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「高輪ゲートウェイ」で、駅名案公募の意味はあったのか。130位を選ぶとは

選定理由もよくわからず

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山手線の「品川新駅(仮称)」の正式名称が「高輪ゲートウェイ」と決まりました。JR東日本が駅名案を公募し、6万4000件を超える応募がありましたが、選ばれたのは、わずか36票を獲得しただけの名称。こんな公募に意味はあったのでしょうか。

応募第1位は「高輪」

JR東日本が山手線・品川~田町間に建設中の新駅名称について、公募を開始したのは2018年6月5日~30日。1カ月足らずの間に64,052件の応募があり、13,228種類の駅名案が寄せられました。

応募案の投票結果の第1位は「高輪」、第2位は「芝浦」、第3位は「芝浜」。しかし、選ばれたのは、130位の「高輪ゲートウェイ」で、この名称で応募したのは36人だったそうです。

高輪ゲートウェイ駅
画像:JR東日本プレスリリース

駅名の選定理由は?

なぜ、わずか36人が応募しただけの名称が選ばれたのか。JR東日本は、駅名の選定理由について次のように説明しています。

「この地域は、古来より街道が通じ江戸の玄関口として賑わいをみせた地であり、明治時代には地域をつなぐ鉄道が開通した由緒あるエリアという歴史的背景を持っています。

新しい街は、世界中から先進的な企業と人材が集う国際交流拠点の形成を目指しており、新駅はこの地域の歴史を受け継ぎ、今後も交流拠点としての機能を担うことになります。

新しい駅が、過去と未来、日本と世界、そして多くの人々をつなぐ結節点として、街全体の発展に寄与するよう選定しました。」

「歴史を受け継ぎ、未来を担う」

正直なところ、なぜ「高輪ゲートウェイ」なのか、この選定理由を読んでもよくわかりません。

NHK2018年12月4日放送によりますと、JR東日本の深澤祐二社長は記者会見で「古くから高輪と呼ばれた歴史的背景がある場所で、歴史を受け継ぎ、未来を担う駅名」と説明したそうです。

また、毎日新聞12月4日付によりますと、「リニア中央新幹線が発着する品川駅や羽田空港に近い立地で、今後も東京の交通の重要拠点になると見込まれ、玄関口を意味する『ゲートウェイ』を盛り込んだ駅名になった」としています。

要するに「歴史がある高輪という地名を入れたい」「東京の重要拠点」であるから、「高輪ゲートウェイ」になった、ということのようです。

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再開発エリアのコンセプト

投票第1位の「高輪」を採用するのは理解できるとして、山手線と京浜東北線しか停まらない駅が、「東京の交通の重要拠点」になるのかは、よくわかりません。

JR東日本では、品川再開発エリアのコンセプトを「グローバル ゲートウェイ 品川」としていますので、コンセプトをそのまま駅名に入れただけのようにも感じられます。要は、再開発エリアのコンセプトと駅名を揃えたにすぎないわけです。

公募結果の上位は?

では、公募結果には、どういう駅名があったのでしょうか。上位を見てみます。

1位 高輪 8,398件
2位 芝浦 4,265件
3位 芝浜 3,497件
4位 新品川 2,422件
4位 泉岳寺 2,422件
6位 新高輪 1,275件
7位 港南 1,224件
8位 高輪泉岳寺 1,009件
9位 JR泉岳寺 749件
10位 品田 635件

いうまでもなく、公募上位の駅から単純に選ばれるわけではありません。投票が多くても、そのままでは駅名にしづらい名称はあります。

たとえば、「高輪」だけだと品川駅高輪口と間違われやすそうですし、近くには高輪台(都営浅草線)という似た名称の駅名もあります。

「新品川」は新幹線駅と混同しそうですし、「泉岳寺」は名称使用をめぐり訴訟があったので採用しづらいでしょう。「港南」は、京浜東北・根岸線という同系統上に「港南台」という駅があるので使いにくい。「品田」は品川と読みが似ています。

ですので、1位の「高輪」に何か付け足して新駅名にする、という考え方は理解できます。問題は、付け足すのが「ゲートウェイ」で良かったのか、という点です。

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他の公募事例は?

