仙台地下鉄南北線、富谷市延伸は実現するか。「採算性に見通し」というけれど

BRTも検討

仙台市営地下鉄南北線の富谷市延伸の事業化検討調査が発表されました。採算性に関して一定の見通しが立ったとしています。内容を見てみましょう。

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泉中央~明石台

宮城県富谷市は、仙台市の北方に隣接する人口約5万人の都市です。軌道系交通機関はなく、仙台市営地下鉄南北線を泉中央駅から延伸する計画を検討していて、その新たな事業化調査の結果が公表されました。

富谷市が公表した報告書によると、延伸計画区間は泉中央~明石台間の約3kmで、全線を単線で整備する計画です。過去の調査では、A、B、Cの3ルートが検討されてきました。Aルートは中間駅1駅で、B、Cルートは中間駅1駅と2駅の案があります。

泉中央駅を出て、最初の中間駅候補地(B、Cルートのみ)は、将監小学校付近です。二つ目の中間駅候補地は明石南付近です。終点の明石台駅は、明石台のマクドナルド付近です。

延伸区間のほとんどは仙台市内で、明石台付近のみが富谷市域です。

仙台地下鉄南北線冨谷市延伸計画
画像:「令和4年度 富谷市 新たな都市交通システムの事業化検討調査の概要について」

 
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採算性に見通し

概算事業費は3ルートとも大差なく、中間駅1駅の場合が約350~360億円。中間駅2駅の場合は約440億~450億円です。

仙台地下鉄冨谷延伸事業費
「令和4年度 富谷市 新たな都市交通システムの事業化検討調査の概要について」

運行本数は毎時4本と仮定します。運賃は仙台地下鉄の同一運賃体系としますが、延伸区間は初乗り相当の210円を加算します。加算運賃を設定した場合で、延伸区間で1日14,000人が利用すると見込んでいます。

こうした前提で採算性を試算したところ、PFI方式で中間1駅(事業費354億円)の場合、開業後21~26年で累積収支が黒字化するという結果となりました。中間2駅(事業費451億円)の場合は、26~33年の黒字転換が可能という結果です。採算性に関しては一定の見通しが立ったことになります。

仙台地下鉄冨谷延伸採算性
「令和4年度 富谷市 新たな都市交通システムの事業化検討調査の概要について」

 
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地下鉄またはガイドウェイ・トランジット

富谷市は2019年度に策定した「都市・地域総合交通戦略」の基本計画において、泉中央~明石台間に地下鉄またはガイドウエイ・トランジット(専用高架部を持つバス)を整備することを、長期目標として位置付けています。

冨谷市ガイドウェイトランジット
画像:「富谷市都市・地域総合交通戦略(基本計画)」

今回の報告書では、地下鉄整備に関して「事業の実施可能性が概ね把握された」とし、今後は実施するかどうかの判断を行うための検討段階にステップアップする必要があるとしています。

一方で、 ガイドウェイ・トランジットの整備については調査が進んでいません。このため、富谷市では、2023年度に、ガイドウェイ・トランジットの一環としてBRT (バス高速輸送システム)に関して検討を行います。

最終的には、地下鉄とBRTを比較評価したうえで、同市の基幹公共交通軸の方向性を決める方針です。

仙台市営地下鉄N1000系

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仙台市は静観

いずれにしろ、泉中央~明石台間の大半は仙台市域です。地下鉄の場合は仙台市営でもあり、事業化には仙台市の協力が不可欠ですが、これまでのところ、仙台市に前向きな姿勢はみられません。

郡和子・仙台市長は、地下鉄延伸について「課題がある」旨の発言をしていて、積極的に建設を推進する様子はなく、静観を決め込んでいます。

また、鉄道を整備する場合、交通政策審議会の答申に盛り込まれることも要件となっています。しかし、仙台市地下鉄延伸は、まだ盛り込まれていません。

こうしたことから、富谷市の調査結果にかかわらず、地下鉄延伸や専用高架部を有すBRTがにわかに実現する見通しは立っていません。(鎌倉淳)

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