西九州新幹線「輸送密度」着工前予想を下回る。リレー方式で伸び悩み

1.5万人超えの予想もありました

西九州新幹線の開業後半年の輸送密度は5,882となりました。JR九州が公表しました。着工前の予想は7,800人でしたので、2割以上下回ったことになります。

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開業半年で5882

JR九州が、2022年度の線区別輸送密度を公表しました。

2022年9月23日に開業した西九州新幹線武雄温泉~長崎間についても、初めて輸送密度の実績値が公表されました。開業から約半年(9/23-3/31)の輸送密度は5,882でした。

西九州新幹線「かもめ」

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着工前予想は7800

西九州新幹線は先に武雄温泉~諫早間をスーパー特急方式で着工し、その後、フリーゲージトレインの導入を見据えながら、諫早~長崎間の認可・着工に至りました。

諫早~長崎間着工前の2012年の国交省資料によると、武雄温泉~長崎間の輸送密度は7,800人と予想されていました。

この資料では、フリーゲージトレインを導入して博多~長崎間を直通運転する想定になっていましたので、乗り換えなしで結ばれる場合の数字です。

西九州新幹線輸送密度
画像:「収支採算性及び投資効果の確認」に関する参考資料(交通政策審議会 陸上交通分科会 鉄道部会整備新幹線小委員会)

 

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15,000越えの予想も

また、2012年の政府・与党整備新幹線検討委員会資料で公表された福岡県・佐賀県・長崎県の資料では、「スーパー特急方式の整備による約40分の時間短縮効果は各都市間の交流人口拡大をもたらし、開業時の輸送密度は1日1万5千人を超えるものと予測しております」とあります。スーパー特急方式による博多~長崎間で15,000もの輸送密度を想定していたわけです。

西九州新幹線資料
画像:「九州新幹線長崎ルートの取り扱いについての考え方」(福岡県・佐賀県・長崎県)

現実には、スーパー特急からフリーゲージトレインに変更したものの頓挫し、武雄温泉で乗り換えるリレー方式となりました。さらに、コロナの影響もあり、利用者数は想定に達していません。

さまざまな事情があるにせよ、「15,000」という大風呂敷を振り返って見ると、初年度実績値の「5,882」という数字は、寂しいと受け止めざるを得ません。

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北海道新幹線は上回る

他の新幹線と比較すると、すでに2022年度データを公表済みの区間では、東北新幹線八戸~新青森間の8,828を下回りますが、北海道新幹線新青森~新函館北斗間3,095を上回ります。

JR九州では九州新幹線の熊本~鹿児島中央の9,707の6割程度の水準となっています。

山形新幹線の福島~米沢間6,056よりも低い数字です。ただし、山形新幹線は在来線普通列車の利用者利用者も含んでいますので、新幹線の利用者に限れば山形新幹線は上回りそうです。

新幹線の輸送密度
路線名 区間 2022年度 2018年度
北海道新幹線 新青森~新函館北斗 3,095 4,899
東北新幹線 東京~大宮 118,914 180,725
大宮~宇都宮 81,595 120,571
宇都宮~福島 58,209 87,901
福島~仙台 46,675 68,748
仙台~一ノ関 28,830 42,075
一ノ関~盛岡 24,126 34,587
盛岡~八戸 12,787 17,086
八戸~新青森 8,828 11,556
上越新幹線 大宮~高崎 79,707 108,697
高崎~越後湯沢 21,679 30,693
越後湯沢~新潟 15,784 22,497
北陸新幹線 高崎~長野 33,000 43,278
長野~上越妙高 18,688 24,781
上越妙高~富山 未発表 23,666
富山~金沢 未発表 21,753
東海道新幹線 東京~新大阪 未発表 279,016
山陽新幹線 新大阪~岡山 未発表 120,877
岡山~広島 未発表 94,785
広島~博多 未発表 57,868
九州新幹線 博多~熊本 20,142 27,986
熊本~鹿児島中央 9,707 13,226
西九州新幹線 武雄温泉~長崎 5,882
山形新幹線 福島~米沢 6,056 9,517
米沢~山形 7,541 10,886
山形~新庄 4,407 5,483
秋田新幹線 盛岡~大曲 3,061 7,023
大曲~秋田 4,390 7,951

※山形・秋田新幹線は在来線普通列車の利用者を含む。

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北陸新幹線敦賀延伸は?

ちなみに、北陸新幹線敦賀開業後の輸送密度は、金沢~敦賀間で24,000程度と予想されています。北陸新幹線の既開業区間の実績をみれば、十分に実現可能な数字に感じられます。

さらに、北陸新幹線新大阪延伸後の敦賀~新大阪間は、40,400と予測されています。大きな数字ですが、関西と北陸三県のつながりの深さをかんがみれば、不可能とはいえないでしょう。

一方、北海道新幹線の札幌開業後は、新函館北斗~札幌間でおおむね18,000前後と予想されています。2018年度の東北新幹線盛岡~八戸間に匹敵する数字です。東京~札幌間の流動の大きさからすれば不可能ではなさそうですが、どの程度が新幹線を利用するかは未知数です。

最後に、西九州新幹線新鳥栖~武雄温泉間をフル規格で作った場合の予想輸送密度の数字は、探した限り見つかりませんでした。着工の見通しも立っていませんし、現時点では公表されていないようです。(鎌倉淳)

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