JR城端線・氷見線があいの風とやま鉄道(あい鉄)に移管される方針が固まりつつあります。実現すれば、「青春18きっぷ」で両線を乗ることができなくなり、富山~高岡間の特例もなくなりそうです。
城端線・氷見線再構築検討会
城端線と氷見線は、富山県西部を走るJR西日本のローカル線です。両線とも高岡駅を起点としていますが、同駅を通る北陸本線が新幹線の開業によりあいの風とやま鉄道に移管されたため、JR西日本の他の在来線と接続しない状態になっています。
JR西日本は、2020年に両線のLRT化など「新しい交通体系」の構築を沿線自治体に提案。沿線自治体では「城端線・氷見線LRT化検討会」で検討してきました。
その結論として、2023年4月にLRT化ではなく新型車両の導入を目指すことを決定。新たに「城端線・氷見線再構築検討会」を設け、新型車両の導入などを目指すことで検討が続いています。
引き受けに前向き
7月に開かれた第1回検討会では、沿線自治体から、運行主体について、新たな三セクを設立するのではなく、あいの風とやま鉄道に変更する検討を求める声が上がりました。これを受け、9月6日に開かれた第2回会合では、同社の日吉敏幸社長が出席しました。
席上、日吉社長は、「将来的に当社が城端・氷見線の運営を引き継いで現在の路線と一体的に運営することになれば、県西部における交通ネットワークが強化され、鉄道の運営の面でも効率化を図ることができる。新しい第3セクターをつくるよりも合理的」と述べ、両線の引き受けに前向きな姿勢を示しました。
引き受けの5条件
ただ、日吉社長は、無条件の引き受けを認めたわけではなく、引き受ける際の条件を5つ提示しました。
・城端線、氷見線の赤字補填の保証
・人員確保のためJR社員の出向
・経営移管前におけるレールなどの再整備
・設備整備のための財源確保
・直通化を行う場合に技術面におけるJRの全面支援
最大のポイントは、沿線自治体による赤字補填です。あい鉄としては、城端線・氷見線を引き受けた場合も、現有路線と区分して採算を管理する姿勢を示していて、「本線」の運営や、他の自治体に影響が出ないよう配慮する方針です。
あい鉄の提示した「5条件」に対し、自治体・JR西日本とも前向きに検討する姿勢を示しました。これにより、城端線・氷見線がJR西日本から分離され、あい鉄に組み込まれる可能性が大きく高まったと言えます。
新型車両の候補
検討会では「新型車両」について、電気式気動車や蓄電池駆動電車、ハイブリッド気動車、水素車両を候補に挙げています。一般的な「電車」は候補に入っておらず、両線を電化する方針はありません。
沿線自治体は、国交省が創設した「地域公共交通活性化再生法」などの枠組みを通じて、国の支援を得ながら、城端線・氷見線の再構築に取り組む姿勢です。議論がまとまれば、数年後、両線はJRから分離され、大きく姿を変えそうです。
「青春18きっぷ」特例は?
旅行者的な視点でいえば、城端線・氷見線がJRから分離されれば、「青春18きっぷ」で乗車することができなくなります。
現在は、富山~高岡間で設定されている特例を活用すれば、高山線から富山であい鉄に乗り継いで、高岡から両線に乗ることができます。しかし、JRから分離されれば、この特例もなくなるでしょう。
青春18きっぷや、その特例を利用して乗車をしたい方は、早めに訪れた方がよさそうです。(鎌倉淳)