大阪/神戸と奄美群島、沖縄本島を結ぶマルエーフェリーの阪神航路「琉球エクスプレス」が、2017年10月9日で運休します。すでに、同社が運航する東京航路は2014年に休止されており、これで本州と沖縄を結ぶ旅客航路が全廃となります。
神戸~那覇を2泊3日で
マルエーフェリーの阪神航路は、神戸・六甲アイランドから、大阪・南港に寄り、奄美大島、徳之島、沖永良部島、与論島を経て、沖縄・那覇新港へ2泊3日かけて結んでいます。
航路の総距離は約1,300kmで、6,266トンの「琉球エクスプレス」が2週間で3往復しています。標準ダイヤでは、神戸発の下り便の所要時間が42時間30分、那覇発の上り便が42時間です。
少子高齢化とLCC台頭で
この阪神航路について、マルエーフェリーは、10月9日那覇着の便を最後に運航を休止すると発表しました。理由として「離島住民の少子高齢化や格安航空会社(LCC)の新規参入等により乗船客が減少」しており、「旅客需要が将来的に見込めないこと、航路の収支改善を早急に図らなければならないこと」などを挙げています。
マルエーフェリーは、かつては東京航路も運航していましたが、2014年12月に休止しています。阪神航路の休止により、同社の本州~奄美・沖縄航路は全廃となります。他社でも本州から奄美、沖縄への旅客航路は運航しておらず、今後、奄美、沖縄エリアへフェリーで渡るには、鹿児島航路を利用するほかなくなります。
琉球海運や有村運輸も
マルエーフェリーによりますと、同社の前身である大島運輸が阪神・奄美航路を開設したのは1972年4月。翌月の沖縄復帰を受け、1973年に那覇まで路線を延ばしました。
航路開設当時は、与論島ブームや沖縄海洋博覧会によって賑わいました。1990年代までは、沖縄への航空券が非常に高額だったこともあり、フェリーは庶民の重要な移動手段でした。大島運輸のほかにも、関西汽船や琉球海運、有村運輸といった船会社が、本州と奄美、沖縄への航路で競っていました。
しかし、1990年代後半から始まった航空運賃の自由化で、沖縄への航空運賃が劇的に下がり、フェリーで奄美、沖縄を訪れる人が激減します。関西汽船は1998年に沖縄航路から撤退し、琉球海運は2006年に旅客事業から撤退、有村運輸は2008年に解散と、次々と姿を消していきました。
年間7700人の利用者
この間、マルエーフェリー(当時大島運輸)は2003年に、阪神航路を旅客定員800人の「ニューあかつき」から、旅客定員240人の「琉球エクスプレス」にダウンサイズ。長距離航路にもかかわらず、レストランもない船内施設にして、運航を継続してきました。
とどめとなったのが、2012年の国内LCC運航開始です。数千円で東京や大阪から沖縄を移動できる時代になり、フェリーで奄美、沖縄へ行く人のほうが珍しくなりました。そして、ついに本州~奄美、沖縄航路が全滅することになります。
ちなみに、2016年度の琉球エクスプレスの利用者は、わずか約7,700人だったそうです。
最終運航は、那覇発が10月5日、神戸発が10月7日です。10月9日那覇着が最後です。大阪/神戸-那覇間の2等旅客運賃は1万9330円、1等は3万8660円です。旅客輸送終了後は、RORO船での貨物輸送が行われます。(鎌倉淳)