設備投資に遅れ
高知の路面電車で大きな問題となっているのは、設備更新です。
とさでん交通の中期経営計画では、2026年度までの5年間で、総額11億5000万円の設備投資を予定しています。1年にならせば、毎年2、3億円程度です。
しかし、25km、63両の規模の路面電車を、年間2、3億円の設備投資で維持するのは困難です。
とさでん交通によると、本来なら、年間8億円程度の設備投資が必要です。5年間で40億円にのぼります。しかし、現実には、補助金による設備投資分は補助金と同額だけに圧縮していて、最低限の投資にとどめています。
同業他社と比較すると
軌道距離に対する維持管理費用を同業他社と比較したのが下図です。ごらんいただければ、極端に少ない状況であることがわかるでしょう。
輸送量の多い東京都交通局の維持管理費は別格ですが、それ以外の地方都市の路面電車と比べても、とさでん交通の金額は見劣りします。
レール交換に292年
必要な設備投資について詳しくみてみると、レールの耐用年数は20年で、レールの交換に必要な設備投資額は年間4億3800万円です。しかし、現実には3000万円しか投資していません。
現在のペースでは全線の交換に292年を要し、耐用年数の15倍近く使用しなければ帳尻があいません。
饋電線更新には82年
車両に電力を供給する饋(き)電線については、本来、年間1億4750万円の投資が必要なところ、年間7200万円の投資にとどまっています。
耐用年数は40年ですが、現在のペースでは全線の更新に82年を要します。
車両更新に189年
車両の更新については、現在は3年に1両のペースで更新しています。1両を2億5000万円とすると、1年あたりでは8300万円です。
現有の63両を更新するには、189年かかります。耐用年数を40年とみれば、本来は6倍の設備投資が必要です。
実際には、60両をこの10年以内に更新する必要がありそうです。そうすると、近いうちに150億円もの車両費がかかります。
端的にいうと、とさでん交通の路面電車は、必要な設備投資を先送りして運行を続けているわけです。安全運行のための施設整備は、大きな課題といえます。