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北海道新幹線
これから開業しそうな鉄道新線計画、2030年代以降の開業としては、北海道新幹線・新函館北斗~札幌間が目玉です。2031年春の開業予定で、実現すれば札幌から鹿児島中央まで、日本列島を貫く新幹線が完成します。
途中駅は新八雲、長万部、倶知安、新小樽の3駅。終点札幌駅は、在来線ホームより東側に大きくずれた位置にできます。
新幹線開業と引き替えに、並行在来線である函館線函館~長万部~小樽間がJR北海道より分離されます。並行在来線が鉄道として存続するのか、バス転換されるのかは、まだ最終結論が出ていません。長万部~余市間に関しては、バス転換が濃厚になっています。
なにわ筋線
同じく2031年春には、JR・南海なにわ筋線も開業予定です。大阪市の北梅田(うめきた大阪地下駅)からJR難波、南海新今宮へ至る路線で、JRと南海が共同で営業します。
建設するのは北梅田駅の南西付近を起点とする7.2kmです。途中、中之島駅、西本町駅、南海新難波駅の3駅を設けます。関西高速鉄道が鉄道施設を整備・保有し、JR西日本と南海電鉄が、それぞれ運営主体となり列車を運行します。
完成すれば、JR特急「はるか」「くろしお」や、南海特急「ラピート」がなにわ筋線経由に移管されるとみられています。
阪急電鉄の北梅田乗り入れも、時期未定ながら実現性が高そうです。北梅田から十三を経て新大阪に至る路線です。なにわ筋線と一体的に整備される路線ですので、同線開業より少し遅れて2030年代半ば以降に開業できそうです。
横浜地下鉄ブルーライン
横浜市営地下鉄ブルーラインも2030年頃に開業しそうです。あざみ野から先、新百合ヶ丘まで約6kmを延伸する計画があり、2019年に事業化が正式に決まりました。
あざみ野~新百合ヶ丘間に4つの駅が設置される予定です。途中駅ができるのは、嶮山(あざみ野ガーデンズ付近)、すすき野、ヨネッティ王禅寺付近です。終点、新百合ヶ丘駅では小田急線と接続します。開業目標は2030年とされていますが、まだ流動的です。
東京メトロ有楽町線
2030年代前半には、東京都内でも地下鉄の新線が相次ぎそうです。きっかけは国土交通省交通政策審議会が2021年7月に出した「東京圏における今後の地下鉄ネットワークのあり方等について」という答申(371号答申)です。このなかで、東京メトロ有楽町線の豊洲~住吉間と、南北線白金高輪~品川間の延伸が、「早期の事業化を図るべき」とされました。
東京メトロ有楽町線の豊洲~住吉間の延伸は、「豊住線」「8号線」とも呼ばれる計画で、距離は5.2km。途中3駅が設けられます。途中駅は、東陽町駅と、豊洲~東陽町間の新駅、東陽町~住吉間の新駅です。
公式なアナウンスはありませんが、日本経済新聞2021年12月17日付で「2022年度に環境影響評価に着手する方針」と報じられました。事実となれば、アセス着手から10年後くらいの開業が見込まれますので、2032年度頃に開業する可能性が出てきました。
東京メトロ株の上場と引き替えに、東京メトロが整備・運営する方向性も定まっています。
東京メトロ南北線
東京メトロ南北線の品川延伸も、交通政策審議会371号答申で「早期の事業化」が求められました。「品川地下鉄」「品川線」とも呼ばれる計画で、白金高輪~品川間の2.5kmです。途中駅は設置されません。
こちらも公式発表はありませんが、有楽町線住吉延伸と足並みを揃えて事業着手するとみられます。導入空間となる環状4号線は現在工事中で、工事期間は2032年度までとされています。品川地下鉄を環状4号線と一体整備するなら、最速で2032年度頃に開業する可能性があります。
こちらも東京メトロが整備・運営する方向性が定まっています。
多摩都市モノレール
東京都下では、多摩都市モノレールの箱根ヶ崎延伸も計画が進んでいます。上北台~箱根ヶ崎間の約6.7kmを延伸します。
導入空間となる新青梅街道の拡幅が進んでおり、予定通りなら2022年3月までに完了します。完成すればモノレール用地がすべて確保され、モノレール着工の条件が整います。
東京都は、2020年1月に箱根ヶ崎延伸の事業着手方針を決定し、すでに基本設計を発注済みです。基本設計は2022年1月に完了する予定で、その後、環境アセスメントに進むとみられます。
モノレール延伸開業の時期は2032年頃が目標とされていますが、環境アセスメントの段階で、正式な開業目標が示されるでしょう。
多摩都市モノレールには、下図のように多数の構想路線がありますが、現時点で開業の見通しが立っているといえるのは、上北台~箱根ヶ崎間のみです。
