南海電気鉄道が、子会社の南海フェリーが営むフェリー事業から撤退すると発表しました。燃油費の高騰に加え、船体の更新費用を捻出できないという理由からです。年間35万人が利用するフェリー航路が、インフレの影響などにより撤退に追い込まれる事態に陥りました。
2隻で1日8往復
南海フェリーは、和歌山港と徳島港とを2時間15分で結ぶ航路です。「フェリーかつらぎ」と「フェリーあい」の2隻体制で1日8往復を運航。近畿地方南部と四国を結ぶショートカットルートとして利用されてきました。
この航路について、親会社の南海電鉄は、2028年度3月をメドに撤退すると発表しました。理由として燃油費の高騰や人口減少による利用者の減少に加え、現在運航している「フェリーかつらぎ」が就航から26年を経過し、更新時期を迎えていることを挙げています。

船体更新に40億円
南海フェリーは新型コロナ禍の影響を受けた2020年度と2021年度の2年間で計10億円の営業赤字を出し、直近の2024年度決算でも900万円の営業赤字を計上しました。現状は債務超過の状態で、苦しい経営が続いています。
一方、船体更新には約40億円がかかるそうです。現在の財務状況で同社が船体の更新費用を捻出するのは難しく、さりとて「フェリーあい」の1隻体制では効率的な運航や経営ができません。そのため、事業撤退を決断したということです。

本四架橋でじり貧に
和歌山・徳島航路は、歴史的に本州・四国連絡の主要ルートの一つでした。
いまでも和歌山港で南海特急が接続し、大阪から四国への乗り継ぎルートを構成しています。それに加えて、かつては四国方でも小松島港で国鉄小松島線と接続し、鉄道連絡船としての役割も担っていました。
しかし、1998年の明石海峡大橋開通により、旅客も貨物も陸路への転移が進み、航路の存在感は小さくなりました。
乗船率は低迷
それでも、直近の2024年度の利用者は年間35.7万人もいます。自動車輸送台数は乗用車とトラックをあわせて11.5万台です。
四国運輸局のデータによれば、松山発着の航路(広島・呉・柳井)が合計で47.4万人、16.3万台ですので、それには劣るものの、南海フェリーが、本州と四国を結ぶルートとして、いまでも一定の役割を果たしていることは確かです。
ただ、計算すると、1日あたり1,000人弱、1便平均の乗船人数は約60人にとどまります。「フェリーあい」の旅客定員は427名ですので、平均乗船率は約14%にすぎません。
乗船台数も1便あたり約20台です。「フェリーあい」の最大積載台数は8トントラック換算で37台ですので、全部が8トントラック(全長約8m)としても、平均積載率は約54%です。実際は乗用車(主に全長6m以下)の割合が高いので、積載率は50%に満たないでしょう。
一定の需要はあるものの利用率が高いとはいえない、というのが実態だったようです。
航路維持の方針だったが
2019年に新造船を導入した経緯からみても、南海として、少なくとも10年前までは、航路を維持する方針だったことがうかがえます。
コロナ禍の2年間を除けば採算はとれていましたし、本四架橋が進んだとはいえ、和歌山から四国へ渡るのに明石海峡大橋経由は大回りで、南海フェリーが必要とされていたからでしょう。
しかし、昨今のインフレが状況を一変させました。燃油価格の高騰により運航費用が増大して採算の確保が難しくなっただけでなく、インフレで船体価格も高くなり、更新がままならなくなりました。
そのうえで、人口減少による利用者の減少という問題にも直面していました。新造船に投資をしても回収できる見通しが立たないということです。
廃止は未決定
いまのところ、南海フェリーが和歌山~徳島間のフェリーから撤退するというだけで、新たな事業者が航路を継承する可能性も残されています。すなわち、航路そのものが廃止されるかは未決定です。
南海が発表した撤退予定は2028年3月末で、2年も先の話です。日程に余裕を持たせていますので、新たな引き受け手の登場を待っているような印象も受けます。
ただし、現時点では新たな引き受け手は現れていません。南海としても、おそらくは引き受け手を探した結果として、見つからなかったが故の撤退発表でしょうから、民間企業への譲渡の見通しは立ちません。
三セクで存続も?
考えられるとすれば、自治体を中心とした第三セクターの設立です。和歌山県と徳島県などが出資して半官半民のフェリー会社を設立し、行政の支援で運航を継続する形なら考えられるでしょう。
1日1,000人程度の利用者がいますので、公的支援で新造船を調達できれば、存続の余地はありそうです。南海という大手企業グループに対し、行政が新造船費用を出すことは難しそうですが、第三セクターに対してなら支援は可能です。
民間企業による営利事業としては限界ですが、公共交通機関として残すかどうかは行政の判断、というわけです。
人材の草刈り場に
ただ、全国的な船員不足という状況もあり、早急に方針を決定しなければ、南海フェリーは人材の草刈り場になってしまいます。従業員が次々と辞めてしまえば、後継会社ができても船員がいない、という状況に陥りかねません。
実際、南海側は、「従業員の確保など安全運航に支障が生じる恐れのある場合には、撤退時期を早める場合があります」と、人材不足による前倒し撤退の可能性があることを告知しています。おそらくは、現状ですら人手が十分ではないのでしょう。
南海和歌山港線の存廃議論も
航路が正式に廃止となれば、南海電鉄の和歌山港線の存廃にもかかわってきます。和歌山港駅の1日あたりの乗降人員は445人で、ほとんどがフェリーの利用者とみられます。
フェリーがなくなれば、和歌山港駅の利用者も激減し、鉄道を維持する意味もなくなるでしょう。となると、和歌山市~和歌山港間の鉄道路線が廃止になる可能性もありそうです。(鎌倉淳)






















