東京都葛飾区が旧職員寮を外国人バックパッカー向けホステルに改装。1泊3,000円で泊まれるドミトリーはクール!

東京都葛飾区は来春、柴又にバックパッカー向け宿泊施設を開業します。名称は「柴又BASE」。これは、葛飾区の元職員寮を活用するものです。外国人観光客の急増に伴って不足する宿泊施設を、老朽化した公共施設で補おうという施策、とってもクールではないでしょうか。

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11年前に廃止された寮をリノベ

この計画は、葛飾区の旧柴又職員寮を、ドミトリーを備えたバックパッカー向けのホステル(宿泊施設)にリノベーションするというもの。共有のイベントスペースも設置し、地域住民も参加できる映画上映会などを開催したりもします。地元商店街と連携したイベントも企画し、外国人観光客と地域住民の交流を推進するのが目的とのことです。

また、柴又といえば人気映画「男はつらいよ」の舞台として知られます。外国人にも寅さん映画ロケ地の魅力を紹介し、各地への旅の流れを作ることも狙います。

千葉県のR・project(アールプロジェクト)という会社が旧柴又職員寮を借り、「柴又BASE」という名称の宿泊施設に改修します。この寮は11年前に廃止され、現在は倉庫として使われています。

地上4階建てで延べ床面積は約1,680平方メートル。ファミリー旅行者向けの個室やドミトリー(相部屋)の客室を50室ほど用意。料金は素泊まりで1泊2,000~3,000円程度とする予定です。

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総務省のリノベーションコンペの提案

このプロジェクト、実は、総務省の取り組みによるものです。総務省は「公共施設オープン・リノベーション マッチングコンペティション」というコンペを実施。自治体の所有する公共施設を対象にリノベーションの提案を募集し、優れた提案について総務省の事業としてリノベーションの補助を行います。

2015年9月30日にこのコンペの採択作品8つを発表。「柴又BASE」はその一つです。この採択8作品は総務省の実証調査事業という位置付けで、同省が提案自治体と委託契約を結び事業化を進めていきます。

総務省の事業予算は総額1億7000万円で、自治体が提案する事業の予算は、想定する総務省の事業費と同額まで自治体が独自負担できるという条件。「柴又BASE」は総事業費約5,000万円で、そのうち3割の約1,300万円ほどを総務省が負担します。アールプロジェクトは今年度中に着工し、2015年4月ごろの完成をめざしています。

提案資料に掲載されている建物の写真を見ると、公共施設らしく躯体はまだまだ丈夫そうです。内部は古びていて、畳の部屋がいい感じに昭和感を醸しています。また、共用ルームのテレビが古すぎて素晴らしいですね。昭和50年代のテレビではないでしょうか。

柴又ベース柴又ベース柴又ベース柴又ベース柴又ベース(写真はいずれも「公共施設再生ナビ」より)

これをどうリノベーションしてゲストハウスに仕上げるのか、興味ありますね。

日本にはバックパッカー施設が絶対的に足りない

さて、提案資料では、プロジェクトの基本的な考え方として、円安とインバウンド計画、LCCの拡大、アジアの中間層成長とビザ緩和により、バジェットトラベル(格安旅行)が今後長期的に増加するとしています。バジェットトラベルをする旅行者とは、バックパッカーのことです。

そのうえで、バックパッカー旅行者のスタイルを以下のように解説し、バジェットホテルの必要性を訴えています。

今回の構想は外国人バックパッカーを誘致し、旧柴又職員寮を起点に地域を広く観光してもらうことが大前提となります。バックパッカーは元々、旅の目的を宿泊施設に持たず、地域の見どころ、食、人との出会いを楽しみに旅行をします。一般的に好奇心が高い客層で、 ブランド化された観光地ではなく「隠れた観光スポット」に興味を持ちます。

バックパッカー旅行は「貧乏旅行」というイメージもありますが、実際は長期の滞在でその国を体験する旅行者で、異文化コミュニケーションや滞在期間中の経済効果において非常に重要な観光客層です。

1泊3000円前後で泊まれ、 ドミトリー形式の客室や共有スペースにおいて他の旅行者とコミュニケーションが取れる施設。日本にはバックパッカー施設が絶対的に足りずに、ビジネスホテルの高騰などの問題が生じており、訪日観光客が増加する際の足かせになることが懸念されている。成田空港から1時間以内で来ることができ、 日本の古き良き時代の情緒が残る柴又は、訪日観光においてポテンシャルがある地域だといえます。(提案資料より)

柴又という抜群の立地

いやあ、まったく同感です。日本にはバックパッカー施設が絶対的に足りません。昔に比べればかなり増えましたが、それでもまだまだ少ないと思います。古い公務員寮を改装しても高級ホテルにはなりづらいですが、バックパッカーのドミトリーなら十分です。

柴又という立地も抜群です。京成電鉄で成田空港へ低価格のアクセスが可能で、下町の観光地に近い。バックパッカー旅行者が拠点にするにはふさわしい場所だと思います。スカイライナー以外の京成電車も、バックパッカーなら使いこなせるでしょう。

全国には、まだまだ余っている公共施設がいっぱいあるのではないかと思います。こういう活用の仕方をしてほしいものです。(鎌倉淳)

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