鹿児島市電「観光路線」延伸計画のルートはどうなるか。ウォーターフロントへ4つの案

2020年代後半にも開業?

鹿児島市電の観光路線延伸計画で、ルートが4案に絞り込まれました。鹿児島のウォーターフロントを回遊する路線のルートはどのような形になるでしょうか。

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第2回基本計画策定委員会

鹿児島市では、ウォーターフロントの鹿児島港本港区へ市電を延伸する計画を立てていて、ルート案などの検討を進めています。延伸区間は「観光路線」という位置づけで、新たな系統が鹿児島中央駅と鹿児島本港地区を結びます。

この新線の基本計画策定に関して協議するため、鹿児島市は2018年度から鹿児島市路面電車観光路線基本計画策定委員会を設置して調査しています。

この計画策定委員会が2020年3月26日に第2回会合を開催し、これまでのルート案の検討状況を明らかにしました。その内容をみてみましょう。

鹿児島市電

「観光路線」の基本方針

まず、市電延伸で建設する「観光路線」の基本方針は、以下の通りです。

①「陸の玄関」鹿児島中央駅と「海の玄関」鹿児島本港の結節強化。新幹線からの2次アクセスを充実させる。

②天文館地区と鹿児島本港の回遊性向上。ウォーターフロントの集客施設との相乗効果で、中心市街地の活性化を図る。

③桜島や錦江湾を車窓から眺められ、ウォーターフロントのさまざまな施設を結ぶルートとすることで、乗客に鹿児島らしい雄大な景色を楽しんでもらい、新たな魅力ある都市景観の創出を図る。

④乗車すること自体が目的となる魅力ある車両を導入する。

要するに、鹿児島中央駅や天文館地区とウォーターフロントを路面電車でつなぎ、観光客に利用してもらおう、という考え方です。同時に、新幹線と桜島や種子島・屋久島航路を乗り継ぐ旅客向けに、鹿児島中央駅と鹿児島本港のアクセス利便性を向上させよう、という狙いがあります。

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6ルート原案

この「観光新線」は、単線で敷設し片方向で巡回運転します。単線にすることで導入空間を最小限に抑えられる上に、片方向なら行き違いが生じないので、車両検知式軌道信号による保安信号制御などが不要となり、コスト面で有利なためです。

単線片方向を前提として、過去の会合では、「観光新線」のルート案が6つに絞り込まれていました。

ウォータフロントを南北に貫く区間を縦軸に、既存の市電路線への接続線として「A」~「E」の5つの道路を候補として挙げています。このうち2つの道路を組み合わせて巡回ルートとするわけです。

具体的には、下図の「A-E」「A-D」「B-E」「B-D」「C-E」「C-D」の6つのルートが当初の候補でした。

鹿児島市電延伸ルート原案
画像:第3回鹿児島市路面電車観光路線導入連絡会議資料

ナポリ通線を追加、いづろ通線を除外

今回の第2回会合で、これにナポリ通線(A’)を加え、いづろ通線(C)を除外することになりました。ナポリ通線は鹿児島中央駅と鹿児島本港を直結する速達性のメリットがあるとして追加され、いづろ通線は、道路混雑などの事情が考慮され除外されました。

これまで未定だった鹿児島港本港区エリア内のルートについては、観光施設へのアクセスや道路用地の事情を考慮して、ルート案が固まりました。種子屋久高速船旅客ターミナルや桜島フェリーターミナルといった乗船場のほか、鹿児島水族館といった観光施設、ドルフィンポート跡地の再開発地区へのアクセスに配慮したルートです。

道路交通への影響を抑えるため、鹿児島北バイパスから天文館方面へのクルマの流れと重ならない経路となっています。

鹿児島路面電車本港地区
画像:第2回鹿児島市路面電車観光路線基本計画策定委員会資料
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10ルートから絞り込み

ここまでの段階で、6ルートの原案は10ルートになりました。第2回会合では、これを再検討。自動車交通への影響、交差点における施設などへの影響、地下埋設物による影響の3点に着目して、影響の大きいルートを除外していきました。

鹿児島市電4ルート案
画像:第2回鹿児島市路面電車観光路線基本計画策定委員会資料

まず、市庁前線(D)は縦断方向に雨水路が支障になることなど影響が大きいため、候補から外れました。また、パース通で地下の雨水路と軌道が重なるE-Aルートも外れました。

4ルートの特徴

こうした検討の結果、最終的に、影響の少ない案として以下の4ルートに絞り込まれました。これが最終選考に残った4案となります。

A’-Eルートは、鹿児島中央駅から新線を敷設してナポリ通、パース通を経て本港区エリアに入り、高野山線から水族館口交差点で既存路線に合流、天文館を経て鹿児島中央駅に戻ります。

鹿児島市電延伸A'-Eルート
画像:第2回鹿児島市路面電車観光路線基本計画策定委員会資料

A-Eルートは、鹿児島中央駅から既存路線で高見馬場交差点を経て新屋敷交差点に至り、パース通から新線を敷設します。本港区エリアを経て水族館口交差点に至るのはA’-Eルートと同じです。

鹿児島市電延伸A-Eルート
画像:第2回鹿児島市路面電車観光路線基本計画策定委員会資料

B-Eルートは、鹿児島中央駅からいづろ交差点を経て中央通から新線を敷設。本港区エリアを経て水族館口交差点に至るのはA-Eルートなどと同じです。E-Bルートはその逆回りです。

