ホーム 新規開業・工事 熊本空港アクセス鉄道を考え...

熊本空港アクセス鉄道を考える。なぜ「三里木分岐」なのか?

JR九州と協議中

熊本空港アクセス鉄道の建設機運が高まっています。熊本県は、JR豊肥線三里木駅からの分岐案を推進していますが、肥後大津駅から分岐を求める声もあります。両案を比較しながらみていきましょう。

モノレール案、市電案も

熊本空港のアクセス改善に関して、熊本県は、豊肥線から分岐する鉄道新線建設のほか、モノレール建設、市電延伸の3つの選択肢で検討を始めました。

このうち、事業費が最も安いのは市電延伸で、210億円~230億円と見積もられました。しかし、速達性や大量輸送性で難があります。

モノレールは定時性、速達性、大量輸送性などで優れるものの、事業費が2,500億円以上かかります。また、建設に時間がかかるため、早期実現も困難です。

一方、鉄道は事業費が330億円~380億円で、早期実現も可能です。こうしたことから、空港アクセス改善の切り札として、豊肥線から分岐する鉄道建設に白羽の矢が立ちました。

熊本空港交通システム比較
画像:大津町

3つの鉄道ルート

鉄道延伸ルートには、三里木分岐、原水分岐、肥後大津分岐の3ルートが候補となりました。

熊本駅からの所要時間は、三里木ルート、原水ルートがともに38分、肥後大津ルートが42分です。事業費は三里木が380億円で、原水、肥後大津が330億円と見積もられました。

大きな差が出たのは需要量で、三里木ルートは1日6,900人の利用が見込まれるのに対し、原水ルートは5,900人、肥後大津ルートは5,800人にとどまりました。

需要量に差が出た理由は経由地です。三里木ルートの場合、途中に県民総合運動公園を経由し、運転免許センターも近くにあることから、空港利用者以外の鉄道利用が見込まれます。

一方で、原水ルートや肥後大津ルートは、途中にめぼしい施設がなく、空港利用者以外の利用はほとんど見込めません。

熊本空港鉄道延伸ルート比較
画像:大津町
広告

ターミナルビルへの接続問題

ターミナルビルへの接続問題もあります。

熊本空港のターミナルビルは、滑走路南側にあり、豊肥線から見れば滑走路の向こう側になります。三里木ルートの場合、空港手前で豊肥線から分岐するので、滑走路の手前から回り込む形でターミナルビルに路線を敷設できます。

一方、原水や肥後大津分岐の場合、最短ルートで路線を敷くと滑走路の下にトンネルを通す必要があります。滑走路下のトンネルには高い強度が求められ、費用がかさみます。一方、滑走路を迂回すれば、そのぶん大回りになります。

こうしたことを総合的に勘案し、新線区間の採算性や旅客の利便性をみれば、三里木ルートが有利です。それを踏まえたうえで、熊本県は、2018年12月に、三里木駅で分岐するルートを軸に検討を進めることを明らかにしました。

熊本空港鉄道3ルートイメージ
画像:大津町

三里木分岐の問題点

ただ、豊肥線は熊本~肥後大津を電車区間として運行しています。そのため、車両運用上は、熊本~肥後大津~熊本空港とつながる肥後大津ルートが効率的です。

肥後大津駅の乗車人員は1日2,555人と少なくありません。三里木ルートで、肥後大津駅の利便性を維持するのであれば、三里木~肥後大津間に区間運転列車を多数運行しなければならなくなります。

そのぶん車両費や人件費が余計にかかることになります。こうした費用は、上記の試算には含まれていないでしょう。

こうしたことから、JR九州の青柳俊彦社長は、熊本県の計画発表の後、肥後大津での分岐を希望すると表明しています。

熊本~肥後大津間の運用を変えずに、空港アクセス鉄道を三里木~熊本空港間の折り返し列車主体で運用すれば、上記の問題はなくなります。しかし、それでは空港利用者には不便で、アクセス鉄道の利用は伸び悩みそうです。

熊本~熊本空港間の列車を快速運転などにして、列車本数を純増とすれば、肥後大津駅の本数削減は生じません。が、それでは供給過多にも思えますし、豊肥線の線路容量も不足しそうです。

広告

熊本県が三里木ルートを提案

現在、熊本空港へのシャトルバス(空港ライナー)の起点となっているのは、肥後大津駅です。そのため、大津町は、熊本県が決定した三里木ルートに反発。2019年1月24日に住民説明会を実施し、1月31日に熊本県などに、肥後大津からの分岐を訴える要望書を提出しました。

これに対し、熊本県は、2月8日に次のような説明をしました。要点は以下の3つです。

1. 空港アクセス鉄道については、県民総合運動公園へのアクセス改善も図れる三里木駅分岐ルートでJR九州と協議を進めていること。

2. 熊本駅から肥後大津駅方面の列車の運行については、減便ありきで考えておらず、現在の利便性を低下させない。

3.空港ライナーについては、当面、運行継続。将来的には利用状況を見ながら判断する。

「肥後大津駅の利便性は低下させない」との言質を与えたものの、それ以外は大津町の要望に応じない姿勢を示したといえます。

豊肥線の輸送力増強は?

三里木分岐、肥後大津分岐、それぞれに一長一短があるのは確かです。採算性を考える際には、三里木分岐の場合の、三里木~肥後大津間の収益減も考慮されるべきでしょう。

今後、JR九州を交えて、想定ダイヤなどを含めてより深い検討が行われるとみられます。単線の豊肥線の輸送力には限界があり、空港アクセス鉄道を作るとなれば、一部区間の複線化が必要になるかもしれません。

そうした点も含めて、熊本空港アクセス鉄道が本当に実現するのか、実現するとしてどのルートが最終的に採択されるのか、注目したいところです。(鎌倉淳)