ホーム 鉄道 鉄道新線

「日本海ミニ新幹線」最有力はどの案か。新潟県鉄道高速化構想、B/C最大1.68

国の「在来線高速化」支援も追い風に

新潟県が検討してきた、新潟地域と上越地域を結ぶ鉄道高速化の調査結果がまとまりました。いわば「日本海ミニ新幹線」構想で、4案を比較し、B/Cは最大1.68と見積もられました。国は「在来線の高速化」を主要施策に掲げており、いずれの案も国の支援を受けられる可能性があります。有力なのはどの案でしょうか。

広告

上越新幹線と北陸新幹線を結ぶ

新潟県は、新潟地域と上越地域のアクセス改善を目的として、上越新幹線と北陸新幹線を結ぶ高速鉄道ネットワークを検討しています。

2022年に「高速鉄道ネットワークのあり方検討委員会」を設置し、信越本線やえちごトキめき鉄道、北越急行ほくほく線などを活用する4案について調査してきました。

北陸新幹線の新大阪延伸を見据え、新潟県内の移動だけでなく、新潟と関西方面を結ぶ日本海側の高速鉄道ネットワークを強化する狙いもあります。

2026年8月24日に開かれた第7回検討委員会では、これまでの調査結果を公表しました。2050年を予測年次として、所要時間や需要、概算工事費、費用便益比(B/C)、経済波及効果などを4案で比較しています。

以下、4案の内容をみていきましょう。

W7系、E7系

広告

ミニ新幹線上越妙高案

「ミニ新幹線上越妙高案」は、上越妙高~長岡間にミニ新幹線を走らせる案です。

信越本線の犀潟~宮内間では、複線区間の片側を標準軌に改軌します。直江津~犀潟間、宮内~長岡間と、えちごトキめき鉄道妙高はねうまラインの直江津~上越妙高間は三線軌条とします。

長岡駅と上越妙高駅にはアプローチ線を整備し、上越新幹線と北陸新幹線への乗り入れを可能にします。

新潟県鉄道高速化案1-1
画像:新潟県

高田~新潟間の所要時間は77分です。整備しない場合の111分に比べ、34分短縮します。新大阪~新潟間は211分で、258分から47分短くなります。

需要は年間68万人増えると予測しています。このうち県間流動が66万人、県内流動が2万人の増加です。

概算工事費等は約1,700億円で、工期は15~17年程度。B/Cは0.97~1.68程度となりました。4案では、B/Cの上限、下限とも最も高い数字です。

観光消費による経済波及効果は年間50.4億円で、入込客数は年間9.9万人増と試算しています。建設投資による経済波及効果は総額2,513億円です。

広告

ミニ新幹線糸魚川案

「ミニ新幹線糸魚川案」は、糸魚川~長岡間にミニ新幹線を走らせる案です。

信越本線の犀潟~宮内間と、えちごトキめき鉄道日本海ひすいラインの糸魚川~直江津間では、複線区間の片側を標準軌に改軌します。直江津~犀潟間と宮内~長岡間は三線軌条とし、長岡駅と糸魚川駅にアプローチ線を整備します。

新潟県鉄道高速化案1-1
画像:新潟県

高田~新潟間は88分で、整備しない場合より23分短縮します。新大阪~新潟間は212分で、46分の短縮です。

需要は年間67万人増える見込みです。県間流動が64万人、県内流動が3万人増えると予測しました。

概算工事費等は約2,000億円で、工期は19~21年程度。B/Cは0.76~1.40程度です。

観光消費による経済波及効果は年間53.4億円で、入込客数は年間10.4万人増と試算しています。建設投資による経済波及効果は総額2,857億円です。

広告

信越本線改良案

「信越本線改良案」は、ミニ新幹線を導入せず、既存線を改良して上越妙高~長岡間の特急列車を高速化する案です。

信越本線に短絡トンネルを設けるほか、曲線改良などによって速度を向上します。長岡駅にはアプローチ線を整備し、新幹線と在来線を同一ホームで乗り換えられるようにします。

新潟県鉄道高速化案2
画像:新潟県

高田~新潟間は79分で、整備しない場合より32分短縮します。ミニ新幹線上越妙高案の77分に近く、県内の時間短縮効果は大きい案です。

新大阪~新潟間は223分です。北陸新幹線と上越新幹線を直通する方式ではないため、乗り換えは2回となりますが、整備しない場合より35分短縮します。

需要増は年間18万人で、県間流動が17万人、県内流動が1万人の増加です。

概算工事費等は約2,000億円、工期は13~15年程度。B/Cは0.10~0.25程度となりました。

観光消費による経済波及効果は年間9.5億円で、入込客数は年間1.9万人増です。建設投資による経済波及効果は総額2,917億円と試算しています。

広告

北越急行ミニ新幹線案

「北越急行ミニ新幹線案」は、北越急行ほくほく線を活用し、上越妙高~浦佐間にミニ新幹線を走らせる案です。柏崎~長岡間には別途、直通特急を走らせます。

上越妙高~うらがわら間と魚沼丘陵~五日町間に短絡線を設け、ほくほく線を三線軌条化します。上越線の五日町~浦佐間では複線区間の片側を標準軌に改軌します。上越妙高駅と浦佐駅には、新幹線へのアプローチ線を整備します。

