島根県の温泉地・玉造温泉で、湯量不足の懸念が出てきているそうです。2つある泉源の一つが老朽化して供給量が減る一方、日帰り温泉の入浴客が増えるなどして、湯の需要が増えているからだとか。そのため、新たな泉源を求める声が上がり始めたそうです。
奈良時代の開湯
玉造温泉は奈良時代開湯といわれ、『出雲国風土記』抄にも記載がある古湯です。江戸時代には松江藩藩主の静養地にもなっていました。松江観光協会のホームページでは、「日本最古の美肌温泉」として玉造温泉をPRしています。
現在の玉造温泉の湯は、「第1泉源」と「第2泉源」の2つがあり、第1は1995年、第2は2006年に開発されました。いずれも松江市が管理し、温泉旅館13軒と保養施設2軒に湯を供給しています。
画像:松江観光協会
第1泉源の湯量が減少
山陰中央新報2016年2月11日付によりますと、第1泉源は長年の使用で、湯をくみ上げるパイプ内に温泉成分が付着して湯が通りにくくなるなど、設備の老朽化が進んでいるとのこと。そのため供給量が減少し、以前は1日あたり260トンの湯量だったのが、現在は165トンになっているそうです。
第2泉源は1日400トンを供給し健在です。しかし、現状で第2泉源で供給を停止した場合、第1泉源の湯量だけでは温泉施設への給湯しきれません。そのため、第2泉源の設備のメンテナンスが十分にできない状態になっているそうです。また、第2泉源にトラブルが起き長時間停止となった場合、温泉客に影響がでる恐れもあるとのことです。
高速道路開通と出雲大社遷宮で観光客増
玉造温泉の観光客数は増加傾向です。リーマンショック後には入り込み客数が激減し破綻する旅館もありましたが、2013年の松江自動車道の全線開通と出雲大社の大遷宮を機に観光客が大幅に増加しました。
さらに、温泉街が「美肌」や「パワースポット」効果をPRしたところ注目を浴び、観光客増に拍車がかかりました。松江観光協会玉造温泉支部によると、2006年に85万人だった入り込み客数は、2013年以降、年間100万人以上を維持し、2015年は106万人が訪れたそうです。なかでも増えているのが日帰り温泉の利用客で、結果として昼間の温泉の稼働率が上がり、湯の需要が高まっているとのことです。
お湯はまだまだ出る?
こうした需要増を背景に、二つの泉源だけでは心許ないという声が強くなってきたようです。「人気が出すぎてお湯が足りない」ということのようで、2月12日には、松江観光協会と玉造温泉給湯組合、玉造温泉旅館協同組合が、新泉源の開発整備を求める陳情書を松浦正敬・松江市長に提出しました。
奈良時代から続いている古湯だというのに、20年ほど前に開発された泉源を使っている、というのも初めて知りましたが、それがたった20年で使用に支障をきたしている、ということにも驚きます。
逆にいえば、千年にわたって維持されてきた古湯だからこそ、掘ればまた豊富なお湯が出てくる、ということなのでしょうか。それもまた神秘ですね。