このほか、多摩センター~町田間についても、都道47号線を中心に全体の半分の約7kmで導入空間が確保されています。ただ、残り区間では道路計画がない部分もあり、モノレール事業化にはもう少し時間がかかりそうです。
建設運動が盛り上がりつつありますので、2030年代には町田延伸が実現するかもしれません。
都営地下鉄大江戸線
都営地下鉄大江戸線にも延伸計画があります。大江戸線放射部の終点光が丘駅~大泉学園町までの約3.2kmです。
導入空間となる道路として都市計画道路補助230号線の整備が進んでいます。途中駅として、土支田、大泉町、大泉学園町の3駅を設置します。大泉学園町駅は、西武池袋線大泉学園駅から北2kmほど離れた位置です。
2019年の「未来の東京」戦略ビジョンで、大江戸線は「関係者と事業化について協議・調整を進める」と位置づけられました。導入予定となる道路整備も進んでいますが、現時点では事業着手に至っておらず、明確な開業見込みはありません。
建設に10年かかるとすれば、事業着手まで順調にすすんでも2030年代半ばの開業になりそうです。
臨海地下鉄
東京臨海部への地下鉄計画も実現に向け動き出しました。前出の交通政策審議会371号答申で「検討の深度化を図るべき」とされたのがきっかけで、東京都が2021年9月に「都心部・臨海地域地下鉄構想事業計画検討会」を立ち上げ、本格的な検討を始めました。
臨海地下鉄は、秋葉原から新東京、新銀座を経て新国際展示場に至る地下鉄新線計画です。途中、新東京、新銀座、新築地、勝ちどき・晴海、新市場の6駅を設けます。
計画を推進する中央区が2021年3月に公表した資料によれば、新銀座~新国際展示場間が7分、秋葉原~新国際展示場間が12分で、毎時15本の運転を想定しています。
秋葉原でつくばエクスプレスと接続する計画ですが、運営主体などは未定です。いずれ事業化されるとみられますが、現段階では開業時期などは見通せません。
小田急多摩線
小田急多摩線の相模原延伸も現実味を帯びています。2019年5月に調査報告書が公表され、唐木田~上溝間8.8kmの延伸計画のうち、唐木田~相模原間5.8kmを優先して事業化する方針が示されました。途中、小山田付近に駅ができる予定です。
ただ、その後、事業化に向けて目立った動きはありません。報告書では2033年が開業年度とされましたが、これは収支採算性を探る上での仮定であって、現時点で正式にアナウンスされた開業目標ではありません。
事業着手に至る可能性は高いものの、開業は早くても2030年代半ば頃になりそうです。
実現可能性のある路線
ここまでが、事業着手をしたか、事業着手の可能性が高い路線です。最後に、事業化の可能性があるものの、現時点では未定の路線を見て行きましょう。
まず、東急多摩川線の京急蒲田延伸(新空港線)については、2019年の「未来の東京」戦略ビジョンで「事業化に向けた関係者の取組を加速」と記され、東京都が検討を進めています。
相鉄いずみ野線の慶應SFC延伸についても、相鉄新横浜線の開業後、先に進む可能性があります。埼玉高速鉄道の岩槻延伸も、さいたま市長や埼玉県知事が前向きなため、実現可能性があります。
瀬谷~上瀬谷間の上瀬谷ラインは棚上げになっていますが、米軍上瀬谷通信施設跡地の再開発計画が固まれば、実現に向け動き出すかもしれません。
大阪では、IRが決まればJR桜島線の舞洲、夢洲延伸の可能性があります。京阪も中之島線を九条方面に延伸できないか模索しています。
鹿児島ではウォーターフロントの再開発にあわせて、市電を延伸する計画があります。札幌市電も北海道新幹線の札幌開業を契機に、札幌駅方面などへ延伸する計画があります。
熊本空港アクセス鉄道は、これまでのところ、採算面で国の補助を受けられる基準に達しておらず実現は難しそうですが、TSMC新工場の沿線進出を受け、ルートや採算性を再検討します。
新幹線については、北海道新幹線の札幌延伸と、北陸新幹線の大阪延伸で一段落ですが、佐賀県が受け入れれば西九州新幹線の新鳥栖~武雄温泉間をフル規格で作る可能性はあるでしょう。鉄道建設は地元が要望して国が受け入れるというのが一般的ですが、ここだけは国が推進して地元が渋っているという珍しい構図です。
整備新幹線の建設が一段落すれば、「次の整備新幹線」の建設が視野に入ります。とくに、四国新幹線や東九州新幹線で沿線での建設運動が盛り上がりつつあります。どこまで実現するかは見通せませんが、国交省は「単線新幹線」など新たな新幹線の形を模索しており、四国などでいずれ事業化に至る可能性は高いでしょう。
鉄道の新線建設は、計画から完成まで途方もない時間がかかります。どこまで実現するかは定かではありませんが、どの路線も開業を楽しみにしたいところです。(鎌倉淳)