新潟県鉄道高速化案2
画像:新潟県

高田~新潟間は95分で、整備しない場合より16分短縮します。4案では時間短縮効果が最も小さいです。

一方、新大阪~新潟間は208分で、4案では最短となります。整備しない場合より50分短縮します。

需要は年間52万人増を見込みます。県間流動は55万人増える一方、県内流動は3万人減るとの予測です。

概算工事費等は約2,600億円で4案中最大ですが、工期は8~10年程度と最短です。B/Cは0.51~0.93程度となっています。

観光消費による経済波及効果は年間10.3億円で、入込客数の増加は年間0.7万人です。建設投資による経済波及効果は総額3,859億円で、4案では最大となりました。

広告

需要・B/Cはミニ新幹線2案が優位

4案を比較すると、県内の速達性ではミニ新幹線上越妙高案と信越本線改良案が優れ、関西方面との所要時間では北越急行ミニ新幹線案が最短となります。

需要やB/Cではミニ新幹線上越妙高案とミニ新幹線糸魚川案が高く、とくにミニ新幹線上越妙高案は事業費も4案では最も小さくなりました。

ただし、信越本線をミニ新幹線化する場合、貨物列車のダイヤ変更が必要となり、影響が広範囲に及ぶとされています。三線軌条区間の保守や、在来線列車の利便性低下なども課題です。

さらに、上越妙高案では、上越妙高~直江津間で工事に伴う運休が生じ、3~4年程度のバス代行が想定されています。妙高高原~上越妙高間でも運休の可能性があります。整備後も、北陸新幹線に直通する列車は上越妙高駅でスイッチバックが必要です。

糸魚川案では、上越妙高案のような長期のバス代行やスイッチバックが生じません。事業費は上越妙高案より約300億円高くなりますが、工事中の交通維持や整備後の運行面で優れています。

広告

信越本線改良、北越急行案の難点

信越本線改良案は県内の時間短縮効果が大きいものの、B/Cは0.10~0.25程度と低く、ミニ新幹線案を下回りました。北陸新幹線にも上越新幹線にも直通せず、新潟まで利用する場合は長岡駅で乗り換えるのが難点です。

北越急行ミニ新幹線案は関西方面との速達性に優れますが、ミニ新幹線は高田や柏崎を経由しません。県内流動は4案で唯一減少する予測となっており、事業費も最大です。B/Cも1を上回りませんでした。

一方、北越急行案では、上越妙高案や糸魚川案のような、貨物列車のダイヤ変更が広範囲に及ぶという問題が生じません。

現在はローカル線になってしまっている北越急行を、高速鉄道ネットワークに組み込んで活用できることも、この案の特徴です。

広告

前年調査からの変更点

今回の結果は、2025年8月に公表された暫定結果をベースに、追加調査を加えてまとめたものです。

ルートや所要時間、需要予測は、前年公表時から基本的に変わっていません。今回、新たに観光消費や建設投資などの経済波及効果を算定したほか、概算工事費等を再整理しました。

ミニ新幹線を導入する3案では、前年に示した工事費に、新幹線側の車両基地やホームドアなどの設備改修費として約500億円を加えています。

このため、ミニ新幹線上越妙高案は約1,200億円から約1,700億円、ミニ新幹線糸魚川案は約1,500億円から約2,000億円、北越急行ミニ新幹線案は約2,100億円から約2,600億円となりました。信越本線改良案は約2,000億円で変わりません。

広告

B/Cの注意点

B/Cも更新しました。ミニ新幹線上越妙高案は前年の0.9~1.4程度から0.97~1.68程度、ミニ新幹線糸魚川案は0.7~1.2程度から0.76~1.40程度、信越本線改良案は0.1~0.2程度から0.10~0.25程度、北越急行ミニ新幹線案は0.5~0.8程度から0.51~0.93程度と改善しました。

今回の試算にあたっては、国の「鉄道プロジェクトの評価手法マニュアル」の2025年3月の一部変更を反映し、社会的割引率を4%~1%として、B/Cの幅を示しています。前年調査では4%~2%でした。

国交省のマニュアルでは、社会的割引率は当面4%を適用し、近年の国債実質利回りを踏まえた1%と2%は参考比較値として併記できる扱いです。すなわち、今回の調査で示されたB/Cの上限には、前年にはなかった1%の参考値が含まれていることになります。

そのため、B/Cの上限値が前年より高くなったことだけをもって、事業の費用対効果が改善したとはいえません。上限値を見る場合には、参考値による計算であることに注意が必要です。

むしろ、従来基準の4%に注目するならば、下限値をみる必要があり、いずれも1を下回っています。

広告

国の支援をどう取り込むか

今回の調査がまとまったことで、今後の事業化を考えるうえで気になるのが国の動きです。

国土交通省は2027年度予算の概算要求で、「在来線の高速化」を鉄道ネットワーク整備の「主な施策」に位置づけました。調査費として4億9500万円の内数を要求するとともに、幹線鉄道等活性化事業費補助についても、事業費19億1300万円の内数、国費5億7900万円の内数を要求しています。

新潟県が検討する4案は、いずれも在来線を活用して高速化する計画です。そのため、どの案でも、国の在来線高速化施策による支援を受けられる可能性があります。具体的にどの制度を適用できるかや、国がどこまで負担するかは今後の検討事項です。

新潟県も、新潟地域と上越地域を結ぶ鉄道高速化について、羽越新幹線を見据えた「国家プロジェクト」に位置づける必要があるとして、国への働きかけを進める方針を示しています。

4案の調査結果がまとまり、国も在来線高速化を主要施策に位置づけたことで、今後は国の支援をどのように取り込めるかが焦点となりそうです。(鎌倉淳)

広告