性がありそうです。
人口減少時代に向け、鉄道には厳しい環境が続きますが、需要が高いエリアでは、これからも新線建設が進められそうです。(鎌倉淳)