国土交通省は、鉄道整備事業の費用対効果などを評価する「鉄道プロジェクトの評価手法マニュアル」を改訂しました。2012年以来14年ぶりの本格改訂で、「国家戦略性」や「公平性」など7つの視点で事業効果を評価する考え方を導入。すでに開業した区間を含む「全線一体評価」の方法も明確にしました。
2012年以来の本格改訂
国土交通省は「鉄道プロジェクトの評価手法マニュアル(2026年改訂版)」を公表しました。
評価手法マニュアルは、鉄道新線の建設や既設線の改良、駅の改良、バリアフリー施設の整備、鉄道防災対策などについて、事業効果や費用対効果を評価する方法を定めたものです。国費を投入する事業を基本的な対象としています。
今回の改訂では、事業効果を7つの視点に再整理したほか、段階的に整備する路線の評価方法や、開業後の事後評価についても見直しました。

「国家戦略性」など7つの視点
改訂の最大のポイントは、鉄道整備がもたらす効果を「国家戦略性」「公平性」「地球環境保全」「地域貢献性」「安心・安全」「移動利便性」「経営持続性」の7つの視点に分類したことでしょう。
このうち「国家戦略性」では、国家セキュリティの確保、災害時の代替ルート確保(リダンダンシーの向上)、サプライチェーンの維持・形成、東京一極集中の是正、国際競争力強化、全国的な交通ネットワークの形成、観光立国の実現などを評価します。
具体的な評価指標として、災害による経済的損失の削減額、既存路線の不通で迂回を余儀なくされる利用者数、大都市圏から一定時間内に到達できる人口、訪日外国人旅行者数、宿泊旅行消費額などを挙げています。

公平性、地域貢献性も評価
「公平性」では、鉄道空白地域の解消や交通弱者の移動負担軽減、就労・就学機会の確保などを評価します。「地球環境保全」では脱炭素化やモーダルシフト、「地域貢献性」では地域経済や観光、まちづくり、地域文化などへの貢献を対象とします。
「安心・安全」では災害対策や事故・輸送障害の減少、「移動利便性」ではアクセス改善や定時性の向上、「経営持続性」では採算性や運賃収入の維持、維持管理費の削減などを評価します。
従来のマニュアルでも地域経済や環境などの効果を評価していましたが、今回の改訂では、国家的な政策目標も含めて7つの視点に再整理しました。
整備計画の起終点で「全線一体評価」
次に重要な改訂ポイントは、段階的に整備する鉄道路線の評価方法でしょう。
今回の改訂では、整備が相当程度進んだ段階で延伸区間を建設する場合、新たな着工区間の個別評価に加え、開業済み区間も含めて、「プロジェクト全体のミッション上一体と考えるべき起終点間全体」を評価する考え方を明確にしました。
整備新幹線については、全国新幹線鉄道整備法に基づく整備計画に定められた起点と終点を基本とします。全線を整備した場合と整備しなかった場合を比較し、費用と便益を算定します。
北陸新幹線の新大阪延伸に関係
改訂版マニュアルに基づく一体評価が最初に適用されるのが、北陸新幹線の敦賀~新大阪間です。
北陸新幹線の整備計画は、東京都を起点、大阪市を終点としています。11月6日に開かれた「北陸新幹線(敦賀・新大阪間)小委員会」では、東京~新大阪間を一体評価の対象とし、上越新幹線との重複区間を除く高崎~新大阪間の費用と便益を算定する方法が示されました。
2026年6月に明らかになった国交省の再試算では、小浜・京都ルートの桂川案について、敦賀~新大阪間だけを対象とした費用便益比(B/C)は0.5でした。一方、東京~新大阪間を一体的に評価した場合は1.1となっています。
整備新幹線の着工5条件では、投資効果の確保が求められ、費用便益比が1を上回ることが目安となっています。小委員会では、評価手法マニュアル改訂を踏まえ、北陸新幹線敦賀~新大阪間の整備効果などを検証します。(鎌倉淳)





