鹿児島市電延伸B-Eルート
画像:第2回鹿児島市路面電車観光路線基本計画策定委員会資料

鹿児島市電延伸E-Bルート
画像:第2回鹿児島市路面電車観光路線基本計画策定委員会資料

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必要性と実現性

計画策定委員会では、この4案について、今後、必要性や実現性を中心に総合的な評価を行いルートの決定をするとしています。

必要性とは整備効果のことで、交通機関としての利便性や、観光・まちづくりの観点から評価します。

実現性とは、需要見込みや事業面での評価にくわえ、自動車への影響、地下埋設物などへの支障といった物理的な制約を評価します。詳細な評価項目は下表の通り設定されています。

評価項目
画像:第2回鹿児島市路面電車観光路線基本計画策定委員会資料
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4ルートを比較すると

では、最終的にどのルートが採用されるのでしょうか。「鹿児島中央駅と鹿児島本港の結節強化」という基本方針を重視するなら、鹿児島中央駅からナポリ通に新線を敷設するA’-Eルートが最適です。

ただ、ナポリ通に路線を敷設する場合、中央分離帯の植樹帯を撤去することになるので、沿道住民から反対が生じやすいでしょう。また、本港地区へ向かう際は天文館を通らないため、「天文館地区と鹿児島本港の回遊性向上」という、二つ目の基本方針にも合致しません。天文館付近を避ける路線のため、需要見込みも少なくなるとみられ、事業性のハードルは高そうです。

ナポリ通線
画像:第2回鹿児島市路面電車観光路線基本計画策定委員会資料

同じ理由で、天文館を通らないA-Eルートも事業性に難がありそうです。A-Eルートは鹿児島中央駅と鹿児島本港を結ぶ速達性でも優れているとはいえません。

B-EルートとE-Bルートは、時計回りか反時計回りかの違いですが、時計回りのE-B案ルートは右折が多く、運行面で不利でしょう。選ぶなら反時計回りのB-Eルートです。

B-Eルートは、鹿児島中央駅から鹿児島本港のフェリー・高速船ターミナルを結ぶ速達性でやや難があります。しかし、新系統が往復とも天文館を経由することで、新幹線駅、中心市街地、乗船場をまんべんなく結ぶことができ、航路利用者の利便性を満たします。

天文館とウォーターフロントを左回りで効率よく回遊することで、まちづくりや観光面でも有利です。A’-Eルートなどに比べ新線の距離も相対的に短いため事業費も抑えられそう。総合的に考えると、B-Eルートが頭一つ抜けている印象です。

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ナポリ通線への関心

ちなみに、公表された計画策定員会第2回会合の議論では、「ナポリ通線への導入が望ましいと思う」「ナポリ通線への導入は良い。今後の整備においては緑化に配慮してほしい」「ナポリ通線は自然景観が残っている道路であり、電車が走る景観という視点での検討も必要。また、ナポリ通線の樹木の活用も検討してほしい」という意見が出たそうです。

第2回会合で、ナポリ通線(A’)への関心が高かった様子がうかがえます。もともとナポリ通線に関しては、第1回会合の委員会資料で「現在の都市景観を維持できなくなるため、ルート検討対象道路から除外する」と記されていて、検討の範囲外とされていました。ところが、第1回会合の議論で検討を求める意見が出たことから、第2回で俎上にのせられたという経緯があります。

こうした経緯を見れば、ナポリ通線を強く支持する委員が存在することが察せられます。となると、ルートが議論で決まるならば、A’-Eルートは有力かもしれません。ただ、資料には「費用対効果の面での検討が必要」と釘を刺す意見も記されており、採算面での検討結果が評価を左右しそうです。

優れているのは

筆者の予想を書けば、天文館からウォーターフロントに直行しないA’-Eルートは、観光客の立場からみた利便性で難があり、観光面やまちづくりの視点では不利でしょう。新幹線と港を直結するというメリットはありますが、航路を利用しない観光客にはかえってデメリットになります。

また、新線の路線延長が長いため事業費が高くなることも予想され、費用便益比の数字は厳しくなりそうです。

そう考えると、優れているのはやはりB-Eルートでしょうか。天文館・いづろ通を扇の要としてウォーターフロントを回遊する路線は、観光客の利便性が高く、右折が少ないので所要時間も短くできます。

B-Eルートの場合、車道部の車線減となるのは中央通りです。高野山線、臨港道路本港区線、南北ふ頭線は歩道部を縮小しますが、現況車線数を確保します。

中央通線
画像:第2回鹿児島市路面電車観光路線基本計画策定委員会資料
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開業時期は?

導入車両については、これまでの議論で、架線レスのバッテリー搭載方式が検討されていますが、今会合では議論の対象となっていません。

今後の予定としては、2020年度中に開かれる第3回会合で各ルート案を評価し、ルートの決定を行います。

2020年5月1日に公表された「路面電車観光路線基本計画策定支援業務 仕様書案」によると、2020年度に検討されるのは路線計画図、利用者、サービス水準、運行系統・運行ダイヤ、概算事業費、事業採算性・整備効果、事業スキーム、道路構造など多岐にわたります。

この支援業務(調査)の履行期間が2021年2月26日となっていますので、2020年度末に第3回会合が開かれ、上記の調査結果が公表され、ルートが決定されるとみられます。

その後、2021年度以降に、決定したルートに基づいて停留所位置・構造や車両編成、運行頻度、概算事業費などの検討が行われ、最終的には「鹿児島市路面電車観光路線基本計画」としてまとめられます。

基本計画が固まるのは早くても2021年度末(2022年春)とみられます。順調に事業着手できたとして、開業は2020年代後半といったところでしょうか。(鎌倉淳)

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