ここで、最近の他の駅名公募の事例を見てみましょう。

2018年3月~4月に行われた、JR嵯峨野線の京都・丹波口間の新駅の駅名公募では、1位が「梅小路」、2位が「梅小路公園」、3位が「梅小路公園前」などと、「梅小路」にまつわる駅名が6位まで続き、7位に「京都西」が入りました。

JR西日本では、この公募結果を受けて、「梅小路京都西」と命名しました。上位に入った「梅小路」と、7位の「京都西」をあわせた形です。

2017年1月~2月に行われた、JR京都線の摂津富田・茨木駅間の新駅の駅名公募では、1位が「安威川」、2位が「JR総持寺」、3位が「東茨木」、4位が「摂津三島」、5位が「摂津総持寺」と続きました。JR西日本では、最終的に2位の「JR総持寺」を採用しました。

2017年12月~2018年1月に行われた、北大阪急行の延伸区間における新駅の駅名公募では、中間駅の1位が「箕面船場」、2位が「新船場」、3位が「みのお船場」、4位が「阪大箕面」、5位が「船場」、6位が「箕面阪大前」でした。

最終的には「箕面船場阪大前駅」となりました。1位の「箕面船場」と6位の「箕面阪大前」をあわせた形です。

終点駅の1位は「新箕面」、2位が「かやの中央」、3位が「箕面中央」、4位が「箕面かやの」、5位が「萱野中央」、6位が「箕面ゆずる」となっていました。最終的には「箕面萱野駅」となり、4位の駅名を漢字にした形です。

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投票上位を尊重するか

上記の4駅の事例では、いずれも上位に入った駅名の要素をつなぎ合わせたり、そのまま新駅名としています。

これらの公募は自治体が実施し、結果を伝えて鉄道事業者が最終決定する、という形でした。お役所らしい妥協的な駅名が多いですが、投票上位の要素を尊重している点は共通しています。

これに対し、高輪ゲートウェイ駅では、上位に入っていない「ゲートウェイ」を持ち出して、新駅名にしている点が特徴的です。見方によっては、投票順位にとらわれず思い切ったネーミングをしたと評価することも可能でしょう。品川新駅(仮称)の駅名公募は、JR東日本が単独で実施、決定しており、お役所的な決定プロセスを経ていないからでしょうか。

高輪ゲートウェイ駅
画像:JR東日本プレスリリース

検討プロセスは?

JR東日本社内でどういう検討プロセスがあったのかはわかりません。ただ、発表の記者会見に深澤祐二社長自らが臨んだことから、最高幹部の判断による名称決定であることは推測できます。

熊谷俊人千葉市長は自身のツイッターで、高輪ゲートウェイ駅の名称について、「なんでこんな名前にしちゃったんでしょうね。JRのような大手企業であれば色々な社内チェックがあって、良くも悪くも思い切ったものは止められるものですが」と、社内体制に疑問を投げかけました。

千葉市ではJR京葉線に幕張新駅(仮称)が建設中で、その名称決定にクギを指した形です。

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後味の悪さ

結局のところ、「グローバル ゲートウェイ」という再開発の基本コンセプトがあり、それに沿った駅名で、なおかつ高輪という高級住宅地のイメージを取り込みたい、というJR東日本の思惑が、そのまま駅名になったと感じてしまいます。

新駅の名称が、万人が納得するような素晴らしいものなら、応募順位など関係ないでしょう。問題は、130位という低位で、賛否両論ある駅名を選んでしまったことです。選定過程も選定理由もはっきりせず、こんな判断をしてしまうのなら、なぜ「公募」という形を取ったのか、疑問に思えてなりません。

いい駅名案があったら採用したい、という姿勢はあったでしょうから、「出来レース」とまでは思いません。とはいえ、投票結果を尊重する気がないのなら、最初からJR東日本が独自で決めればよかったのにと、後味の悪さを感じてしまったのは筆者だけでしょうか。(鎌倉淳)


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